冬の海と空とスイッチ
パーリナイ、君とのパーリナイ
そういう事か……
私は
「れいらさん、右腕の包帯、
外してもらえます?」
れいらさんは頷きながら
「少し痣になってしまって……」
いた……普通にいた。
手の甲に、黒いTバッグを履いた
10センチ〜15センチほどのサイズで
角の生えたガチムチが、しがみついている。
腰を振りながら
「シッ、シッ、パーリナイ」
と叫んでいた……
拳体鬼
私はそう呼んでいる
気に入った女性に憑き、
夢で自分の物にしようとする。
変態だ。何故か、恋人がいる人に
取り憑く。
正直、雑魚だ。だが今回は、
双方のバフが乗った。
お互い強化されたようだ。
理由が分かれば、後は――
「雪さん、れいらさん。
散歩しません?」
まだ寒い季節。
三上一族の管理するビーチを歩く。
れいらさんが先頭で、
私は雪さんと少し後ろを並んで歩く。
視界に入らないように、恭一さんは
距離を空けて、ついてくる。
「緑さん、私は振り向いては
だめなんですよね?」
真リッチぶるが、れいらさんの
足元にいるのを確認する。
「だめですよ。このまま
防波堤の先端まで行きましょう」
「わ、わかりました。
寒いですが、気持ちがいいですね」
そんな会話をしながら
先端まで歩く……
ゆっくりと先端に辿り着いた。
周りは海。風は強くない。
塩のいい匂いが、心を落ち着かせる。
先端ギリギリに立つ。
あと一歩で海だ。
遊びで、子供でも飛び込むくらいの
高さ……
れいらさんが
「子供のころよ……」
トンッ。
私は優しく突き落とした。
「え……?」
振り向きながら、れいらさんは
「キャーっ!」
叫ぶ。
「ドボンッ」
雪さんは信じられない、という顔で
私を見て
「あなた、一体何を……?」
後ろから恭一さんが爆速ダッシュ。
「れいらー!」
飛び込んで行った。
真リッチぶるは憑いてはいかず、
宿主――れいらさんを見ている……
私は海に蹴り飛ばした。
「メゲーッ」
煙になった。
そして、れいらさんから離れて
壁に張り付いていた拳体鬼も
蹴り飛ばした……
「バーリー」
塩水に……いや、海水に浸かった瞬間、
消えた……
私は寒い空を見上げ、
黄昏者のスイッチを入れた。




