世界はいつだってこんな筈じゃなかった事ばかりなんだよ。
女という生き物は怖い。
俺がそう思ったのは昨日の夕方の事だった。
□ □ □
俺が帰る準備をしていると百井が帰りを共にしたいと言うので特に用も無かった俺は一緒に帰る事にしたのだ。
「初めましてハルさん。お噂は予々聞いています」
「アキちゃんもいるんだけどいいよね?」
「ああ」
「アキちゃんちっちゃいけど同い年なんだよー、炉利伊田星の娘なんだ」
「なるほどな」
惑星ロリータ。特徴としては女の発育があまり良くない事が挙げられる。遺伝子レベルでそう刻まれているらしい。
所で惑星ロリータの頭文字を一文字変えるとヤサイな惑星になるな。すごくどうでも良い。
「おお! ねね、ハルくん、アキちゃん。アレ何かわかる?」
「アレって?」
「どれです?」
「アレ、あのクレーンゲームの中にあるぬいぐるみ!」
「あの、うさぎと犬と猫を足して良い所を差し引いた合成獣みたいな奴か?」
「可愛いですねぇ」
隣でズレた事を言うこの小柄な少女。名前はなんとかアキちゃんだ。聞いてないのだから仕方ないだろう。
「坂井秋ちゃん」
「はい? なんです?」
「なんでもないよぉ〜」
急に人の名前を呼んだかと思えばなんでも無いだと? イかれてやがる……。
「……」
「それで、あの『にゃ』ちゃんがどうしたんですか?」
「にゃって?」
「うん! あ、それって『セイクリッドわんわん』?」
「は?」
おかしい、俺は『にゃ』なる物が何なのか聞いたはずなのに訳のわからない言葉で返されてしまった。
「で、『にゃ』とは何だ?」
「あの可愛いぬいぐるみの名前だよ?」
「何それクッソ適当すぎない?」
「シンプルなのがいいんだよー」
「ですねー、シンプルなのが最高ですよ!」
俺を差し置いてメス2人で盛り上がる様相を見せられて俺は俺の存在意義を空に語りかけた。
空は良い。空は最高。ああ、ベランダから飛び立ちたくなってきた……。
「ねぇ、ハルさん!」
「ねね、ハルくん!」
「ん?」
「アレ取ってよ」
「取ってください!」
「なんで取らないといけないんですか。私が貴女達にそれをする理由は?」
「頼んでるんだからとってよ〜」
「お断りで」
俺がそんな事をして何の得があるというのか。確かに徳は積めそうではあるが、彼奴らに積むほど俺の徳は安くない。
「ハルくん、クレーンゲーム……出来ないんでしょ?」
「は? 舐めんな?」
「じゃあ、取ってくれても良いじゃないですかー」
「煽りにシフトしても無駄だ。断固拒否だ」
「えー」
「強請るな。世界はそんなに優しくないぞ」
「ケチ」
「今の私は煽り耐性100%ですので何を言っても無駄だ」
「タマ無し野郎」
「……」
「キンタマついてんのか早漏野郎」
調子に乗るなよメス共……。
俺は不本意だが其処まで言われてしまっては戦争しかない。
「……やってやろうじゃ……ん」
いきなり何者かに背後を取られた。この殺気、この気配覚えがある。
「板……何故ここに……」
「女の子には優しくしないとダメだゾ」
「もしかして……アレ……ですか?」
「イエス!」
「冗談とかでは……無いですよね?」
「イエス!イエス!イエス!」
「なんとかなりませんか? 情状酌量の余地は?」
「ノウ!ノウ!ノウ!」
「空……飛びてぇなぁ……」
「飛べよォォォォオオオオオオ」
久しぶりの激痛を受け意識が飛ぶ。1分間の没入を楽しまねば。
タマなんて
持ってて良い事
一度も無し
だから女は好かんのだ。そうして俺は飛んだ。
意識の底でロリコンのお兄さん達が拷問器具をもって出迎えてくれたのだった。




