ビールと喉とオレンジ
マッキーに紹介される前に、
私は食い気味で動いた。
「初めまして、真希さんの
仕事仲間の、緑です」ニコッ
笑顔は外せない。
二人をマッキーは紹介してくれた。
フラワーというお店で美容師をしている、
えっちゃんとキャロリン。
キャロリンはあだ名だ。
二人とも、タイプは違うが、
可愛らしかった……
そして私は衝撃を受けた。
マッキーが昔、美容師だった事に。
髪が伸びたらマッキーに頼もう。
そう胸に秘めた……
ひそひそ。
「ちょっとカッコよくない?」
「うん、微イケメンじゃない?」
私の鍛えられたレーダーは捕らえた。
否、捕まえた。
えっちゃん、キャロリンの話を。
気分は爆発的に上昇した。
二人は、顔が少し赤く、
飲んでいるようだった。
マッキーもビールを頼んでいた。
えっちゃん。
「真希、大分変わったね。
高そうな服とか、バッグも。
稼いでるな〜?」
キャロリンも頷く。
「うちも思った。やっぱり
収入いいの? 綺麗になってるし」
ビールが届いたマッキー。
一気に流し込んで、
「ゴキュ、ゴキュ、プハー」
「うん、お給料良いよー。
色々大変だけど」
私を見て笑ったマッキー。
ビール飲む時、すごい喉鳴らすんだね。
そこから二人の、酒の入った
怒涛の追跡が始まった。
いくら稼いでいるの?
何をしてるの?
そのバッグいくらだった?
どこに住んでるの?
彼氏はできた?
マッキーは全て、いなしている。
まるで柳だ。
そっと軌道をずらし、
体幹は決してブレない。
えっちゃんの言葉のローキック、
ハイキック、全ていなす。
できる!
キャロリンからの
ブラジリアンキックが来た。
「緑さん、との関係は?」
マッキーはきょとんとして言った。
「緑さん、社長だよ」
社長というパワーワードに、
二人は僅かに動揺した。
テーブルから肘を外す、えっちゃん。
焼酎から梅酒に変更するキャロリン。
元同僚が、時が経ち、
ステップアップしている現状。
それに私が関わっていると知った……
今日は私の奢りだな。
静かに悟った……
えっちゃんは私を見つめて、
「緑さん、社長さんだったんですね」
髪をかきあげ、キャロリンも。
「すごいですねぇ〜。
従業員、募集してます?」
二人の探偵は、私の追跡を仕掛けた。
先に牽制をかます。
「今は、マッキーと二人で充分。
だから募集はしてないかな。
二人の小さな会社だからね」
小さな会社。従業員二人。
えっちゃんは肘を戻し、
キャロリンは熱燗を頼んでいた。
女性は、いつも、現実主義だ。
少し酔ったキャロリンが、
「緑さん、人が足りない時は
言ってくださいね」
マッキーが思い出した様に、
「出張の時、電話対応してくれる人、
欲しいかもですね、緑さん?」
うん……それはあるな……
でも、この二人は駄目だ。
気づいていた、最初から……
二人とも、同じピアスを着けている。
ピアスにしては、少し大きい。
花の形、オレンジ色で、全く同じ。
ピアスじゃない……
……あれは子還し……物の怪だ……




