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それは、それとて  作者: 明日


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62/129

桜のは




……彼女はもう、体勢を整えていた

私の顔と、れいらの拳が

線で繋がっている

どこに来るか分かる、虫の知らせだ

人体の急所、人中、鼻の下の溝の部分


線が点へ……

私が、れいらの元へ戻ろうとする力も加算された

点が……線へ、来る……

一度振り抜いた拳を

もう一度戻し、左足に体重を乗せた

れいらは短く

「シュッ」


……閃光の右フック……連撃……

私の顔の急所、人中に爆撃


「ドンっ」


体は吹き飛び、意識を失う瞬間

一本の白い歯が宙を舞う


桜の花びらに見えた

「綺麗だな、れいら、愛してるよ」


意識は、闇に飲まれた……

三上 恭一は、最後まで笑っていた


熱い男を見せた

そんな彼を知る者は、いない



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私は観察し、考えた。おかしい?

何も違和感はない、物の怪も、いない


れいらさんを落ち着かせるために

恭一さんには部屋から出てもらった


恭一さんとの距離を取れば

れいらさんは元に戻った


「れいらさん

 恭一さんに近づくと、どうなります?」


れいらさんは泣き出しそうに

「本当に愛おしいです

 でも、恭一さんが視界に入ると……」


「気持ちが沈んで

 頭の中で

 シッ、シッ、シュッ

 と響くんです」


聞き終えて、私は思考する


……なにそれ?意味が分からない

ん……?

ふと、れいらさんの足元の犬が鳴いた


「メケー、メケメケメケ、ぶるー」


私は仰け反った

……うぁぁー、キモっ、二人には見えてない


こいつは、はじめから居た

あまりにも自然で、見落としていた


物の怪……真リッチぶる

特殊な環境にいる者に憑く


真実の愛と、金持ち、ちょっとの不安

ここには、三拍子そろってる


だが、こいつは精神を噛んで

宿主を、甘酸っぱい不安にさせるだけだ



覚醒させたり

バーサーカーに変身させたりは、しない


黙って考える私に、不安になった雪さんが

「もう、あまり時間が無いのよ

 緑さん

 報酬はしっかりお支払いします

 どうか、お願い」



報酬は……報酬は……脳内で反響する

思考は光を超えた。空間の情報を読み取る

真リッチぶる。原因は、これ

……と、まだある


視覚に頼るな、光を遮断した

嗅覚が敏感になり、聴覚に意識を向ける


「シッ、シッ」

……何か聞こえた?


もっとだ

聴覚に、意識を……


「シッ、シッ、パーリナイ」

   

ん……?パーリナイ?


「シュッ、君とのパーリナイ」

「シッシッ、今夜はパーリナイ」

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