少年、薬が嫌いか? ならずっと健康でいればいいんじゃよ
「地球人って微妙に貧弱じゃん?」
「ま、こんな平和な惑星に住んでるんだから強くなる必要ないんじゃないか」
「というわけで、はい」
何がどういう訳なんだ。コイツ狂ってるんじゃないか? 俺は目の前の科学部部長、松戸才斗に対してそう思った。
「なんなんだ?」
「ハリーくん文脈で読み取ろうや」
俺は目の前のバカをぶん殴った。理由はなんかムカついたからだ。誰かを殴るのに理由はいるかい? という名言を残したのは誰だったか。
「殴るぞお前」
「もう殴ってるじゃないか!!!!」
「殴るぞお前」
「全く……」
「早くしろ」
「わかった、わかった、わかったから!! その今にも振り下ろしそうな拳を解いてよ」
「解ればいいんだよ。んで? なんなんだよ」
「地球人になれる薬を作ったんだ」
「どこに需要があるんだそれ」
「わかんない」
「……」
舐めてるのかコイツは? いや、舐めてるんだろうコイツは。ああ、なんか疲れてきたし喉も渇いてきた。
「はいはい、拳を解いて。落ち着いて、はいコレ飲み物」
「気が効くじゃないか」
俺は渡された飲み物を飲む。オレンジジュースのようだがどこか口当たりが悪い。まぁ、不味い訳ではないので許してやろう。
「ハリーくん。ごめん、それ例の薬だ」
「おい」
「おめでとうだぞハリーくん。君は今から24時間地球人だ」
「おいコラ」
「んじゃ、良い地球人ライフを満喫してくれや」
目の前の賢しいバカは脱兎の如く逃げていった。後でシメてやる。俺は俺にそう誓った。
□ □ □
「しかし、地球人になったと言っても何も変わらないんだが……」
外見が変わるでも無し、体調も至って普通だ。あのマッド野郎、何が地球人になれる薬だ。ただのオレンジジュースじゃないか。
「ハルくぅん、会いたかったよぉ」
目の前に現れたのは俺と同じ銀髪を肩甲骨くらいまで伸ばし。その髪を後ろでまとめ、所謂ポニーテールにし、成人とは思えない貧相な胸を持った恐怖の存在。一言で言うと姉が現れた。俺は対姉用迎撃人格を起動させる。
「何か御用でしょうかお姉様!」
「んもぅ、そんなに怖がらなくてもいいじゃない」
「い、いえ、決してそのような事は!」
「んじゃあ、お姉ちゃんの事どう思ってるの〜?」
どう思ってるも何も俺の急所を破壊してくる快楽殺玉者だ。お願いだから早く帰って欲しい。そして未来永劫俺の前に現れないで欲しい。マジで、切実に」
「ハルくんの悪くて良い所は……嘘をつけない事だねぇ〜」
「あっ……アッ……ァァ……もうダメだお終いだぁ……」
「おいコラ愚弟! タマ取ったるから歯ァ食い縛れや」
「ヒィッ!」
「行くぞオラァ!」
「アンジェラァァァァァァァ!!」
どうやら地球人になったと言うのは本当だったらしく。アンジェラが楽園から地上に舞い降りてきたのはそれから3日後の事だった。




