精霊のコトワリ
精霊エピル。
私はいままで、妖怪、
物の怪の類の存在は見てきた。
不思議な体験も味わってきた。
精霊とはなんだ?
私は見たことが無い。邪気など
知りもしない。
麻生さんは、
時より遠い目をして、何も無い空間
を見つめ出す。彼女には見えてる。
「浄化………」
「かなり強い邪気ね。悪い事は
言わない……早めに引っ越しなさい」
彼女は顔に、汗を滲ませてる。
強い邪気なんだろうなぁ……
「ありがとうございます。
ですが、長年ここでやらせて
貰っているので、
すぐに、引っ越しなどは……」
「そう……」
麻生さんは一言だけ言って、
暑かったのか黒い帽子を外した。
……あっ……
見えた。見てしまった……
麻生さんの後頭部に、しがみついてる。
左右にゆっくりと動きながら、
「ぺっ、ぺっ……ぺぺ」鳴いてる。
三十センチ位で、パンツだけ履いた
中太りの、羽根の生えたおっさん。
……精霊エピル。
いや……違うな。私はソレを知ってる。
あれは……ペ天使……。
特徴的な鳴き方。
「ぺぺっ……ぺっ……ぺぺ」
もう、間違いない。憑かれてる。
あれに憑かれると、
自分の世界観が明確になり、
他者に、それをゴリ押しする。
気の弱い人や、落ち込んでる人を
その世界の住人にする。
が、催眠効果は非常に弱い。
すぐに引っ越されてしまう。
うん……凄い幸運が重なり、
瞬間的な財を築いたな。
崩壊はもう、目に見えてる。
しかし、レアな物の怪だ。
祓うか?迷うな……どうしよう?
悩んでる私は、
ふと、マッキーに目を向けた。
目を擦り、欠伸を我慢していた。
そうだね……もう帰って欲しいよね。
私は、
「すみません、ちょっとトイレに」
そう言って麻生さんの後ろに、
ゆっくり回り込む。気づかれないように。
ペ天使を掴み取り、
振り被って、廊下に叩き付けた。
「ビタンっ」
ペ天使は、
「ペギャー」
と断末魔を残し、トイレに流れて行った。
手を洗い、戻ると、
麻生さんは困惑気味で、
「今日は帰るわ」
帰って行った。見えなくなったのだろう。
精霊エピルも、邪気も。
「またのお越しを〜」




