68.リリアナ・ヒメノ
本日は3話投稿します。次は17時予定。
2019/09/10
リリアナが歌う歌詞にどうやら曲が付きそう……ということで作曲家の方からのご指摘を受けて一部、歌詞を変更(主に英詞の部分)。 曲が正式に発表されたら改めて宣伝します。曲まで出来たら誰かアニメ絵で作ってくれないかなw
2019/10/18
本話で登場する作中歌『Call your name』ですが中学校や高校での教材として音楽之友社 『教育音楽 中学・高校版 2019年11月号』に掲載されました!
※ 本曲は出版によりJASRACの管理になりましたが、曲よりも前に歌詞があり、そもそもこちらがオリジナルのため、掲載継続は問題無いとの回答を出版社からはいただいております
「ママ、行くよ!」
「オーケー!」
ひとえのトランシーバーからユイカの声が響く。
ひとえが腕を上げると、外壁から王宮屋上へライトが当たる。
その光で、リリィに気がついていなかった人々も、光の先で踊るリリィの姿に気がつく。やがて騎士が、兵士が、市民が、リリィだけを見つめ流ようになっていった。
「な、何だ、何をする気だ……おい! 止めろ! 止めろ!」
マシアスが必死に叫んでいるが、音楽に打ち消され、誰も動かない。座り込んでいるファビオも顔だけを後ろに向け、歪んだ顔でリリィを凝視している。
「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」
「これは……ユイカの声か?」
今度は、曲のリズムに合わせ、ユイカの声が広場中、響き渡る。すると……
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
広場の中からも、複数の声がこれに応えるように広場中で響き始めた。
「こ、これは……」
「ロラさんのお父さんが抱える騎士団に協力してもらったの」
そして……
♪
さあ、立ち上がれ、今!
♪
広場中にリリィの声が響いた。この曲は確か……動画サイトの歌い手さんのアルバム曲? 娘が滅茶苦茶良い曲だからと無理矢理聞かされていた……確か……「Call your name」!
♪
遠く響く 鐘の音を背に
君は歩く いつも一人で
流れる涙を 力に変えて
さあここで 問いかけるんだ
一人じゃないさ、ほら
Call your name, call your name to stand here
Because I believe that you're still fighting
Call your name, call your name to stand here
You, because I’m sure there is the power
I believe
♪
アップテンポのリズムに乗って、リリィが歌い切る。間奏が続き……
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
「お義父さん、私もやっていいですか?」
「いいよ」
チコだけでなく、広場に集まっていた兵士や騎士、市民も声を出し始めた。
「これは……」
「ふふ、ユイカの作戦、成功!」
ユイカのアイドル好き……役に立つじゃん!
そして、間奏が終わり……
♪
出会い、別れ 繰り返す日々
君は歌う 愛の歌を
流れる涙よ 笑顔に代われ
さあここで 届かせるんだ
まだ、終わりはしない
Call your name, call your name to stand here
Because I believe that you're still fighting
Call your name, call your name to stand here
You, because I’m sure there is the power
I believe
♪
2番をリリィが歌った。するとリリィの両サイドに……
「あれは……ロラさんか! あと、フェロル村の子供達? え? エレナ? イネスさん?」
「そう、ユイカが集めちゃったの、多分、ギリギリまで特訓していたはず」
バラバラと屋上の上に人が出てきて……リリィと一緒に、踊ってるねぇ……
「お義父さん、私も行きたい」
「いいわ、チコ。待ってなさい」
ひとえが誰かに合図を送ると……巨漢の甲冑を着込んだ男が走ってやってきた。
「すみません、この子もお願いします」
「わかりました!」
「ユイカ、チコもそっちに行くわ! オーバー」
「オーケイ、間奏をつなぐね!」
巨漢の男はチコを抱き上げ、広場を迂回するように走って行った。
「今のは?」
「ロラのお兄さん」
どうりで大きい。
ダン!
突然、音楽が鳴り止む。だが、すぐにユイカの声が広場に響きわたる。
「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」
その声に合わせて屋上にいた全員が頭上に手を挙げ、リズムをとって拍手をする……それはやがて広場中に拡がり、
「「「「オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ! オイ!」」」」
熱狂的な叫びと拍手は、やがて群衆が一つの生き物にもなったような一体感を生み出した。
「チコ、到着! 最後、いくわよ!」
ユイカの声がトランシーバーから聞こえ、音楽が再び始まった。屋上にチコが並び、リリィの横に立つ。
それは、少しスローなテンポ。静かな音楽、そこに乗るリリィの囁くような歌声、両サイドに立つチコやロラ達は、拳を天に掲げ、リズムを取る。
♪
Unless forget your dreams ,
your voice will surely be reached
I also stand here ,
I will continue to yell and believe you
♪
そして、音楽は盛り上がり、リリィは叫び、拳を天に突き出す。
♪
さあ、立ち上がれ、今!
Call your name, call your name to stand here
Because I believe that you're still fighting
Call your name, call your name to stand here
You, because I’m sure there is the power
I believe
♪
激しく、そしてどこか切ないリリィの歌が終わり、音楽は後奏に入る。
「あなた、走るわよ」
「え?」
俺は突然、ひとえに腕を掴まれ走らされた。俺を取り囲んでいた騎士は、腑抜けのように、全く動かない。走りながら、屋上を見上げるとリリィとユイカがこちらを見ている。
「ママ、降りるわ!」
そう言って、リリィとユイカが飛び降りた。
王宮の両サイドから、浩太のミントが寄ってくる。
音楽が鳴り止み、静寂が戻る。
飛び降りたリリィはすぐさま、玄関の正面に立ち、その後ろに俺たち家族が並んだ。目の前には女王陛下が立っている。リリィは一度振り返り、俺の姿を確認すると、静かに跪く。リリィの目は今までと違い、力強さが感じられる。
そして、リリィは前を向き、静まり返った広場の隅々まで通るような大きな声で、高らかに宣言する。
「陛下、お待たせいたしました。リリアナ・ヒメノ、たった今聖地より救世主様を連れ戻りました!」
小説家になろうでは無許可の歌詞の転載引用はNGですが、本文中に出てくる歌詞はオリジナルです(piaproに同名でアップしてあります)
http://piapro.jp/t/a-Zh
活動報告でも以前書きましたが、本当は使いたい曲があり、作詞作曲をされた方へ連絡を取っておりました。ただ商用CDのため出版社が権利を保持しているとのご回答をいただき、それ以上の調整を時間切れで諦めました。もし、ご存知の方は以下の曲で脳内変換してくださいm(_ _)m 趣味の押し付けになってしまいますが、本当に素晴らしい曲です。
ヲタみん: 3rd アルバム Cheerful Voiceの収録曲
「Call your name in the bad rain」 作詞・作曲 猫とら様
(公式クロスフェードムービーのURLです。この4曲目です)
https://www.youtube.com/watch?v=2IYDHzqOxoM
なお、本文中ではユイカが主人公に無理矢理聴かせた事になっておりますが、でもん宅では、私が娘に強引に聴かせておりました。
さて第6章も残り2話です。
本日中にアップしますので、よろしくお願いします!




