軟水、硬水?
さて今日は、
十時に神社で神主と待ち合わせ。
四百段の階段が、
容赦なくスパイスを効かせてくる。
「ゼェ……ゼェ……」
私は千鳥足で、
なんとか鳥居の前に辿り着いた。
「ハァ……ハァ……」
一方、マッキーは完璧なジョギングスタイル。
若干息は切らしているが、
どうやらリベンジを果たしたらしい。
そこに、仁さんが待っていた。
「おはようございま〜す!」
やたら元気なマッキー。
「ああ、真希さん。おはよう」
ダンディズム全開の仁さんと、
軽く挨拶を交わす
そのまま、座敷へ通された。
説明を受けたあと、
マッキーは迷いなくコタツへ。
「領収書、整理してますので
頑張ってください」
……うん。頑張るよ。
仁さんの話をまとめると、こうだ。
この本殿に祀られている鏡は、
魔の物、邪の物を
“跳ね返す”力を持っている。
だが――
どんなに清らかな物でも、
汚れは溜まる。その汚れを受ける
“対”となる鏡があり、
それを定期的に清めねばならない。
清めの場所は、山の中腹にある湖。
今までは簡単だった。山の親分は、大猿。
酒を供えて、
「通してね」と言えば、
猿は
「酒くれるなら、いいよ。何もしない」
で済んでいた。
だが――
今は、その猿がいない。山に入った瞬間、
新しい親分が出てくる。
「なに、勝手に入っとんじゃあぁん?」
……そんな感じの
バトル要素あり、とのこと。
私は、最後の悪あがきをした。
「それなら、私が洗いますよ
汚れた鏡。神社の水道で」
仁さんは、即答だった。
「神さんの力を借りる
神聖な道具を、水道水で洗ったら
殺す」
明確な殺意に、身が竦む。
どうも、あの山には
物の怪だけでなく、
神々の恩恵も流れているらしい。
この神社は、
その恩恵を受けて成り立っている。
そして、
反射と吸収――
二枚の鏡は、その神の力を借りる器だ。
今日は、
“吸収の鏡”が汚れている。
年に一度の、掃除の日。
洗い方は特殊で、特別な水が必要。
それは――
徒歩二時間先の湖にしか無い。
途中で、
敵が出るかもしれない。
……そういう話だった。




