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24.マゴガミンワールド

 リリィが教えてくれた追加の神託が、俺に希望をもたらした。

 

「それだ、リリィ! それを待っていたんだよ!」

「え、あ、そ、そうなんですか?」


 やっときた。

 この情報が一番最初にあれば、もっと状況が違っていたはずだ。


「ちょっと待ってて。準備する」


 初日は、外部へ接続できなかった。

 住んでいるマンションがDHCPサーバを持っているため、自宅だけ転移した事でIPアドレスが取れていないと思い、パソコンをネットワークに繋ぐのは諦めていた。


 その情報が神託によって持たされたのだ。


 寝室から仕事用のノートパソコンを持ち出し、ネットワークの設定を変更する。


「DHCPの指定が無いから、とりあえず、こっちのIPは直値で突っ込めばいいか。どっかにぶつかったらゴメンなさいっと」

「??」

「サブネットは、255.255.255.0と」

「??」

「DNSはどうするんだこれ……ルータがぶら下がってるのかな?」

「??」

「pingで叩くか……ほい、1に何かあるね」

「??」

「telnetで反応するから、DNS、ここでいいのかな?」

「??」

「nslookupで、あ、やっぱりDNSが立っているね」

「??」


 リリィがポカーンとした顔をして俺の作業を見守っているが、それは無視。


「とりあえず、ネットワークにはつなげられたので……」

「ネットワークですか?」


 うん、気にしないでくれ。


「そいじゃ、行きますか」

「え、どこに?」


 リリィには何のことやら解っていないだろうが、それは無視して、神託で指定されたURLを叩く。


 -- http://www.magogamin-world.god/


 .godって舐めた名前使いやがって。


 すぐに、サイトへアクセスできた。

 ちゃっちゃらーん……と気の抜けた音がなり、トップページが表示される。


 ----------


<<マゴガミンの世界へようこそ!>>


 今時のウェブページではありえないくらい、クソだっさいトップページが表示され……


「ばか者ー 遅すぎるわーーーー!!」


 突然、ノートパソコンのモニタから、10cmくらいの大きさの女の子が飛び出してきた。


「うわー!」

「な、なんですかー」


 俺もびっくりしたが、リリィもびっくりする。


「タナカよ、妾じゃ」


 よく見るとこの世界へ俺を引きずり込んだ自称神のオク……ナントカだ。


「あー、なんだ、遅いとはどういう事だ?」

「時間がなかった分、ちゃんと説明しようと使者まで送っておったはずなのに、なんでこんなに時間がかかるんだ!」


 殴っていいかな?


「いや、このサイトへのアクセス方法を聞いたのが、ついさっきなんだよ」


「なんだと、追加の神託で、この情報をすぐ教えるようにと伝えたはずだが……」


 リリィが、顔をブンブン振っている。 こっちの人間のせいか!


「それはそうとして、新しい世界の住み心地はどうじゃ? 希望通り、海と山のそば、最高のロケーションだろう」

「ああ、そうだな。景色はいいが、魔物が沢山でて大怪我はするし、変な王族に絡まれて殺されたし……現在の所、散々だよ」


 住み心地としては最悪という評価だな。


「そんな馬鹿な、その辺りには、魔物も……なんじゃこりゃ??」


 小さい神様が横を向いて何かを確認して、唖然としている。


「ぬぉぉ、いつの間にかこんなにポップしている。そんな設定をどうやっ……くそ、あいつか……」


 ポップってゲームかよ。

 あいつらって誰だ?


「すまんな、全世界の魔物出現のパラメータをいじった馬鹿がいるみたいだ」

「そのパラメータって治せるのか?」

「いや、妾はどの部分になるのか知らないのじゃ」


 パラメータで魔物のポップの設定が変更可能って、この世界、ゲームの世界確定か?


「いや、似てはいるがゲームの世界では無いぞ。そこは間違いなく現実の世界だ」


 お、心の声が届いたか。


「お前らが元々いた世界。あそこは、我ら孫神まごがみの親である3柱の子神こがみにより造られた世界なのじゃ。我らが親は、それは真面目での。遊びの無い、かっちりとした世界が出来あがったのだ。魔法も無い、魔物もいない、本当につまらない世界じゃ」


 神話が語られるのか。魔物がいない世界が、俺にとっては普通なんだが……


「なので、妾を含めた孫神はいつも退屈での。なんとか面白い世界に変えられないかと悩んでおったら、地球にいる人間どもがゲームという面白いもので、自由に世界を作っているではないか。なので、それを真似しようと、孫神が一致団結の元、子神の手の及ばない、孫神だけの世界を作ったのだ!」


 この世界は、こいつらの退屈凌ぎで作られたのか。


「だからゲームには似ているが……そうだな……この世界だけが存在する箱庭宇宙を創造し、その中で、ゲームに似たルールの元、人間達に生活を営ませている……と言えばいいかの」


「この世界はお前らのおもちゃか?」


「そうとも言えなくは無いが、妾達、孫神のルールとして、人間や魔物を配置する事は出来てもコントロールする事は禁止している。ゆえに、初期配置からこの世界の時間で8000年以上の時が経過しているが、初期配置して以降、妾達は手を出してはおらんぞ」


「ところで、なんで神様と会話するのに、Webサイトへアクセスさせたんだ?」


「この世界を作る際、できるだけ簡単にするために、お前らの世界のゲームを模倣したのだ。だから、この世界は妾達が作ったマゴガミンOS上で動いているし、妾とお前達が会話をするにはサーバをゲートウェイとして使う必要があったのだ」


 いや、完全に俺がいるのは、ゲームの世界だよね。

 ……って事で、パソコンのコンソールを立ち上げる。


 -- telnet www.magogamin-world.go

 user id >


 お、出てきたな。


「なぁ、サーバのアカウントって何を使っている?」

「ん? 妾のは oxigeno じゃが、それがどうした?」

「パスワードは?」

「面倒なので、アカウントと一緒にしているぞ」


 こいつら、リテラシーってものが無いんだな。

 お、入れた。


「さっき言っていたパラメータって、データベースか何かに保存しているのか?」

「妾も良く知らんのじゃが、そういう情報は全部ポスグレっていう箱の中に入っていると聞いているぞ」


 ポスグレね。

 よし……


「ポスグレの入り方は知っているか?」

「ん、ちょっと待ってくれ。この辺に運用マニュアルがあったかと」


 なんか、小さい神様がバタバタしている。


「えーと、psql -U god magogamin で……」


 よっしゃ。データベースにアクセスできた。


「でも、パラメータの設定なんて、どこか解らないぞ」


 ああ、そんなもんは後回し。

 この世界がデータベースに格納されている情報というなら、あるはずだ……


 あった、この辺りか……よし、これだな……あとは、家族の情報を……


-- select * from キャラクタ where なまえ like 'タナカ%'


 な、なんだと???

技術的な部分は、それっぽく見せるための演出が少し入ってます。

こんなザルなセキュリティはありえないですね。

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