自販機とお茶
よろよろと立ち上がり、
口裂け女は頭を振り乱し、
私を睨みつけて叫んだ……
「ギェーー」
そんな口裂け女をよそに、
私は不可思議な事に気づいた。
どれも、一噛み。腕と尻。
そう言えば死者もゼロ……
殺すつもりは無いのではないかと?
噛み傷も致命傷になる場所では無い。
私は聞いた。
「なぁ? あんた、
なんで人間襲うの?」
口裂け女は睨みながら、
でも、少し動揺していた……
「お前は、私が恐ろしく無いのか?」
……うん? 普通に話せるな。
「恐ろしくは無い、けど……
君の、やってる事が理解出来ない」
口裂け女。
「……どう言う事?」
私は疑問をぶつけた。
「人間を殺すつもりないでしょ?
腕や尻噛んでも死なないよ」
口裂け女は戦闘体制を解いた。
「少し……話しましょう」
救急車のサイレンが近づく。
誰か通報したんだな。
私は言った。
「ここじゃ不味い。場所を変えよう」
口裂け女にタオルを渡した。
「血みどろの顔じゃ車に乗れないよ」
口裂け女は恥ずかしそうに
顔を拭いていた……
助手席に乗せて、
人がいない夜の公園の駐車場に
車を止めた。
自販機の明かりが夜を照らしてた……
自販機で
コーヒーとお茶を買い、
口裂け女にお茶を渡した。
口裂け女は言った。
「ありがとう……噛もうとして
ごめんなさい」
会心の一撃を繰り出した
私が申し訳無くなり、
「いや、こちらこそすみません」




