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それは、それとて  作者: 明日


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酔いどれ







お酒を飲むにつれて、

敦は変わっていった。


マッキーに

「君がいなくて寂しい」とか、

「美味しい店があるから行かない?」とか、


私に

「時間、大丈夫ですか?」

と頻繁に聞いてきた。

こいつは凄いな、何も隠すつもりは無い。

私がいるのに、マッキーに目標を定めている。……強者だ。


私が若干引いていると、


ロックオンされたマッキーが言った。

「敦さん、そろそろ帰ります」

もう限界みたいだった。


私が助け舟を出す。

「うん、そろそろ行こうか?」


敦は引かない。

「そうですか。真希ちゃんは

 しっかり送るので安心してください」


……え?

何こいつ……しつこいんだけど。

機械仕掛けのスケコマシーン敦は、


ロックオンした目標を逃すつもりがない。

もう限界だった鉄仮面マッキーが言った。

「敦さん、前にも言ったように

 私は敦さんとはどこにも行きません」


敦は表情が変わり、口調も変わった。

「真希ちゃん、いいの?

 俺の誘いだよ。前はさ、従業員だったから

 あんまり誘えなかったけど」


マッキーを見てニヤけながら、

「あんまりイケメンに誘われること

 ないんじゃないの?」


マッキーは呆れて言った。

「仕事で忙しいので帰ります」


馬鹿にしたように敦は言う。

「従業員二人しかいない寂しい

 便利屋が忙しいの?」

敦は笑っていた。


怒ったマッキーが、私を少しだけ睨む。

――馬鹿にされて、なんで何も言わないんだ、と。


私は思った。

……めんどくさい。

だが、マッキーを馬鹿にされるのは駄目だな。


……よし、伝えてあげよう。

「敦さん、花、好きですか?」


唐突にそう聞いた私に、

マッキーは「こいつ駄目だ」という顔をした。


酔った敦は言う。

「花?……花は好きですよ。

 店の名前もフラワーですから。

 緑さん、うちで働きますか?」


マッキーの鉄仮面は内側から崩れた。

「失礼すぎるんですけど。

 緑さんも、なんで怒らないんですか?」


私は、まあまあ、とマッキーを手で制しながら言った。


「子還しって花、知ってます?」


敦は少し考えてから、

「こかえし……?

 知らないですね」


マッキーは何かを感じ取ったのか、黙っていた。


「便利屋をね、長くやってると

 色んな依頼が来るんですよ。

 日常では味わえない、不思議な依頼が。


 その方は、身ごもった命を

 まだ若いからとか、経済的な理由で

 流されたんですよ。

 

色々理由をつけてはいましたが、

 自分の我儘ですね」


敦は「だから何だ」と言いたげに、

「花、関係ありませんよね?」


マッキーは興味津々だ。

「緑さん、続きを」


マッキーの期待に応えよう

私は続ける

「その方の依頼を受けたんですよ。

 罪悪感が拭えない。


 子供の夢を見て、朝目が覚めると

 泣いている。


 どうにかならないかってね。

 精神的に疲れていましたよ。


 私は、死にかけてから

 変な物が視えるようになりまして」

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