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27.鉄壁

 ダメな神々に見初められたのが運の尽きか。


「そういや、魔物の出現頻度のパラメータを変えたのは、誰だ?」


 後から出てきた4人の神を睨むが、全員揃って顔を横に振る。


「わしらでは無い」

「私たちは、あなた達をこの世界に送り込んだだけ」

「これ以上、魔物達を増やしても意味なんか無いんですぅ!」

「やり方わかんねーし」


 という事は他の神がやったのか。

 だいたい神は何人いるんだ?


「妾達を含めて、安定している神は92柱じゃ。他にも沢山いるが、この件に関与しているのは92柱。だが、妾が動向を把握しているのは、ここにいる4柱だけじゃ」


 そんなにこいつらみたいなダメ神がいるのか。


「そうじゃ、そろそろ妾達も名前で呼んでくれるかの」

「いや、そこは、そんなに興味が無いが……」


「そう言うな。この先の旅で、神殿に寄ることもあろう。その時、自分を加護してくれている神の名前を知っていないと、恥を掻くぞ。とりあえず覚えておけ」


 そう言って5人の神々が自己紹介を始めた。


「まず、妾じゃ」


 俺をこの世界に連れてきた巫女姿の神が説明する。

 現段階では、ノートパソコンから出てきたデフォルメキャラになってるがな。


「妾は、可愛らしい巫女姿がチャームポイント、活動を司るオクシヘノじゃ」


 覚えにくい名前だ。なんか、意味があるのか?

 活動を司る? どういう事だ?


 次に侍姿の神様が名乗る。


「普遍を司る神 ニトロジーノじゃ」


 今度は普遍ね……

 ニトロって爆発するんじゃなかったか?


 可愛らしい幼女が名乗る。


「燃焼を担当していますぅ。名前はカルボノですぅ」


 たどたどしい口調。


 ジャージ姿で茶髪の女の子が名乗る。


「チワッス。自分、爆発を担当する ヒドロシノっす」


 なんでそんな口調に……さっきまで、普通に喋ってなかったか?

 それに爆発担当って? 燃焼と被ってないか?


「最後になります。私は溶解担当のクロロです」


 そういったのは上下スーツ姿の男性だった。

 最後は溶解を担当するって、なんか、滅茶苦茶だな。


 普通、火水風土とか、そういう属性なんじゃないか?


「まぁ、担当と言っても、妾達が象徴する概念の一つに過ぎん」


 概念か……よく解らないが、そこを突き詰めると話が進まないので……


「わかった。俺はタナカ。こっちはリリィ。知っていると思うが、よろしく」


 改めて名乗られたので、こちらも返す。


「92人いる神様のうち、5人がここにいるって事だな」

「そうなる」


「それで、魔物の設定を変えたのは、ここにいない他の神だって事か」

「ああ、その理解でいい。彼奴が何を考えて変更したかは、解らんが……」



 驚愕のあまり、横で呆然と事の成り行きを見ていたリリィが久しぶりに口を開いた。


「他の王族が向かっている他の聖地には救世主様は降臨しないのでしょうか?」


 リリィの言葉に、幼女姿のカルボノが応える。


「それは、わかんないの。みんなで話し合って、この世界を何とかしようという話をして、勇者を送り込もうって話になったんだけど、そのあと、誰がその勇者を送り込むかで喧嘩になっちゃってぇ」


 この世界の神様は何をやっているのだ。


「元々、私達の遊び心から作り出した世界だったので、そんな面白そうなイベントに参加しない訳には行かないと、お祭り騒ぎのようになってしまい……面目ありません」


 スーツ姿のクロロが謝罪した上で、続ける。


「その結果、各自、それぞれで判断でして、聖地に救世主を送り出す。但し、孫神1柱に付き1人まで……という決め事だけ決めて、その場は解散となりました」


「じゃあ、この世界に最大92人の召喚された救世主とやらが来ているって事か?」


「そうなるのぉ」


 最後に巫女姿のオクシヘノが締める。


「だがな、聖地は別にこの国だけにある訳じゃない。この国は『始まりの国』として全ての神と紐付くゲートウェイをこの辺りに集中させたのだが、妾達がどこでも顔を出せるよう、この世界には、まだまだ沢山の聖地がある。なので、それぞれの孫神が、どこの聖地に救世主を送り出したかは、妾達には解らんのじゃ」


 しかし、呆れた話ではあるが、うちの家族…神様がこっちに5人いるって事は、ミントも1人にカウントだな……以外で、87人の救世主となる勇者が、この国か、それ以外に召喚されたって事だな。


 まぁ、これは、そのうち他の救世主にも出会える事があるって事か。

 

「あ、今後、別の聖地を見つけたら、そこに入ってみろ。面白い事があるぞ」

「いや、今のうちに何が起こるか、教えておけよ」

「それはその時のお楽しみで。まぁ、なるべく早めに他の聖地にも行っておけ」


 そう言い残して、5人の神々はノートパソコンのモニタの中に消えていった。


 ----------


 リリィの方へ振り返る。


「という事だそうだ」

「タ、タナカ様? 私は半分も理解できなかったのですが…」


「気にするな。とりあえず、今聞いた事は他の人には言うなよ。どう受け取られるか解らないしな」


「は、はい。解りました」


 さて、気を引き締めて、家族の救出に動きますか。

 と言っても、村へ行って状況確認をしてから、次のアクションを決めるしか無い。


「リリィ、とりあえず俺は家族を救出したいのだが、俺1人の力でどうこう出来る様な状況では無いみたいだ。まぁ、ファビオって奴の件は、詳しくは解らないが、そちらの事情に巻き込まれたみたいだしな。一蓮托生という事で、一緒に行動してもらえないだろうか」


「それは勿論です。私の任務はタナカ家のご家族の皆様を安全に首都まで送り届ける事ですし」


「それじゃ、一緒に行きますか」


「あ、でも待ってください、外には……」


 そうだね。

 外には待ち伏せをして、リリィの命を狙っている奴等がいそうだね。


「さっきも言っただろう。今のリリィは生物を飛び越して、魔王城よりも防御力を持つ存在になったので、外にいる奴等くらい、問題無い。防御は完全無視で、ガンガン攻めていけば、何とかなるんじゃ無いかな」


「はぁ……」


「あ、あと、俺は普通の人間のままなので、護衛の方もよろしくお願いします」


 ----------


「い、行きますね」

「おう」


 リリィが玄関から、そぉっと顔を出して、戻る。


「タナカ様、小屋の中は無人です」


 小屋の外で待ち伏せか?

 確かに、ここでは、光のカーテンのこちら側の動向が掴めないから、奇襲向きじゃ無い。小屋の外で待ち伏せしているって事か。


 ドアを開けた瞬間が一番危ないな。普通だったら……


「よし、小屋の外に出るぞ。ドアを開けた直後に襲われてもいい様に警戒しろよ」

「はい!」


 リリィがドアをゆっくり開け……た瞬間、ドアが外側から大きく引かれる。


「うわぁ」


 リリィがドアにひきづられ、外へ転がり出る。

 警戒しろって言ったじゃん。


「リリィ!」

「え、きゃー」


 そこへ、外で待ち伏せをしていた2人の男が出てきて、リリィの頭に向かって剣が振り下ろす。悲鳴を上げつつ、とっさに腕を上げ、頭を庇おうとするリリィ。


 ガン、バキっ!


 腕に当たって、2本の剣が折れた。


「い、い、い、いたーーくない!!」


 恐怖で涙目になったリリィが、剣が折れた事に呆然とした男のうち、右側にいた男を殴り飛ばす。


「ぶべっ」


 男は吹っ飛び、そのまま階段を外れ宙に浮き……崖下へ落下していった。

 この高さじゃ助かるまい。


「ば、化け物!」


 それを見て、残った男が背を向けて逃げ出そうとする。

 その背中へ、リリィが跳び蹴りを加えた。

 蹴られた男は、階段を転がり、30段くらい転がった後で横にそれ、やはり崖下へ落ちていった。


「よくやった」


 リリィを褒める。

 うん、剣くらいじゃビクともしなかったね。


「そんな事ないです。ほ、ほら、ここ、斬られた所、少し白くなってます」

「どれ」


 涙目で訴えるリリィの腕を見た。確かに白い線がうっすらと2本。

 ちょっと擦ると消えた。


「うん、ビクともしてない。やはり魔王城以上の防御力は伊達じゃないね」

「わ、私、こんな身体になってしまって……」


 まぁ、ちょっとショックだろうね。

 人類の規格を遥かに超えてしまった『化け物』になってしまったんだしな。


「お嫁に行けるのでしょうか」


 リリィが、ハラハラと落涙する。

 そんな事、どうでもいいわ!


「どうしよう、父上になんて説明を。こんな身体になって、この先、私をお嫁に迎えてくれる素敵な旦那様は現れるんだろうか……そもそも、結婚できたとして子供を作る事は……はっ、鉄壁の防御力って事は、初夜を迎えた時にも、鉄壁の防御力で……うわーん、文字どおり、鉄の処女になっちゃうって事では……立派な貞操観念をお持ちだね、でも、鉄壁の貞操とか、無理って言われて逃げられそう。かくなる上は、かくなる上は…」


 ブツブツと自分の世界に入ってしまったリリィだったが、突如顔を上げ、


「タナカ様、責任をとって私をお嫁に……」

「俺は妻帯者なんだが!」


「はっ!」


 その声に突然、リリィは村の方へ土下座し、


「奥様、申し訳ありません。リリィは、つい調子に乗ってしまいました」


 そして立ち上がり、腰を手に当て直立不動になり大声で叫ぶ!


「近づきません中年に!、トキメキません中年に!」

「命をかけて守ります。このタナカ家の未来と自分の操!」


 いや、それはもういいって。

 中年中年って連呼され、ちょっと傷つくよ。

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