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第136話 「リア充炸裂」

「おいおい、ハンナ!?」


 俺は確りと抱きついて甘えるハンナに少々戸惑っていた。

 何故?こうなった?

 そんな俺の気持ちを見通すかの如くハンナは叫ぶ。


ご主人様ぁ(マスター)! ハンナはこの前、愛して貰ったその日からこうなる事を夢見ていたのですぅ!」


 え?

 愛した?

 俺がハンナを?


 俺は思わず声に出して尋ねる。


「え!? 愛して貰ったその日って?」


「はい、頭を優しく撫でて貰った私は今迄味わった事のない幸せを感じましたぁ!」


 ああ、そうか!

 これって神力波ゴッドオーラのせいなのか!

 まあ、それだけじゃないと思うが一応、納得!


 しかし、俺に抱きついて甘えるハンナを見たフレデリカが地団駄踏んで悔しがる。

 そして禁断の愛称を叫んでしまったのだ。


「い、嫌ぁ! 駄目だよ、お兄ちゃわん!」


 これにすかさず反応したのが父マティアスである。

 だがフレデリカの兄と言えばアウグストだ。

 普通は誰もがそう思う。


「え? お兄ちゃわん!ってお前の事か? アウグスト」


「いや、僕じゃありませんよ! 父上!」


 思わず問い質すマティアスに対してアウグストは困惑したように首を横に振った。

 そしてフレデリカ自身も冷たい眼差しを向け、アウグストを指差し、はっきりと言い放ったのである。


「お父様、これとは違います」


「これとは? この僕が『これ』って……」


 妹に『これ』呼ばわりされて、アウグストはがっくりと項垂れてしまう。

 そんなアウグストを無視してフレデリカは完全にカミングアウトしたのである。


「こちらの人が……私の命の恩人でもある、トール・ユーキ様。彼が私のお兄ちゃわん、そして愛しい旦那様ですっ!」


 フレデリカのまさかの宣言に驚愕したのは母フローラであり、マティアスは頭を抱えてしまう。


「フレデリカ! あ、貴女は一体何を言っているの?」


「まさか! まさかぁ!」


 しかしフレデリカは堂々と言う。

 全然臆してはいない。


「はいっ! ハンナよりも先に私がお嫁さんになる約束をしていましたからっ!」


 フレデリカの言葉を聞いて非難の目を俺に向けたのはマティアスである。


「トール! おお、お前という奴はぁ! アマンダだけでなく、フレデリカまでも、か!」


 非難される俺の前に立ってフレデリカは凄い事を言ってしまう。


「お父様! 私はもうお兄ちゃわんに女の子の一番大事な物をあげちゃいました!」


「おおおっ!? い、一番大事な物ぉ?」


 フレデリカの衝撃の発言を聞いたマティアスはがっくりと膝を突いてしまう。


 ああっ!

 そりゃ父親ならこのような反応になるよ。

 だが、俺はまだフレデリカを抱いてはいないぞ。


 ここで遂に激怒したのがフローラである。


「フフフ、フレデリカ! な、何てふしだらな!」


 震える声で愛娘を非難する母に対してフレデリカはしれっと言う。


「ふしだら? お兄ちゃわんはスパイラル様の御使いだよ。そんな事を言ったらお母様にバチが当ると思うけど……もしかしてお父様もお母様も神様に逆らうの?」


「うううう……」


「はう……」


 信仰心を盾にされて言葉を失う2人……

 ここでフレデリカは更に駄目を押した。


「それで2人とも私の結婚を認めないの? そんな事したら呪われるよ!」


「フ、フレデリカ! お前はトール……様が命の恩人だから感激して舞い上がっているだけなんだ!」


「ふ~ん……お父様ってアマンダお姉様の事は許してもフレデリカの事は許してくれないの?」


 今度はアマンダの事を引き合いに出したフレデリカ。

 しかしアマンダの呼び方が変わっていたのをマティアスは聞き逃さなかった。


「は? フレデリカ! 今、お前何て?」


「アマンダお姉様ですよ、お父様! 私、反省しました。それもみ~んなお兄ちゃわんのお陰なのです。私の事をきちんと叱ってくれましたから。フレデリカはあんな良いお姉様が居て妹として幸せです」


 フレデリカの言葉を聞いたマティアスは複雑な気持ちなのだろう。

 姉を尊敬する気持ちを持ったのと、俺に惚れ込んだ愛娘の姿が被ってしまうのだから。

 考え込んだマティアスは一般論で反撃した。


「ううう……だがフレデリカ! お前がこの人間の妻になればこのエイルトヴァーラの血を継ぐ者が……」


 しかし!

 ここもフレデリカの方が上手であった。

 様々な突っ込みに回答を用意しているに違いない。

 兄アウグストを見て、すらすらっと答えたのだ。


「それはお兄様にお任せします! お兄ちゃわんはエイルトヴァーラ家の大事な跡取りであるアウグストお兄様まで連れ帰ってくれたんですよ! ねぇOKですよね、お兄様?」


「う、うん……」


 妹の押しに仕方なく頷くアウグスト。

 俺に勝負で負けたせいもあって全くの無抵抗だ。

 

「ほらぁ! 可愛いお嫁さんを貰って家を継ぐって、アウグストお兄様が確りと約束してくださったわ!」


 兄の言質げんちを取って得意顔のフレデリカであったが、とうとうフローラが爆発した。

 美しい妖精のような顔が鬼のような形相になっている。


「ゆゆ、許さないっ! アマンダなんて汚らわしい女はどうでも良いっ! それより私のフレデリカが何で人間なんかの妻にっ! 神の御使いだろうが何だろうが許さないわっ!」


「ああっ! フローラっ! ややや、やめなさいっ!」


 慌てたマティアスが止めるが、フローラは怒りのあまり俺に突進してビンタを食らわそうとした。

 だがフローラの動きなど今迄の敵に比べたらしれたものだ。

 俺はビンタをしようとしたフローラの手をがっちり掴むと倒れ込んで来た彼女を確りと抱きかかえた。


「え!?」


 思いもかけない展開に戸惑うフローラの感情が篭もった魔力波オーラ=波動が伝わって来る。


 よおしっ!

 今だっ!


 俺は抱きすくめたフローラに結構な量の神力波ゴッドオーラを注ぎ込んでやった。

 これは効く!

 凄く効く筈だ。


「ああ、きゃあっ!?」


 俺に抱きすくめられ、悲鳴をあげる妻を見たマティアスが大声をあげた。


「ああ、フローラぁ! どどど、どうしたぁ!?」


 しかし……


「あはぁ……きき、気持ち良い……」


「は!?」


 とろんとした妻の顔を見たマティアスは目が点になっている。

 しかし、俺にとってはここが勝負どころだ。


「フローラさん! 俺とフレデリカの事は認めて貰えるね?」


 俺の言葉が気持ちの良い夢の中で聞えているような感覚なのだろう。

 フローラは思わず素直に答えてしまう。

 あの鬼のような表情は一変して美しい妖精顔に変貌している。


「あ、あう……は、はい! い、今の波動で……貴方はフレデリカの事をとても大事にしてくれると……あ、はん……わ、分かりました」


 よし! やった!

 これでクリアだな!

 しかし嫉妬の炎を燃やしたのがフレデリカだ。


「もう! お母様ったら! いつまでお兄ちゃわんに抱きついてるのっ! どいてっ!」


 何と母を突き飛ばしたフレデリカは俺に思い切り抱きついた。

 そこに続いたのが放置されていたハンナである。


「ああっ! フレデリカ様! ハンナのご主人様(マスター)でもありますよぉ!」


 こうなったら他の嫁ズが黙っていないのは当然だ。


「ああっ! トールは皆のトールよおっ!」


 大きな声をあげ、抱きついて来たのはジュリアである。

 イザベラ、ソフィア、そしてアマンダも負けじと続く。


 ああ、俺は幸せだ!

 転生して本当によかったぁ!

 邪神様、ありがとうぉ!


 嫁ズ全員に抱きつかれた俺は今、至福の時を過ごしていたのであった。

ここまでお読み頂きありがとうございます!

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