守るべきもの
主人公目線ではありません。
タルス目線の物語です。
俺は、モンスターのもとへ駆け抜ける。
蟻のようなモンスターは俺に気づき鋭い爪で攻撃をしてくる。
ギュンと音を立てて振り回されるそれは恐怖を感じさせる。
俺は、間一髪のところでよけている。
「くっそ、こんなんじゃあいつ等のところに行くのも時間も問題だ。」
タルスは街の騒動で散らかったと思われる折れた鉄パイプを掴みモンスターに立ち向かった。
「ウリャー。」
勢いよくモンスターに刺さる鉄パイプは先が折れ、まるで槍のような鋭さを持っていた。
モンスターは、攻撃するはずもない非力な人間だ。と思ったのかよけようともしなっかた。
そんなパイプがモンスターの硬い甲羅を貫通する。
メキメキッ
「ウギャー!」
めり込む音と共にモンスターの叫びが響きわたった。
いける!
俺は、突き刺さったパイプを蹴り更にめり込ませる。
バキバキ
「まだまだ。」
雄叫びと共に加えていく攻撃。
このまま倒せる。そう確信と言うなの油断がタルスを襲った。
「ギェアー!」
調子に乗るなと言わんばかりにタルスに攻撃を当てる。
ドシャンと倒れるタルス。その右肩からは赤い液体が滴れる。
意識が朦朧とする。
『人間とはもろいものだ』
亡くなった父の言葉を思い出す。
なんでこんな時に思い出したのかわからない。
「いってぇ。」
立ち上がろうとも今までの戦いとプレッシャーで立てるような体力もない。
「もう立てねぇ。」
『いいじゃないか?立たなくたって。もう頑張ったじゃねーか。』
『お前はよく頑張ったよ。』
自分の甘い考えが耳元で囁く。
『ここで頑張って何になる?』
『お前の幸せは?』
『ここで死んだら先に逝った家族に会えるかもしれないぞ。』
「か、ぞ、く。」
『そうだよ。家族だ。このまま死ねばあのモンスターは間違いなく二人のところへ行く。』
『ミリアと一緒にいられるぞ。』
俺は俺自身に怒った。
「ふ、ざ、け、る、な。」
「ミリアを死なせる?ありえない俺は父さんと母さんが死んだ時に誓ったんだ。」
「絶対に守ってみせると。」
自分自身の甘い考えはもう囁いてこない。
さぁ立て守るべきもののために。
立て、立て、立て、立て
立ち上がれぇぇぇぇぇぇ。
再びモンスターに立ち向かっていく
モンスターもタロスの攻撃でずいぶんと弱っていた。
タロスは抜かれた鉄パイプを持ち渾身の一撃を決める。
狙うは核。
モンスターには必ずある心臓のようなものだ。
相手も最後の一撃を繰り出すように鋭い爪を持ち上げる。
「うぁあぁぁぁー。」
「ギャー!」
ブスッ!
「グゥゥゥ……。」
バタンッ!
鉄パイプは核にとどきモンスターは消滅した。
「ゴフッ。」
ただこの戦いに勝者は居ない。
モンスターの核が落ちているすぐそこには、
立ったまま息絶えている『守るべきもの』を守った英雄の姿があった。