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カミノミ!~落ちこぼれの英雄譚~ 作者:斥戸田

始まりの物語

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夢から醒めて

 昔々あるところに、それはそれは美しい少女がいた。

 そしてある日、神は、その少女をみつけ、恋をした。


  変わった夢を見た、幻想という言葉が似合う夢を。


 徐々に意識がはっきりしてくる。少年は、体が浮き上がってくるような感覚に襲われる。


 ここは、とある小国に、とある目的で作られた世界最大規模の魔法学園。魔法学園といってもソレだけではなく武術に、もちろん学問も学べる素敵な場所だ。


 魔法歴1550年に()()()()()で設立されて以来、約150年もの歴史を誇り、世界中の国々から出資と支援を受ける名門校だ。


「ムぅッシュ!ムッシュ・ルカ!起きなサァイ!! 」


  名前を呼ばれ、バッと起き上がるルカ。動きやすそうな白を基調としたシャツ、緑のブレザーの制服は着崩れており、黄金の髪にはピョコッと寝ぐせがついている。その姿に周りからは注目と少しの笑いが生じる。


 その瞬間、ルカは自分が眠りコケていたことに気づき、ほんのりと顔が色づいていく。


 もともと、少女にもみえるルカの顔は、恋する乙女のような表情になっていた。


「ムぅッシュ・ルカ、あなぁたは座学において優ぅ秀と称称してぇも差し支えのないこぉとでしょう! しかぁし、だからといぃて寝ていいことにはなりませぇん! 」


 この男性はロレンツィオ・デ・メディア、生徒からはロレンツ先生と慕われてる。細身の高身長でサラサラのおかっぱブロンドヘアーに、いかにも小言を言いそうな顔をしたイータリア国出身の貴族である。


「起きぃたとこぉろで早速問題でぇす! 」

ニヤリと笑いながらロレンツはルカに問いかける。


「魔法と魔力と魔術の違ぃいを述べなさぁい! 」


  顔に似合わず基本的にいい先生なのだが、こうして不真面目な生徒には厳しいところが玉に瑕である....。やっぱりいい先生じゃないか....。


 そんなことを考えている片手間、ルカは起きたての頭に無理を言わせて記憶を呼び起こす。


「魔法とは個人が1つだけ所有する個々の特殊能力のことです。他人が使用することは、基本的に不可能であり、力、エネルギー、特殊の3つのタイプとそれらの複合体系があります。力系は()()()()()土属性などが分類され、エネルギー系は文字通り光属性などが分類されます。それらに分類されない未来視などの異質な魔法は特殊系と呼ばれます」


「魔力とは先程述べた3つの魔法の体系の1つ、個人に由来する特定の物質を操ることのできる力系魔法の別名です。よく魔法の使用に必要な魔素(マナ)と混同されます」


「最後に魔術とは専用の魔術器具や魔法陣などを用意し魔素(マナ)を加えれば普通は誰でも使うことができるもののことです。特殊なものでもない限り他人のものでも使え他の魔術や魔法と同時に使えるところが魅力です」


 満面の笑みになりながらロレンツは饒舌気味に語りだす。

「その通りでぇす。特ぅに魔力の説明ぃで魔素(マナ)との混同を交えたぁのは素晴らしぃいです。あらあらょっと」


 カカカっと今の話を黒板にまとめる。こうした生徒に分かり易い工夫を凝らした講義もロレンツ先生の魅力の一つだ。

挿絵(By みてみん)

「魔素と魔力を誤用する馬鹿どもは大勢いまぁす!! 特ぅに物書きに多いでぇす!」


 怒り心頭といった感じのロレンツ、その熱気はルカにまで伝わってくる。


「そもそぉも“力”とついているのぉにまるぅで()()()()()()()()数値のように扱うなぁど頭にパンナコッタでも詰まっているぅのではないでしょぉうか!力とつくからには力として扱いなさぁい!!」


  圧力は力じゃないですよ、とルカは心の中で呟くがせっかく鎮火しそうな火に油を注ぐ必要は無い。答えは沈黙というやつだ。が、隣からおもむろに手があがった。


 ....嫌な予感がする。あげられた手をみて、ルカが真っ先に思い付いたことがそれだ。


 その手の主はルカの友である魁燕(カイエン)のものであった。体つきがよく魔素の量も並の貴族以上に多い、爽やかな顔をしており、サバサバとした彼だが、その性格が災いし、教師からの評価は問題児そのものだ。


「センセーはさっき数値がどうちゃらって言ってたけどよ。戦闘力とかだって数値でいうんじゃねーの? 」


 今クラスの全員が "確かに" と同意した。


 そのことを知って知らずか、ロレンツは膝を落として空を仰ぐ。

「確かにその通ぉりでぇす。()()は先生の間違いでぇす。頭が悪いのぉは先生のほぉうでした。許して下さぁい! 」


 一人で盛り上がった後、ケロッと起き上がり、皆に告げる。


「ただし、そうするぅとややこぉしくなるのぉで昔ぃの偉い人が定義したんだとおもいまぁす!! そしぃて間違いぃでありながぁら、よく混同されるのぉは本当なのぉで注意しましょぉう」


 ハーイという生徒の声に合わせてチャイム音が響く。


「おっと今日ぅは皆さんにとぉて、初のクエスト推奨デーなのぉで、これぇで今日の授業ぅは全部終わりですぅね。それでぇは皆さぁんよい一日を! 」


 そういうとロレンツ先生は颯爽と教室を後にした。


「やっっと終わったぜ~」

皆、好き好きに立ち上がり、魁燕は自分の腕を親友の肩に乗せてしゃべりかける。


「魁燕....。君、たまたまロレンツ先生だったからいいものの他の人なら喧嘩になってたよ? 」


「いいじゃねーか別に、間違ってたら謝る、合ってたら謝らせる。むしろ間違いを指摘されて逆切れするほうがおかしいんだよ」


「そうだとしても目上の人に食って掛かってばっかりだといつか大変な目に合うわよ? 」

ぴょこっと顔を出し、話に入ってきた愛らしい少女はリナ、長く茶色い髪にクリクリした目がチャームポイントだ。


 ルカを含めたこの三人が入学してから、常に一緒に行動するいつものメンバーだった。と言っても魁燕とリナは口喧嘩ばかりであり、あまり仲はよろしくない。そして、毎回ルカが仲裁に入り喧嘩を止めるというのが黄金パターンだった。


「けっ、それならそれでいいぜ。自分を曲げて生きてくなんて死んでんのと変わんねぇからな。テメーも人の生き方に口挟むんじゃねーよ」


 ....どうやら御多分に漏れずいつものパターンのようだった。もちろんリナも負けじと反応する。


「なによ!人の忠告を~。自分を曲げられないなんて頑固なオヤジと同じじゃない! 」


「そ、そんなことよりもクエストに行こうよ!早くしないと夜になっちゃうし」


  喧嘩の気配を察知して逸早く話題を変えるルカ。しかし、それは徒労に終わった。

「ピーピーうるさいんだよ、平民どもが、ただでさえ目障りなのにな」


 取り巻きを連れてそういってきたのは同級生のマール・フォイエルバッハ。名前の通り貴族主義にして血統主義、つまりとっても嫌なやつだ。


「まあまあマール君、騒がしかったのは謝るよ。それで許してくれないか? 」

衝突を抑えようと間に入るルカ。しかし、マールの癇癪が収まることはなかった。


「勘違いするなよルカ、お前もだよ。身内の権力で裏口入学してきたお前が対象外なわけないだろう? 知ってるか? ここは魔法学園、魔法もろくに使えない平民以下のお前が来ていい場所じゃないんだよぉ! 」


 周りから嫌な空気が流れる。複雑な、どうすればいいかわからないような凍えた空気、特にルカは人の気持ちに敏感であり、ソレに反応して嫌な気分になっていた。そんな時である。


「墓穴を掘ったな、でこっぱげ」

魁燕が唐突に口を開きマール・フォイエルバッハはギロリとそちらを睨む。


「お前、実技の時間に俺に勝ったことねーよな?ソレどころか魔法系の実技以外ルカに勝ったことねーんじゃねーか? 」


 図星を突かれ彼の顔がグッと歪む。

「それにそーやって自分より弱えーやつやルカみたいに言い返してこないやつにしか喧嘩売らねーのダセーからやめるこったな」


 それを聞きマール・フォイエルバッハは顔を真っ赤にする。

「なっ何を根拠に______」


「現に俺や先公どもには直接、喧嘩吹っ掛けねーじゃねーか。今だってルカに話しかけた。そんな平民以下のてめえがチョーシ乗るんじゃねーよ」


 停滞していた空気がガラリと変わり、マール・フォイエルバッハの顔はゆでだこよりも真っ赤に染まり上がる。


「いっいくぞお前ら! 」

そういうとマールは勢いよく飛び出す。先程のロレンツの三倍は早く教室から出ていく小物たちがそこにいた。


「フン、逃げ出すんならハナから喧嘩売んじゃねーよ」

マールに赤っ恥をかかせた魁燕はスタスタと歩みを進める。


「さっいこーぜ! クエスト! 」

マール・フォイエルバッハの後を追うように魁燕は教室のドアに手をかけた。

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