そんなに大きいの入らない? そうか、また今度な
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、オレは平気だ……」
「いやお前、どう見ても死にそうだぞ」
「どこから沸いた……ハル」
「ちょっとお兄ちゃん、誰なのこの人」
「俺の親友のハルだ」
「おい、いつ親友になったんだ」
「お兄ちゃんに親友が」
頻尿兄妹が何やら道のど真ん中で寸劇を繰り広げているので首を突っ込んでみた。頻尿妹はなかなかの萌えボイスだ。まぁそんなことはどうでもいい。オレはボイスレコーダーを持っていることを確認した。
「おい、赤也。それと赤也妹。頼みがあるんだが」
「なんだ?」
「妹……」
「これ、俺が趣味で書いている小説なんだが、2人で朗読してくれ。台詞の部分だけ」
「いいぞ。正美も良いよな?」
「ああ……うん」
渡したのは勿論自作小説などでは無い。コレは俺の弟が書いた怪文書だ。兄目線で見ても痛々しい出来の世に解き放ってはいけない類いの文章である。
「ああ、騎士。私の部屋で下着を盗んだばかりにこんな血だらけになってしまって……」
「……まさか、お前の下着を盗んだだけでこんな満身創痍になるとは思いもよらなかった。世間はさぁ、冷てぇよな」
「貰った下着に意味は無いのだ天使よ。誰も穿いていないパンツに価値が無いように」
「騎士……なんだかわかりませんがとても男らしいですわ」
「は? お前馬鹿じゃねぇの?」
「騎士……?」
「違う、コレは俺の内なる人格が勝手に」
声有りで聞くと一層わけわかんねぇな。弟はこれを主人公とヒロインのいちゃいちゃだと思って書いたらしい。
「……なんですかこれ? これを貴方が?」
「ああ、面白いだろ?」
「俺が言うのもなんだが、これはつまらない」
そう言った頻尿の足元が濡れており、仄かにアンモニア臭がする。
「お前もうオムツ穿いて外出しろよ」
「かっこ悪いだろうが」
「今のお前の方がカッコ悪いわ」
「あん? ……コレはお漏らしでは無い、男の涙だ」
「謝れ、全宇宙の男に謝れ」
「何故だ……?」
目の前のお漏らし男は心底不思議そうに右手で顔を覆った。声だけ聞けばイケメンだ。声だけ聞けば。
「……くっ」
「あ?」
隣の妹を見るとお腹を押さえて蹲っている。何だろうか、排卵日なのだろうか。
「………して」
「なに?」
「……してぇ」
「うん?」
「糞してぇ…」
「そうか」
俺は排泄兄妹を捨て起きメロンパンを買いに行った。ボイスレコーダーの音声は弟に送っておくことにした。