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<王国編> 2. 王家の歴史

 聖ダビト王国の成り立ちは、初代である建国王アベル・ダビドとその双子の弟たる副王ロランド・ダビドの伝説とも言える。


 弱小の都市国家でしかなかったアルテア。

 共和制を取っていたアルテアは、有力な商会から送り出された代表者による議会にて、国会は運営されていた。


 そのアルテアを囲む外壁のすぐそば、路地の奥にあるエレメト・デ・サンタ教会に孤児としアベルとロランドの幼き兄弟は預けられた。


 孤児として育った二人ではあったが、その境遇は決して悲惨なものではなかった。

 教会にて初等教育を受け、特に弟のロランドは優秀な成績を収め、その栄誉から教会よりダビトという姓が送られた。建国王の姓であり、この国の名前の由来でもある「ダビト」は、副王である弟の姓から来ている(兄がダビト姓を名乗るのは、王として戴冠する直前であったと言われている)


 14歳で成人する頃、弟のロランドの優秀さは磨きをかけ教会の推薦と、目をかけてもらっていた商会の推薦を受け、大学へ進学した。その後、大学で学問を究めると、近隣諸国へ赴き、さらにその見識を深めていくのであった。


 一方、社会的評価では弟に先を越された感のある兄は、それでも弟を妬む事なく、教会の教えに傾倒した。教義の理解をより深める事で、教会内での地位を上り詰め、また、布教活動も、誰よりも熱心に行う事で、生来持っていたカリスマ性もあり、38歳の頃には、エレメト・デ・サンタ教はアルテアにおける最大宗派としてその勢力を拡大し、その功績で教父とよばれるまでになっていた。


 このままであったなら、二人は後世に伝わる著名な聖職者と学者だけで終わったかもしれない。しかし、アルテアが近隣3つの都市国家より同時に攻められた事で、二人の運命は大きく変わる。


 王制を取っていた3つの国家の王家は相互に婚姻関係を結ぶ事で、より権威を高めあってきた。それぞれの王位の座にあったものは従兄弟同士であり、幼少期からの交流もあった頃から、これら3つの王家が連合して、近隣諸国をまとめ、一つの大きな連合王国を作ると言う機運を高めた。そして、そのタイミングで、たまたま一番近くにあった共和制の都市国家アルテアが狙われる事になったのだ。


 だが、この連合側の思惑は最悪の形で裏切られる事になる。


 兵力的には圧倒的優位に立っていた連合側であった。兵力差の前に、悲壮な覚悟で立ち向かったアルテア政府直轄軍を、早々に撃破し、あとはアルテアを制圧するだけと言う油断もあったのだろう。


 だが、まだアルテアには命をかけて自らの家族を、財産を、都市を守るという意思と覚悟を持った民兵が多くいた。そして民兵の意思を神々の名の元に一つにまとめ、彼らを率いて最前線に立ったアベル、その傍らで軍師として立つロランドが決死の覚悟を持った民兵と共に、連合の前に立ちはだかったのだ。


 結果、連合は大敗をした。


 連合を打ち破ったアルテアは、その勢いで3都市を支配下に併合。その後、アベルが受けたという神託により、示された92の聖地を手中に収めるまで戦いは続いた。

 最初の戦闘から約10年、アルテアは、ほぼ現在の聖ダビト王国の版図の支配圏を手中に収めた。


 実質的にアベルを長とする封建国家となっていたアルテアは、正式にアベルの戴冠を認め、共和制から王制に移行し、アルテアを王都とする王国が生まれた。


 また、最も功績のあった者として弟のロランドを副王とし、国号を教会から弟に贈られた姓「ダビト」を用いる事で、この国がエレメト・デ・サンタを教義とする宗教国家である事を宣言したのだ。


 聖ダビド王国建国、この時、二人の兄弟はすでに52歳だった。


 二人はそれぞれ子供達がおり、戴冠と同時にアベルの長男が王太子として擁立された。また、副王の地位はロランドの強い意志の元、ロランド一代に限りるものとする一方、アベルの強い意志で、ロランドの子孫にも王位継承権があるものとされた。


 なお、ロランドの子供達は、アベルとロランドの元々の姓であるヒメノが授けられたのである。


 幸か不幸か、その後、ダビド家は代々に渡り子宝に恵まれたために、直系嫡子による順調な王位継承がされたため、王位を巡って国が乱れる事もなかったが、一方、王位継承の資格を持つ王族が増え続け、王家の財政は圧迫され、王家から臣下への降臣の手続きが定期的に取られる事となったのである。


 こうして、ロランドの直系となる子孫は、ヒメノの姓を残した一族だけになったのであった。

次話も王国編になります。

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