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それは、それとて  作者: 明日


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40/129

飛びます






仁さんの背後にたどり着き、

私は息を整えた。

「大丈夫か、緑」

「……ハァ、ハァ……なんとか」


仁さんは、相変わらず

小さな鏡を鵺へ向けている。

「正直、手に負えん……

 だが、やるしかない」


――内心、

こんな小さな鏡で、

何ができるって言うんだ。


正直、舐めていた。舐め回していた

その時だった。

「ギャギャッ」

甲高い声と同時に――

「バキンッ!」


黒い何かが、弾け飛んだ。

「……え?」

跳ね返されたのは、鵺の尻尾だった。

仁さんに届く寸前で、

“何か”に阻まれた。


仁さんが低く言う。

「神さんの力だ」

「魔の物、邪の物を――

 跳ね返す」

「敷地内なら、

 どんな鏡でも力を持つ」

「本殿に祀る鏡は、別格だがな」

一瞬、視線を本殿へ向ける。

「……あれを壊されたら、終わりだ」


――鏡、すげぇ。

神とか正直よく分からんが、

今のは、はっきり分かった。


私は反射的に、

仁さんの背にぴったり張り付いた。

ふと、座敷の方を見る。


お弟子さん五人と、マッキー。

靴も履かず、本殿へ駆け込んでいく。


……見た。確かに、見た。

全員手に鏡を持っていた…別格の力を持つ

本殿の鏡を、“盾”にする気だ。


――ちょっと待て。

こんな化け物を前に、近距離で

丸腰なのは、私だけじゃないか

しかも、一回吹き飛ばされてる


あれは……あの、ぶっとい尻尾。

尻尾が、再び振るわれる。

「ガキン!」

「ガキン!」


鏡に弾かれる。弾かれるが――

衝撃は、確実に伝わってくる。

「……キツいぞ、これは」


鵺が、後ろ足で立ち上がった。

巨体が影を落とす。


前足が、ゆっくりと振り上げられる。

猿の顔が、嗤った。

「ギャァ……」


次の瞬間。

「ガガンッ!!」

攻撃自体は、防いだ。


だが――

足元の石畳が、沈む。

「……ジリ貧だ」


仁さんが、歯を食いしばる。

「守れはするが……

 長くはもたん」

攻撃が通らないと悟ったのか、

鵺は前足を下ろす。

「ドンッ!!」

衝撃。石畳が砕け、

破片が、私の方へ――

視界が、再び跳ねた。

――また、飛ばされた。

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