第二章~中学校編~
今、俺はA組の前にいる…。
『他のクラスって妙に緊張する…。』
ここにいる目的はもちろん、ナギサに話すためだ。いっそ誰かに気付いてくれたら楽なのに、そのクラスの雰囲気は、別世界のものに感じられた。そして俺の出した結論は、出直すことだった。
『戻ろう…。』そう決意した瞬間!
「おはよう、司クン。何をしてらっしゃるの?」
余りの出来事に、体がビクっとし、「うわ!」とも「うひゃ!」とも取れる言葉を発していた。いつもお嬢様は俺の意思を砕く行動をしてくる。
「あ、お、おはよう…。」やっと出た言葉に、余程俺の反応が面白かったのか、笑ってらっしゃる。
「そ、そのナギサさんに話しておきたい事があって…。じ、実は俺…、彼女がいるんです。それで昨日、変な誤解されて…。すみません…、上手く言えないけど、そ、その…。」今、自分に最大限の言葉で、お嬢様を傷付けないように話した。
「知ってますわよ。彼女がいても私は気にしないから、心配なさらないで?」ニコッ!
で、出た!必殺の『ニコッ!』攻撃。自分の意志が揺らぐ瞬間…。
「え?知ってたの?」
「えぇ、いつでしたか彼女さん、お迎えにきてらっしゃったでしょ?その後、司クンに彼女がいらっしゃると噂を聞きましたから。」
正に知らぬは本人だけである。中学生の身分で噂話のネタになっていたとは…。涌き出る恥ずかしさを感じながら、「そういう訳だから。」と足早に教室に戻った。
「『…キンコーンカンコーーン…』」お昼休みを告げる鐘が鳴る…。
『さてと、購買に行くかな…。』と席を立つ俺。廊下に出るとそこにはお嬢様の姿が。
「調度良かったですわ、またお昼ご一緒しましょ?」ニコッ!
もう、ここまでくるとお嬢様の思考回路が分からない…。
「今日は、司クンの分もありますから。」ニコッ!
呆気に取られる俺。もうツッコム余裕すらない。
「あ、あの~。今朝いいましたよね?それに妙な噂が立っても…。」俺の言葉を遮るように、
「さぁ、時間がもったいないですわ。行きましょ?」ニコッ!と俺の手を取る。『あ、手を繋いだ…。』周りの目を気にしながら、結局お嬢様に付いていく俺…。
着いた先は例のベンチ。
「あのー、またここなの?」せめて人目の無い所にしたかったが、
「私、ここが好きなの。」ニコッ!だから、『ニコッ!』じゃなくて…と思ってしまう。
「はい、これ司クンの分。お口に合うかどうか…。」と弁当を取り戻した。
「あ、あのさ、気持ちは嬉しいけど、やっぱりこういうの、皆に誤解されるから止めた方がいいよ。」
「あら、遠慮してるの?私は気にならないから平気よ。だから遠慮なさらないで?」ニコッ!
「いや、俺は気にするから。それに彼女もいるし…。
「うふ、だから私は司クンに彼女がいても気にしないわ。それに司クンの彼女にも興味がありますもの。」ニコッ!
「へ?!」本当にお嬢様の思考には付いていけない俺。そして更にまた俺の上を行く行動を出してくる。
「はい、あーーん。」はい、よく恋人相手に出してくる必殺技を俺に見舞いだした!!
「はい、あーーん!」催促してくる…
「ちょっと!お口を開けなさい!はい、あーーん!!」ちょっとキレ気味になるお嬢様。そして、必殺技に屈するヘタレな俺…。
『パクっ!』なるべく周り気付かれないのを願いながら、急いで口にする。
「どう?美味しい?」
「う、うん…美味しいです…。」嘘だった。正直恥ずかしさで味なんて全く分からなかった。ただ分かるのは心臓が破裂するほど高鳴ってたことだけ。
「さぁ、早くたべちゃいましょ。」ニコッ!食べてる時はお喋りしないのでお互い沈黙が続く。それでもお嬢様に見られながらの食事は緊張のためか、やっぱり味は分からなかった。
こうして本来なら天国のような食事も、俺には地獄のような時間が過ぎた。
終業のホームルームを終え、足早に自宅へと向かう。ミレイと付き合い始めて、今は俺自宅で待ち合わせて、勉強デートするのが日課になっいるからだ。そう、少なくとも昨日までは…。
「待っていましたわ、一緒に帰りましょ?」ニコッ!
『ん!?!!?それは何の呪文ですかお嬢様?!』心の俺がさけぶ。玄関に立っているお嬢様、間違いなく俺に発した呪文。
「あ、お、俺、これから家かえって勉強するんだけど…。」
「えぇ、知ってますわ。彼女とご一緒になさるんでしょ?」ニコッ!
「う、うん。だから一緒には帰れ……」
「気にしなくてよくてよ。私もご一緒しますわ。興味がありますもの。」ニコッ!
『無理、無理、無理、無理ーー!』何を考えてるかお嬢様は!
「あ、あのー、何を言ってるかわかります?」
「分かりますわよ、失礼ですわ。こう見えても頭は良くてよ。」アハッ!いつもと違い声を出して笑ってるお嬢様…。理解し難い、もしかしたらアホなのかと疑ってしまう。
「さぁ、参りましょう?」ニコッ!と、俺の腕を取り、半ば強引に玄関を後にする。当然周囲の下々の目線を浴びながら…。
家路へ向かう途中、何度も、無理と気にしないの応戦をしながら、俺自宅が視界に入る。同時に見られてはいけない存在の姿も…。やがて訪れる恐怖が俺の中で沸々と沸き上がるのを感じていた。
そして、俺の存在に気付き手を振る彼女。そして次第に表情が変わるのが、遠目の俺にも確認できた。
俺の体が『サーー…』っと、音を立てて血の気が引くのが分かった……。
ミ「お待たせしました。あとがきのコーナーでーす」
里「ちょっと、私忙しいのよ」
ミ「なんで?出番ここだけじゃない。ナギサは無理よ」
里「そのナギサと司の○○○、覗きに行くのよ」
ミ「バカなこと言わないでよ!」
里「バカじゃないわよ、私知ってるもの」
ミ「何を知ってるのよ」
里「この先展開」
ミ「だめよ、ネタバレしたら!」
里「言ってほしくなければ交換条件よ」
ミ「どうすれば、いいの?」
里「私にヒロインを譲ってくれればいいのよ」
ミ「それって、また登場させるパターン?」
里「そうよ、その気になった」
ミ「大丈夫、出てくるみたいよ」
里「あなた、ネタバレしてるわよ」
ミ、里「おしまい。また見てネ。」