第三章~高校生編~
~真新しい制服に身を包み、入学式を迎える学舎に、俺はいた。
『新入生、入場…』アナウンスが聞こえる。~
《話は少し遡る》
「本当に大丈夫なの?ミレイさん?志望校変えてもいいのよ?」ニコッ!
「大丈夫よ、多分…。本当は二人とも、エスカレーターで行けるのに、公立に変更したんだもん…。」
「いや、俺は元から公立受けるつもりだったから。私立行く余裕うちには無いし。」
「私は、二人がいない私立なんてつまらないもの。高校なんてどこでも一緒ですわ。」ニコッ!
「二人が異常なのよ!いくら公立でも県下の進学校よ?あっさり前期で合格して!」
「ナギサの言うように、志望変更して、受験してもいいんだよ?」
「うわぁ!ヤスくんまで嫌味?うわー、早くこの受験地獄から抜け出したいわ!」
「バカな事いってないで、少々スパルタで行きますわよ。」ニコッ!
《合格発表の日》
「やだっ!やっぱり帰る!見るのが怖い!!」
「ミレイさん、ここまで来て駄々を捏ねないの。」ニコッ!
「ニコッ!じゃないよ!ナギサ達は、もう合格してるから余裕だろうけど、私は無理に決まってるもん!」
「………ったよ……、ミレイ…。」
「え?!」
「だから、有ったよ、ミレイの番号!おめでとう!」満面の笑みで俺はミレイに言った。
そして、自分でも確認したミレイは、涙を流しながら俺に抱き付いてきたのだった…。
《高校生編登場人物》
本作主人公=司 ヤスアキ
本作ヒロイン=田口 ミレイ、伊藤 ナギサ
司 ヒロシ(ヤスアキの父。商社勤務。海外出張中)
司 アケミ(ヤスアキの母。父と共に海外在中)
伊藤 ソウイチ(ナギサの父。会社社長)
伊藤 アキコ(ナギサの継母。ソウイチの後妻)
早瀬 ミカ(ミレイのクラスメート)
山本 マキ(ミレイのクラスメート)
~高校生編再開~
「あ~ぁ、私だけ違うクラスだ。」
「心配なくてよ?司クンに、悪いムシが付かないように、私が見張ってますから。」ニコッ!
「だから、余計心配なのよ…。」本心か冗談か、呟くミレイ。
「貴方には悪いムシが付いても、私は平気よ?ミレイさん。」ニコッ!こっちも本心なのか冗談なのか。
俺とナギサはクラスは一緒で、ミレイだけが違うクラスになっていた。
『しかし、融通の利かない作者ね!』
「ミレイ、何か言った?」
「何でもないわ。また、後でね。」そう言って教室に向かって行った。
各クラスで一通り説明があった後、クラスを後にする。
「はぁ……。」
「どうしたの?ミレイさん、ため息なんかついて?」ニコッ!
「私のクラス、どう見ても皆頭良さそうなんだもん。自信無くすわぁ…。」
「私達の、クラスにはそうは見えませんでしたわ。」ニコッ!
「あなた達が異常なのよ!私はどうせ凡人よ!」フンッ!
「あはははは!」
「何笑ってるのよ、ヤスくん!」
「いやぁ、ほんと二人は仲がいいなぁと思って。」
本心からそう思っていた。いつまでもこのままで行けたらいいなぁと思っていた。しかし、同時に何でこんな事思うんだろうと違和感も覚えていた…。
「ねぇ?初めまして。わたし、早瀬ミカ。この子は、山本マキ。同じ中学出身なの。よろしくネ。」
「あ、わたし、田口ミレイ。こちらこそよろしくネ。このクラス、知り合いいなかったから、寂しかったんだぁ。」
ショートカットでボーイッシュな女の子が、ミカ。メガネを掛け、ちょっと地味な子が、マキだった。この二人がやがて来る俺の人生に大きく関わる事になるが、それはまだ先の話…。
「今日ね、新しい友達ができたの。」嬉しそうに話す、ミレイ。
「あら?早速悪いムシが付いたの?」ニコッ!こっちも嬉しそうに話す、ナギサ。そして、誰なのか気になる俺。
「違うわよ、二人とも女の子よ。ちょっと寂しかったから、嬉しかったよ。」
「でも、ミレイさん。遊びに夢中になったら、直ぐ落ちこぼれてしまいますわよ?程々にね。」ニコッ!
二人の話を聞いていて、高校に入ってからも勉強デートを続けるのか疑問に思った。やるにしても流石に毎日は時間的に無理があると感じた。
「あのさ、これからも一緒に勉強って続けるの?俺達、電車で通学してるから、やるとしても遅くなるよ?」
「ヤスくん、私は平気よ。むしろ、お願いしたいくらいよ。じゃないと間違いなく来年も1年生だわ。」
「あら、私も平気ですわよ。遅くなったら、お迎えを寄越しますわ。」ニコッ!
「二人とも、本当に平気なの?」
俺の言葉に頷く二人…。また、何故か前とは違う違和感が脳裏を過った…。
「今日から私、行ってもいい?」
「あ、ごめん。昨日から、うちの親達帰って来てるんだ。また来週海外に行くから、それからでもいい?」
「え?お父さん達、帰ってきてるの?一度会ってるよねぇ?あの時は確か……あっ!!」そう口に出した時、俺とミレイの顔が一気に曇った…。
『里子!!』
今の今まで忘れてた、いや、記憶のどこかにはあったのだろう。だから、俺の親に二人を… 、正確にはミレイを会わせたくなかったんだろうと、やっと違和感に気づいた。
「二人とも、急に暗い顔して黙って、どうしたのですの?」ニコッ!
そう、ナギサは里子の件は知らない。俺が中学で転入した理由を。
「そ、そうだね。久々に親子水入らずでいるのがいいよね…。」自分に言い聞かせるようにミレイは言った。しかし、久々にお嬢様の呪文が放たれた。
「私は司クンのお宅に行きますわよ。折角、ご両親がいらっしゃるのに、ご挨拶しておかないと、恋人として失礼に値しますわ。」ニコッ!
『お嬢様、あなたこの空気読んでますか?』久々に俺の心がツッコんだ。改めて思ったが、ナギサは超が付くほどマイペースだった。でも、暗い雲の隙間から差し込む太陽のヒカリのようだった…。
ミ「みなさーん、ありがとう。あとがきのコーナーでーす」
里「見たミタミタ?私出てたでしょ?」
ミ「出てたけど、あれを出たって言えるの?」
里「そうよ、サクシャ曰く、ちょっとしたキーワードですって」
ミ「ねぇ、面倒だから、このコーナーにさくしゃ出てもらおう?」
里「それはだめよ!」
ミ「なんで?ネタバレになるから?」
里「違うわ!私の出番がなくなるからよ!」
ミ「確かに、なくなるね。」
里「ナギサみたいに、絡めないと退屈でしょ?」
ミ「いや、あんたと絡むのも大変よ」
里「ちょっとだけど、次回感動シーンがあるみたい」
ミ「うわぁ、ハンカチの用意しとかなくちゃ」
里「化粧、崩れないようにね」
ミ、里「おしまい。また見てネ。」