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転生者の異世界日記  作者: ナガト
序章 転移者
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帰還と転生 さようなら

 

 ガスリ街があの黒い悪魔に崩されるのを俺はたって見ていた。

 炎が飛び交い、建物は崩れ落ち、街の原型を保っていない。 


(ちっくしょー。なんで火炎が出ないんだよ。)


 いくら魔法を使おうとしても炎は出てこない。


『当たり前だろ。君は、今魂だけなんだから。』


「だ、誰だ!!」


 叫ぶ俺の目の前にその姿をあらわれた。

 

 さっきまでは迷宮ダンジョン化したガスリ街だったはずの光景が一変する。

 周りの光景は全てが明るく、地面といっていいのか地面は雲で出来ている。

 そう、まさしく天界のような場所だ。


「ここは…。」


 俺の疑問をさっきの声が答える。


『ここはまぁ、君らからしてみれば天界だな。』


「なんで俺をこんなところに。それより正体表せ。話しづらいわ。」


 俺の質問と要求が一斉に飛び出る。


『ではまず正体についてだが、【神】だ。』

『姿は見せれないがね。』


(ガスリ街が危機って時にふざけてんじゃねぇーぞ)


「なんで見せれない信用できんな。」


 俺の言葉を無視し自称神はそのままつづける。


『次に君をここに呼んだ理由なんだが、君を生き返らせようと思ってね。』


「自称神、ならさっさと生き返らせろ。いそいでるんだ。」

そう答えた俺に、自称神は生きるか、死ぬかの選択肢と更に選択肢を広げてきた。


『どこに?』


「はぁあ。」


(バカにしてるのか!)


 俺は本気で怒りそうになった。が、すぐに自称神の次の言葉でそれは治まった。



『すまない、言い方を変えよう。』

『元の世界か異世界で人生有り直すのかどっちがいい。』


「お、おい今なんて言った。」


 俺は聞き間違いだと思い聞き返す。

 聞き返した言葉は間違えじゃなかった。


『元の世界か異世界かどっちがいい。』


「元の世界に戻れるのか?」


 俺に質問は自称神は頷いた。


『さてどうする。』

「……。」



 カズは悩んでいた。元の世界に戻れるのはこの機会を逃したらもうこんなことないかもしれない。


(どうしたらいいんだ。)

(このままこの世界に残って本当に帰れるのか確証は、ない。)

(そうだ確証はない。ないんだ。ならかえって念願の取材に行こう。)


 どこからか自分の声で囁いてくる。


(もともと俺には関係ないことなんだ。だから…。)


「関係ない」頭に単語が響く。



(かん、けい、ないわけねぇーだろうが。)

 たった半年でもそれでもタルスには助けてもらった、ミリアには文字を教えてもらった。

 街の人たちが温かさをくれた。それだけでも残る理由だろ。


「おい神。」


『なんだい?決まった?』


 その問いは答えによって返答した。


「帰らなくていい。このままこの世界で生き返らせてくれ。」


『後悔は?』


「ありありに切っまてんだろうが。でも」


『でも?』


「それでも成し遂げたいことがあるんだ。」


 和樹は言い切った。


『それはなんだい?』


「ガスリ街を…、もう住んだりは出来ないだろうがこれ以上破壊させずにあの悪魔野郎を倒すことだ。タルスが守った街を壊させない。」


『そんなことで帰還を拒むのかい?』


「俺にとっては大切なことだ。」


 そう、みんなとの思い出を壊すわけにわいかない。自己満足かもしれない。


『なら転生する前にその仕事をしよう。』


 神がそういうと、パッチンと指を鳴らした。


 すると一瞬にして今度はガスリ街の光景が飛び出してきた。


『いいかい、今君は魂だけだ。その状態だと魔法は行使できないんだ。』


 神の声が直接聞こえる。


『だけど今回は加護を使って行使できるようにしている。』


(そんなの有りかよ。)


『さあ、今の君は使い放題だ。何発もぶちかませ。ちなみに周りからは君は見えないからね。』


 つまりチート中のチート状態なわけですね。


 さあみんなの分の復讐をしよう。



 ◆◇◆◇◆



 俺はスマホにある魔法の炎を最大限まだ貯めて黒悪魔野郎にぶつけた。


  ボバボバボアァァァ!


「ぎゃァァァ!」


 悪魔の悲鳴と爆音が混じり合う。


 (さすがチート。) 


 ダメージは絶大で百発ほど撃って核まで消滅させた。

 凄すぎ…。


 その瞬間ダンジョンはなくなり街に光が点った。


(ああ、終わった。これで俺の魂は誰かまた別の人間になるのだろうなぁ。ごめんなタルスもうミリアを守ってやれねぇ。)


 彼は、誰にも見られずに光の粒となっていく。

 笑顔で、涙して。


 「さようなら。」



 死んでもなおこの街を救った男。

 その男の名は笹木和樹

 彼の物語は誰も語り継いだりしないだろう。

 彼の功績を知る者はいない。

 彼は転移者、異世界から来た招かざる客。

 彼の魂は今もこの世界で生を宿している。


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