ダンジョンと冒険者
あれから半年が過ぎた。
俺は、この半年いろいろなものを調べたりしてきた。
この世界の政治、経済の他に例の魔法についても調べた。
金は、ルーンと呼ばれていることなどの一般常識も教えてくれた。
タルスのところに居候してすっかり俺もこの家族の一員になってしまったなぁ。
すると突然ミリアさんが、
「カズさん、今日の晩ご飯は何がよろしいですか?」
えっと、なんで俺に聞くの?
「えーっと、タルスに聞いてはどうでしょうか?」
俺は苦笑いをしながらそう返した。
するとミリアさんが頬を膨らませて、
「タルスはいつも、なんでもいいばっかりだからつまらないもですもん。」
俺とタルスは苦笑してしまった。
確かに、この半年間「なんでもいい。」ばっかりでかわいそうとは思っていた。
「なんでもいいんですか?」
俺がそう尋ねると
「ええ、私ができるものなら。」
俺は、少し考えてから提案した。
「じゃあ、ハンバーグが食べたいです。」
この世界に来て食事でもとの世界の食べ物に近いものがハンバーグだった。
肉は、どんなものを使っているのかはわからないが…とても美味しかった。
うん、美味しければいいんだ。
「はい!」
ふふふ。と上機嫌で鼻歌を歌っているミリアさんを見て、
今日も平和だな。と感じていた。
食後俺は必ずこの世界の書物を読んでいる。
物語などで字を学んで、そこからいろいろなものを読んできた。
今日は、モンスターについての本を読んでいる。
書物によるとモンスターは、迷宮と呼ばれる場所で生まれ、そこに居座るのも居ればダンジョンから出て森に住みそこに生息する動物を絶滅させたりしている。
モンスターは核というものがありそこを攻撃すると完全に消滅してしまう。
また、核はポーションの材料になったり、色々と役に立つ。そのため倒したモンスターから核を取り出しギルドに売ることによって生活している人もいる。
その人たちをみんなこう呼んでいる。
冒険者…と。
俺は、この本を読んで、ダンジョンに行きたくなった。
10歳若返ったからか少し考えが子供っぽくなってしまったのかもしれない。
「わくわくするなぁ~。」
そんな独り言をつぶやいたそのとき、
ゴゴゴゴゴゴ!
地面が、天井が、全てが揺れた。
「なっ、なんなんだ。」
はじめに声をだしたのはタルスだった。
キャーーーッ
外から誰かの叫び声。
外を見るとそこは今までのガリス街じゃなかった。
空は紫色、割れた地面、崩れた家、そして…
「モ、モンスター。」
初めて見る、奇怪な生き物に足がすくむ。
家の中にいる俺達のことはまだ気づいていないみたいだけど見つかるのは時間の問題だろう。
に、逃げるか。でも三人行動はまずい三人固まるとそれこそ見つかってしまう。
俺の考えを読んでいたかのようにタルスが、
「俺が、時間を稼ぐお前はミリアを連れて逃げろ!」
俺は、目を見開いた。
自分が犠牲になる。彼はそういったのだ。
「で、でも…それじゃお前が…。」
俺は動揺の声しか出なかった。
タルスは真剣な眼差しで俺に
「ミリアを…俺の妹を頼む。」
「だ、ダメ。兄さん!」
いつもタルスと呼んでいたのに素が出てしっまていた。
「お前、カズの前では大人の女性に見られたいからって。名前で呼んでたじゃないか。」
「そ、それは。うぅぅ~。」
妹の初々しい姿を見て顔が緩んだ。
これがきっと彼の最後の笑顔だろう。
俺は、なんとなく察してしまった。
タルスは、何か吹っ切れたような顔をして、
「じゃぁ頼んだぞ。」
そう言い残して家から飛び出していった。
彼はモンスターをおびき寄せている
そのとき俺は何となく彼が勇敢な冒険者に見えた。