冷静と品、時々尻
この街の四代財閥の一角
……三上一族……
この仕事は、必ず私の手で掴み取る。
オールバックスーツ姿の執事さん。
白い髭に、渋さを乗せている。
「緑様ですね。
お話は聞いております。
どうぞ、中へ」
輝かしい未来に夢を抱いた私は、
「緑屋、緑と申します。失礼します」
執事さんと長い廊下を歩いていると、
「緑様、御理解されている
と思いますが、屋敷での事は……」
私は全てを理解した。
「大丈夫です。秘密厳守は鉄則です」
満足そうに頷く執事さん。
「こちらで、ございます。
中に、奥様とれいら様が」
「奥様、緑様が到着されました」
奥様
「どうぞ〜」
私は意を決して、
コンコン、「失礼します」
中に、ゆっくりと歩いて行った。
立派な部屋に、豪華な絵、花。
本物が、そこにはあった。
優しくおしとやかな女性は、
三上 雪さん、大奥様だ。
隣の、透き通る肌の美しいお嬢様。
依頼主の、三上 れいらさん。
私は促された立派な椅子の前で、
「緑屋の緑と申します」
深い、深いお辞儀をした。
雪さん
「ご丁寧にどうも。雪です。
堅くならずに、座って下さい」
れいらさん
「れいらです、よろしくお願いします」
私は豪華な椅子に、
尻がざわつくのを感じた。
対面に座る二人を冷静に観察する。
何も見えない、感じない。
そこで、れいらさんに質問した。
「急ではありますが、
今回は、どうなされました?」
言いにくそうに口を閉じた
れいらさんに代わって、
雪さんが話し始めた。
「来月、結婚式があるのよ。
れいらの婿の恭一君も
良い人でね……何も問題は無かったの」
「最近までは……ね……」
話を聞いて、
私は一旦、整理してみた。
もう入籍して、婚姻状態にある。
後は家のしきたりとして、
結婚式を挙げるだけ。来月。
そんな中、今まで喧嘩どころか
言い争いもしたことが無い二人が、
二週間ほど前から、
急速に関係が冷え込んだ。




