34.借金
<< sudo chown -R gw_carbono_01 kazuto.tanaka >>
<< カルボノ用ゲートウェイ 01、オーナー変更を実行しました >>
<< sudo chgrp -R gw_carbono_01 grp_tanaka >>
<< カルボノ用ゲートウェイ 01、グループ変更を実行しました >>
<< sudo chmod -R 710 gw_carbono_01 >>
<< カルボノ用ゲートウェイ 01、権限設定変更を実行しました >>
聖地カルボノの光のカーテンに触れた俺の脳内に、とんでもない文字列が飛び込んできた。
視覚情報として見えたのではなく、脳内に文字情報が飛び込んできたみたいだ。
思わず一歩下がる。
「気持ち悪い……」
一瞬、ふらつく。
「タナカ様、どうされました?」
リリィが支えてくれる。
「ああ……ごめん、もう大丈夫」
ふう、何だっただろう。
まぁ、頭に流れたコマンドを見れば、何が起こったか分かるけどな。
本当にLinuxベースなんだ、マゴガミンOSは。恐るべし、マゴガミン。
「もう大丈夫だと思う。ちょっと突拍子も無い事実を突きつけられて同様しただけ」
「それは……?」
「気にしないでくれ、よし、もう1回行こう」
所有者の変更が完了しているから、もう同じような事は起こらないだろう。
再び、リリィの腰を抱いて、光のカーテンの中に入る。
「………………………………………」
「………………………………………」
あまりの事に、俺もリリィも言葉が出なかった。
しばらく惚けた後、
「た、ただいま」
「あ、あ、お邪魔します」
光のカーテンを抜け、自宅の玄関についた俺は、とりあえず誰もいなであろう自分の家へ帰宅の挨拶をしてみた。
「リリィ、ちょっと怖いので、くっついたまま、もう1回、外に出てもいいか?」
「はい」
「これ、最悪、フェロル村に戻っている可能性もあるので……」
そう呟きながら、光のカーテンに戻る……一瞬、柔らかい布団に包まれたような抵抗感があり、
<<遷移先を選択してください 1.gw_oxígeno_01, 2.gw_carbono_01 >>
脳内に不思議な選択肢がキター!
どうやって選ぶんだろう。
とりあえず、2とイメージする。
すると、今まであった抵抗感が、ふっと消え、さっきまでいた聖地カルボノの洞窟の中に戻る。
「よかった。戻れましたね」
「リリィ、今の光のカーテン、これまでと違って、なんか引っかからなかったか?」
「いえ? 今までと変わらなかった気がしますが……」
これは選択肢が出るのは俺だけなのかな?
妻や子供達が通った場合、どうなるんだろう。
「とりあえず、ここへ戻る事が分かったので、一回、家に戻ろう。オクシヘノに確認したい事があるし、できれば、シャワーを浴びたい」
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<<マゴガミンの世界へようこそ!>>
早速、マゴマミンワールドのトップページにアクセス。
「私の聖地をゲット、おめでとうですぅ!」
あら、オクシヘノじゃなくて、幼女姿のカルボノが出てきた。
「ちょっと待つのじゃ。こやつは妾が担当じゃ!」
遅れて、巫女姿のオクシヘノも出てくる。
「おめでとうと言いたかっただけなので、いいんですぅ」
そう言うと、頭を少しだけ出した状態で引っ込む。
「ふむ、それなら良い」
オクシヘノがそう言い、こちらを向いて、
「どうじゃ? 聖地に入って良かっただろう。まぁ、こんなに早く、入ってくるとは思わなかったがな」
「通り道にあったので、ついでに入ってみた。面白い事があると言っていたので、早めに行ったほうがいいと思っていたしな」
「仕組みは理解したか?」
「ああ、聖地に入ると、その聖地の所有者になれるって事と、聖地からは家へ帰宅が、出るときは、遷移先を選択可能……こんなところか?」
「そうじゃな。あと、お前達家族の誰かが入れば、その聖地は家族の誰でもが使える。オーナが定まった聖地は、そ奴が死ぬまで、オーナーの変更ができぬ」
家族の出入りまでは想像がついたが、オーナー変更は、仕組み的に出来ても良さそうな気もするんだが……
「ああ、勿論、OSに直接アクセスすれば変更可能じゃが、ゲートウェイを通っただ際に実行する自動処理は、最初の1度だけじゃ」
もう、現実世界だと言いつつ、処理って言ってるよね。
「ちなみに、お前達を召喚した最初の聖地の所有者は、お前の所の犬になっているぞ」
そ、そういや、最初に通ったのはミントだったな。
「それと、フェロル村の聖地だけはゲートウェイとして特殊な位置付けになる。ここを他の人間に抑えられると、お前達の自宅とゲートウェイの接続が切れる。自宅に戻れないと、お前達に与えている、自宅での恩恵が受けられなくなるので、注意が必要じゃ」
どんなに最悪の状態でも、ミントだけは絶対に死なせるなって事だな。
「今後も、聖地を見つけたら、どんどん入るが良い。移動の幅が増えるぞ」
本当にゲームっぽいな。
「なお、さっきも言った通り、所有者が設定された場合は使えない。使えないゲートウェイがあるという事は、そこを使って召喚された勇者がいるという事だ。それも忘れずに覚えておけよ」
聖地を使った陣取りゲームのようになってきたな。
「さらにじゃ、聖地が増えれば毎月25日に支払われる収入が増える!」
なんじゃそりゃ!
「とりあえず、当座の金が無いんだが!」
「前借りは認めぬ!」
「いや、貸せよ!」
「現金での前借りは認めない代わりに、買い物については現物支給で支払っているだろ!」
「は?」
「勿論、使った分は後で天引きするがな!」
おいおい、ひとえの奴、バギーやら小銃やら出してたよな。
あれって、いくらするんだ……
「ちなみに支給額って……」
「聖地1つに付き、20万円じゃ」
「うちの前借り分はいくらになった?」
「ちょっと待て……」
オクシヘノが考え込む。
「こんな感じじゃ」
振り返って、自分が出てきたモニタを指差す。
そこには、バッチリと明細が……
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トイレットペーパー(12ロール・ダブル)・・・ 238エン
ティッシュペーパー(5箱パック) ・・・・・・・ 219エン
洗濯用洗剤・・・・・・・・・・・・・・・・・ 267エン
米5Kg・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2200エン
豚バラ400g・・・・・・・・・・・・・・・・・592エン
あと白菜1/2 ・・・・・・・・・・・・・・・・113エン
…
…
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最初は細かいのが並んでいるが、
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自転車27インチ・・・・・・・・・・・・・・19,800エン
自転車27インチ・・・・・・・・・・・・・・19,800エン
自転車24インチ・・・・・・・・・・・・・・19,800エン
自転車24インチ・・・・・・・・・・・・・・19,8000エン
…
…
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この辺りが結構大きい。
それ以外に下着やら服やらの支出が目立つ。
更に……
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双眼鏡・・・・・・・・・・・・・・・・・・203,000エン
ATV 小型バギー・・・・・・・・・・・・・・119,800エン
ポリタンク・・・・・・・・・・・・・・・・・1,180エン
ガソリン(20リットル)・・・・・・・・・・・・2,040エン
催涙スプレー・・・・・・・・・・・・・・・・2,980エン
スタンガン・・・・・・・・・・・・・・・・・23,400エン
89式5.56mm小銃・・・・・・・・・・・・283,000エン
…
…
…
…
防弾・防刃ジャケット・・・・・・・・・・・・・227,000エン
防弾・防刃ジャケット・・・・・・・・・・・・・227,000エン
…
…
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そして最後に、合計金額が表示されている。
「1,082,264エン!!」
2つ聖地を所有して月収が40万としても、2.5か月分以上の借金があるよ……
「わかった、とりあえず今のままだったら、次の現金支給は3か月後って事だな」
「おお、そうなるな。妾もびっくりじゃ。利子は取らないので安心しろよ」
「利子が無いなら、この先、借金を続けて運営してもいいのか?」
オクシヘノとカルボノが顔を合わせて一瞬、考え込む。
「むむ、それは困るのぉ……よし、限度額を200万に設定したので、それは無理じゃ」
「借金経営はダメなのぉ」
今、設定しやがったな。
「そういやさ、うちの家族4人と1匹に対し、お前ら神様が5人担当してんだろ」
「そうじゃ」
「聖地、最初から5つ、所有っていうのでも、良かったんじゃないか?」
オクシヘノとカルボノが顔を合わせて一瞬、考え込む。
「そ、それじゃつまらんじゃろ」
「そうなの。冒険してこその勇者の国から来た救世主なのぉ」
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「さて、困ったことに、借金持ちとなった。家族を助けたあとは、聖地巡りをさせてもらわないと、食っていけなくなるな」
「そうですね」
「この近くに聖地はあるかな?」
「私も詳しくは知りません。あ、でも、首都には3つ、聖地があります。皆様を助けた後、私の任務もありますし、聖地巡りを兼ねて首都に行っていただければ……」
「よし、それでいこう。そこで救世主が召還済みでなければ、3つゲットできる。これだけで月収100万確定だ。借金さえ返せれば、余裕を持って生活ができるぞ!」
昨日の宿の相場感から、だいたい日本と同じくらいの貨幣価値と見ているから、手取り100万円。家でだいたいのものが手に入るし、外でお金を使うことがなければ、結構楽な生活になるぞ。
しかし、結局、どこに行っても、金の問題はついてまわるのか……




