一凛の風と失礼します
近藤一族、そして三上一族。
定期的な仕事が入り、緑屋の収入が
ロケットのように打ち上がった。
緑屋が借りていた、街の中央にある
小さなビルを買い取った。
五社が入る低層ビルだ。
オーナーになった私は、
小金持ちムーブをかまし、
しばし優越感に浸った。
だが――
マッキーの仕事量が、
パンク寸前だった。
日々、頭から煙を出している。
そろそろ限界だなぁ。
「ねぇ~、マッキー。もう一人、
募集出してみようか?」
書類と睨めっこする般若のような
マッキーが、顔を上げた。
「え? あぁ、助かります」
「条件は、同じでいいかな?」
「良いと思いますよ」
「ボーナスが、いいので」
ふむ。
――求人内容――
便利屋 月30万固定
9時〜基本17時
週休2日 事務作業
残業あり ボーナスあり
ビルの玄関に張り紙を出してから、
二日後だった。
「コン、コン」
忙しいマッキーに代わり、私が出る。
「はーい」
「従業員募集の張り紙を見ました」
マッキーに声をかける。
「私が対応するから、大丈夫」
「お茶もいいよ」
「すみません、お願いします」
「失礼します」
入ってきたのは、
ばっちりスーツを着こなした、
高身長のクール系眼鏡美女だった。
私は焦った。
盛大に、焦り散らかした。
マッキーもちらりと彼女を見て、
背筋を伸ばす、格好つけた。
一凛の風が吹いた。
出来ると思われたい――
欲と見栄が、先輩風を吹かせる。
クール系眼鏡美女は、
マッキーにも丁寧に挨拶をした。
「失礼します」
マッキーは余裕の笑みで、
「失礼します」と返した。
クール系眼鏡美女は、一瞬だけ困惑した。
部屋に入る際、
仕事中の先輩に挨拶したのに、
その先輩から
同じ「失礼します」が返ってくる。
私は挨拶のプロではないが、
……何か引っかかった。
「どうぞ、こちらに~」
「遠慮なく座ってください」
クール系眼鏡美女は、
再び「失礼します」と言い、
お辞儀をして、
綺麗に椅子へ腰掛けた。
私は完全につられて、深々とお辞儀をして、
「失礼しますっ!」
と、やや大きな声で言い、
静かに椅子に座る。
クール系眼鏡美女を見つめる。
彼女は明らかに困惑している。
数秒の沈黙。
「あ、あの……履歴書です」
――危ない。
面接中だった。何か知らない会議が
始まると錯覚を引き起こした
こうして、
第二回・従業員面接は、
静かに幕を開けた。




