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4:スケルトンとの戦闘

 翌日になって。

 わたしたちは地図を片手に、そして周囲にも気を配りながら、フォクスリングの部落を探した。今日もお天気は秋晴れ。小鳥たちのさえずりと、沢を流れる水の音が心地いい。

 物騒な相手が出てきたらどうしようと思い、わたしは師匠の唯一の形見になる、白金色の魔道の額冠を忘れずに付けた。魔道を使った後の集中していた神経の疲労を、これは極限まで抑えてくれる。こんなひよっこ魔道士が、少しではあれ白魔道や灰魔道を使えるのは、実にこのおかげと言っていい。そのたびに、

『もっと修行しなくちゃ』

とは思うんだけど、ラクな方に流されちゃうからなあ、わたし……。

 沢をいくつか越えて、細々としたけもの道を歩いて行く。森の中は晴天を隠すほど薄暗い。

「ひどいヤブだな、全く」

 先頭のルカスがぼやいた。携えていた短剣で、何とか道を作ってくれてる。その後ろにわたし。キッポは一番後ろで、

『森のことば』

を聞いている、らしい。いや、わたしにはよく分からなかったの。そんなキッポが、

「ルカス。森が泣いてる。痛いって泣いてる」

「どう言うことだ、そりゃ?」

「森の泣き声が聞こえるの?」

 わたしたちの問いかけに、

「うん。もっと北側。近いよ! 悲しみのにおいがする!」

 止める間も無く、キッポが駆け出した。斜面を下りるのに、転ぶのも構わず、どんどん進んで行く。

「待ってよ、キッポ! 危ないよ!」

 わたしは懸命に走りながら言った。

「いや、キッポに任せよう。森の中ならあいつは無敵だ」

 ルカスも小走りになって答えた。

 不意に視界が開けた。独特の形をした家々が建っている。集落の中央辺りには、大きな建物があったようで、火を付けられたのか、ほとんど崩れて消し炭状態になり、煙が漂っている。そして……。集落の入口に、ラウンド・シールドとファルシオンを持ったスケルトンが1体、立っている! 盾にはどこかで見たことのある文様が、赤紫色に刻まれていた。キッポに反応したスケルトンは、驚くべきスピードで、まだ斜面に腰を落としたままのキッポに向かって行った!

「クッ!」

 ルカスが走りながら、懐から指ほどの長さの剣を取り出し、気を引こうとスケルトンに向かって投げた。スケルトンは一旦止まると、盾で弾き返す。でも、その一瞬で充分だった。キッポが立ち上がって、体勢を整えている。

 ギイイイィィィン!

 スケルトンの一振りを、キッポはハルバードの柄で返した。力と力の膠着状態になっている。その隙に、ルカスがスケルトンの後ろに回った。長剣を払う。が、後ろに目でもあるかのように、スケルトンは一瞬のうちに飛びのいた! ルカスの剣技をかわすなんて、何て相手なの!

 わたしはキッポとルカスを信じて、まだヤブの中にいた。こんな状況に一番ふさわしい魔道は……。スケルトンの弱点も懸命に考える。

 ――『灼炎(ファイア)』、ダメ。『雷撃(サンダー)』、ダメ。『氷化(アイシング)』、これもダメ! そう。攻撃しちゃダメ。スケルトンは、『祈り』に太刀打つすべも無く崩れ去るらしいけど、僧侶がいない。ヘタな攻撃魔道はムダに終わる。そこで急に私は、錐が射し込まれたように、盾の文様を思い出した!

 あれは、火竜の精(サラマンダ)を象った物! 勉強した甲斐があったわ。どこの誰がこのスケルトンを配置したのか知らないけど、厄介なものを置いてくれた。

『火には氷』、

だから氷化魔道が一番効果的だけど、今のわたしの力じゃ倒せない。腰骨を砕くしかない。それが一番の近道だ。

「キッポ! ルカス! 腰骨を狙って! 砕かれれば動けなくなるから!」

 言った瞬間、炎の塊がわたし目がけて飛んで来た! 寸前で避ける。背後の斜面で爆発が起こった。ぞっとしながらも、わたしは諦めなかった。炎を吐くスケルトン。何て相手だろう。ルカスはともかく、わたしとキッポには荷が大き過ぎる。出来る限りの大声で、

「そいつは火竜の力を持ってるの! 遠回しだと狙われるわ! 懐に飛び込んで!」

 わたしは『思念体(エナジーボルト)』の魔道で腰骨を狙おうと考えた。砕けなくても動きを止めることは出来る。そこをキッポとルカスに一撃、喰らわせてやればいい。

 ――神経を集中させる。脳裏に浮かんだ思念体の構造式を、上から下へ唱えて行く。慌てず、落ち着いて。構造式の最後にわたしの血印代わり、精神力で式を閉じた。右手を思いっ切り突き出す。

「砕け散れ!!」

 2発の薄緑色をした光球が、スケルトンを目がけて飛んで行く。あやまたず、腰骨に命中した。砕けなかったけど、動きが完全に止まっている!

「キッポ!」

「うん!」

 ルカスとキッポが、動きを止めているスケルトンの腰骨を、粉々に砕いた。もはや呪いの魂を持った骸骨は、その本来の居場所に帰った。からからと乾いた音を立てて、崩れ去って行く。わたしは大きく息をついた。

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