外出
*
普段ずっと家にいる。外出が苦手なのだ。別に気に掛けてない。単にそれが性格だと思っていて。世間一般というものと、かけ離れているからである。別にどうでもいいのだ。周りが何を言ってこようとも。
基本的に対人関係がやり辛い。昔からずっと不得手だった。未だにそんな感じである。部屋でパソコンを使い、ネットしたり、テレビドラマや映画を見たり、好きな小説を読んだりすることで日常を送っていた。
稀に彼氏の友昭が、あたしのスマホに電話を掛けてくる。「莉彩、大丈夫?」と。「うん、まあね」と言って誤魔化すのだけれど、そういった時、彼はすぐに来てくれるのだ。友昭はアルバイターで、ずっとフリーの仕事をしている。バイト先からは、結構抜け出しやすい。今まで何度転職したのかな?そう思い、察していた。
*
九月下旬の某日、友昭がバイトが休みだったので、思い切って自宅マンションを出、彼の部屋へ向かった。結構勇気が要るのである。外出となると。まあ、あたしのような人間は世の中大勢いる。単に周囲の理解がないだけだ。
彼の自宅マンションに着くと、扉をノックした。
「はい」
ドア越しに声が聞こえてきたので、
「ああ、あたし。莉彩」
と言う。
「今、開けるよ」
友昭がそう言って扉を開けた。中から彼が出てくる。あたしも思った。こうやって会うのも二週間ぶりぐらいだと。だけど、友昭が玄関口で、
「部屋散らかってるけど、入って」
と言ってきた。一言「お邪魔するわ」と言い、入っていく。彼も乱雑なところはあるのだ。リビングのテーブルにはパソコンとプリンターが一台ずつ置いてあり、本棚には文庫本が並んでいたのだけれど、雑誌類が床に小積んであった。気にしてないのである。多少汚れていても。
*
「莉彩、コーヒー飲む?」
「ええ、いただくわ」
そう返してから、しばらくリビングでゆっくりしていた。友昭がキッチンでコーヒーを一杯淹れ、持ってきてくれる。カップを受け取り、口を付けた。不意に彼がカップをテーブルに置き、そっとキスしてくる。応じて口付けを交わす。ゆっくりと性交し始めた。二人きりの部屋で。
そして互いに微妙にずれ、達した後、友昭が言った。
「莉彩、少しはリラックスできた?」
「ええ」
軽く頷き、荒かった呼吸を整えてから、ゆっくりし続ける。リビングは一際密だった。彼もあたしを抱いた後で、何ら抵抗がないようだ。そして言った。
「また、着なよ。外出には、幾分抵抗があるだろうけどな」
「ええ」
頷いた後、友昭がまた口付けてくる。あたしたちはしばらくの間、ゆっくりしていた。互いにいろいろと考えることはあったのだけれど……。
(了)