第150話 「エピローグ☆それぞれの未来へ」
今回で最終回です。
俺達が悪魔王国ディアボルスのクーデターを未然に防いでから1週間後……
ここは、これから新しく誕生する街ゲネシス。
街には観光名物となる予定の謎の迷宮がある。
かつて俺達が探索した迷宮を改造したのだ。
その迷宮のずっと奥に隠された旧ガルドルド魔法帝国の宮殿において、新しい事業に関係する各種族の首脳が集まって新たに会議が行われる。
進行役は旧ガルドルド魔法帝国宰相テオフラストゥス・ビスマルクであり、本人も重責を任されてやる気満々だ。
注目の参加メンバーだが、人間族からは旧ガルドルド魔法帝国の元帝国皇帝モーリス、進行役を兼ねた宰相テオフラストゥス・ビスマルクと魔法工学師10人組。
竜神族からは竜神王エドヴァルド父と部下3名。
アールヴ族からは一族の長であるソウェル、シュルヴェステル・エイルトヴァーラと、息子のマティアス・エイルトヴァーラ&妻フローラ、そしてシュルヴェステルの孫にあたるアウグスト・エイルトヴァーラと彼の同志2名。
悪魔族からは、悪魔王国ディアボルス新宰相のバルバトス、王家親衛隊の新隊長アモン。
そしてトルトゥーラ王国の女王に就任したレイラである。
ちなみに俺と嫁ズはオブザーバーとして特別参加扱いにして貰う。
議題は先に行われた会議の結果を踏襲し、会議は無事行われた。
※第133話参照
新しい街ゲネシスを、商取引と迷宮観光を売にした自由都市=自治扱いにする事。
同タイプの自由都市を数箇所、各地に造って行く事。
種族別に新たな商会を作って上手く秘密が守られるように商取引する事。
悪魔王国の食糧問題の全面的解決に向けて援助する事。
引き換えに悪魔王国民は例外を除いて魔界に留まり、こちらの世界に絶対に進出しない事。
ここに上がった以外の事案も随時、各種族の力を合わせて解決して行く事。
以上の決定事項は種族間の正式な条約として取り交わされ、書面にして締結されたのである。
また、この会議の主催者が実は邪神様であり、もし違反した場合はとんでもない天罰が下るとも伝えておいた。
これは抑止力としては最高の力だろう。
多分反抗する者は出て来ない。
会議終了後、出席した者は皆、明るい表情だった。
まず世界の平和安定を前提にした会議なのが良い。
そして議題に対して各種族から意見が活発に提案され、概ね問題無く纏り、大成功したといえる会議だったからだ。
更に2週間後……
世界の北東に位置するアールヴの国イエーラ……
彼等が商業の街として位置付けるベルカナより少し離れた地に建設中であった街がとうとう完成した。
例の会議が行われた迷宮の地上に存在する街、世界の希望ともいえる街が、とうとう完成したのである。
街の名は予定通り、創造の地と名付けられた。
名誉ある初代町長に就任したのはアマンダ、そしてアウグストとフレデリカの父であるマティアス・エイルトヴァーラである。
この人事はソウェルであるシュルヴェステル・エイルトヴァーラの直々の指名でマティアスが拝命したのだ。
マティアスは最初、町長就任を嫌がっていたようだが、祖父でもあるソウェルから指名されては断るわけに行かない。
しかし先の会議に出席して息子のアウグスト共々、仕事に対してのやる気に火が点いてしまったマティアスは大いに困った。
折角の機会だから世界を股にかけて商売をしたいのだ。
そこで妻のフローラに相談したところ、快く町長の任務を受けてくれる事になった。
夫も息子も仕事に邁進するとなると、フローラは暇を持て余すのは必至だ。
エイルトヴァーラ家の女帝と呼ばれるマティアスの妻フローラも町長という名に魅力を感じたのである。
こうして現実にゲネシスの街を運営するのは、フローラとなったのである。
フレデリカの母フローラだが、俺との人間関係は超良好だ。
それどころか、俺1人で彼女を訪ねると、逆に触れなば落ちん状態になり「喰われそう」で怖いくらいである。
先日皆で訪ねた時に、フレデリカとの結婚を許して貰ったのに加えて、後日俺が一族の長シュルヴェステルにも認められたとも聞いてフローラには完璧に許して貰った。
フレデリカによれば早く孫の顔を見せて欲しいといわれるくらいだそうだ。
話を元に戻そう。
新たな街である創造の地は、元々、旧ガルドルド魔法帝国の遺跡で失われた地と呼ばれ、忌み嫌われていた地であった。
しかし俺達クランバトルブローカーが迷宮を探索し、旧ガルドルド魔法帝国の遺臣と邂逅し、友好関係を持てたので、街を再建して新たな事業の拠点にしようと考えたのだ。
かつての有名ゲームのように魔物が潜む迷宮をネタにして、得られる高額なお宝目当ての冒険者を大量に呼ぶ。
人が来れば、金と物と情報が集まり、活気が出る。
街の表の顔としては、いわゆる迷宮観光都市って奴だ。
またここが今回の様々な仕事の拠点になる初めての街なのである。
各種族の経営する商会が作られて、街のオープンと共に業務をスタートしたのだ。
各商会は下記の通りである。※【 】内の人名は社長及び役員
モーリス&ジェマ商会【モーリスさん、ジェマさん】人間族
ガルド商会【テオちゃん&魔法工学師ズ】人間族※技術供与専門
ミレーヌ商会【エドヴァルド父】竜神族
アウグスト商会【アウグスト・エイルトヴァーラ】アールヴ族
ヴォラク&セーレ商会【ヴォラク&セーレ】悪魔族
そして、商会形態にはしなかったが俺達クランバトルブローカーが加わる。
世界中から評判になっていたゲネシスは、街が開かれると同時に予想通り冒険者が殺到した。
やがて彼等を相手にする冒険者向けの宿屋、食料品屋、武器防具屋、魔道具屋、魔法薬屋、馬屋等様々な店も続々と進出し、凄い活気を見せたのである。
事前に完成していた大空亭ゲネシス店も街が開かれたと同時にオープンしており、毎日大盛況であった。
ジェマさんは忙し過ぎて毎日が短いと嘆いている。
夫のモーリスさんも同様に忙しいから、夫婦すれ違いにならないようにしないと。
もし、すれ違い離婚になどなったら、俺はジュリアとソフィアに殺されるだろう。
ちなみにタトラ村では元の大空亭とモーリスさんの万屋は大改築中で店舗が一緒になる予定である。
商売を好きなだけやり尽くして疲れたら、2人は故郷のタトラ村でのんびり余生を送るだろう。
ジュリアの父エドヴァルドは商会に愛する亡き妻の名前を付け、竜神族の里を豊かにしようと部下と共に頑張っている。
テオちゃんことテオフラストゥス・ビスマルク宰相は技術供与の店としてガルド商会を設立し、会頭におさまった。
疲れ知らずの自動人形の身体を使って、10人の魔法工学師ズと共に、旧ガルドルド魔法帝国の技術で世界の人々を豊かにしようと奔走している。
主に地下迷宮で極めた食糧生産の技術が役立っているようだ。
現在は悪魔王国ディアボルスで歓待され、悪魔大学のオロバス学長と共に瘴気でも育つ作物育成に向けて日夜研究に明け暮れている筈である。
ちなみにあのゴッドハルト達、コーンウォール迷宮に居た親衛隊も身体を人間そっくりな自動人形に移し変えてガルド商会に所属し、活躍中だ。
悪魔ヴォラクは要領の良さもあり、大学生だった悪魔セーレと共に悪魔王国の食糧の扱いを一手に引き受ける契約を獲得し、大躍進している。
ちなみにヴォラク&セーレ商会が大躍進しているのは超幸運?な事があったからだ。
先の『ベリアル』クーデター事件には、あのブネ商会とラウム商会が絡んでいた為、両商会とも罰として取り潰しになったらしい。
ああ、ヴォラクめ!
あいつは本当に悪運が強い奴だと言えよう。
ただ悪魔族との取引はいまだに禁忌扱いなので裏の顔も持つガルド商会が例外的に取引を行っている。
これは万が一、取引が発覚しても他の商会に足がつかないようにだ。
イザベラの姉レイラは女王として政治的手腕を発揮し、悪魔王国トルトゥーラは繁栄の一途だそうだ。
彼女こそ悪魔歴史に残る名女王になると噂されているらしい。
そして最後に邪神様の告げた世界滅亡の件だが……
何と何と撤回してくれたのである。
邪神様自身が立てたとんでもない策略が当たり、種族が友好関係を結べて世界を安定させた事、使徒として俺を大活躍させた事。
そして世界中の民族の信仰心が総合的に上がった事などを父親の創世神にとても評価されたようだ。
加えて神格がとても上がったらしく、本人もたいへんご機嫌でまあメデタシ、メデタシである。
とりあえずこれで恐れていた世界滅亡の危機は去った。
最後に肝心の俺だが竜の襲撃の後も忙しく、嫁ズとの本結婚式も挙げてはいない。
ゲネシスとタトラ村、そして悪魔王国ディアボルスの王都ソドムにそれぞれ立派な自宅も建てたのでまあ寝に帰れる場所はある。
一方、仕事はというと……実は各種族のお偉方さんから色々と頼まれ事をされてしまったのである。
内容と言えば当初俺がやりたかった仕事に近い。
今迄に稼いだ金は結構あるし、大空亭などへ堅実な出資もしているから、本業は少し冒険的でも良いかと嫁ズに相談したら、何とOKが出てしまったのである。
その話はまた次の機会に……では、いずれ!
今迄ご愛読頂きありがとうございました。
第2部を構想中ですが、連載開始時期は未定です。