地獄のカロリー
マッキーがいる。
畳の部屋、座敷へ戻った。
地獄の四百段でカロリーを使い切ったマッキーは、布団の上で眠っていた。
スヤスヤと。お弟子さんが、
気を利かせて布団を敷いてくれたらしい。
「お弟子さん、すみません。
ありがとうございました」
そう言って、頭を下げる。
「いえいえ」と、
柔らかく笑ってくれた。
仁さんが言う。
「しばらく寝かせとけ。
何があるか、分からんからな」
――だよな。
今は、それが一番だ。
仁さんが、ふと思い出したように言った。
「そういや、あの鏡はどうした?
不気味すぎて、触れんかったが」
「事務所に、青で送った奴だ」
……ん?
イワオと、すぅ。
あの二人、ここで祈ったのか。
「あの鏡、仁さんでしたか。
鬼の手鏡でしたよ」
仁さんの目が、わずかに見開く。
「鬼の物が……なぜ、ここにある?」
……言えない。
安産祈願だなんて。
「まぁ……
何か、たまたま紛れ込んだとか?」
仁さんは腕を組む。
「それで、祓って燃やしたのか?」
――いやいや。
そんな事してたら、あの時、死んでる。
私は、流れだけを軽く説明した。
「あの鏡、門というか……扉でした」
「……あん?どこと、繋がる?」
「鬼の……住処、ですかね」
「……どこだ、それ。知らん」
「多分……賽の河原でした」
仁さんが、じっとこちらを見る。
「賽の河原に……行ったのか?
なんだ、お前。死んだんか?」
鏡に飛ばされた事。イワオと、すぅの事。
ギャルと安産祈願は伏せた。
魚を食べた話も、伏せた。
凄い簡潔に話す。
仁さんは、深く息を吐いた。
「相変わらず、意味不明だな。
……よく生きてるな、お前は」
鏡の話は、すんなり理解してくれた。
ここにも、似たような物があるからだ。
神託、とか神降ろし的な
詳しくは知らんが、そういう話だった。
一息ついた、その時だった。
――外から。
「ヴゥ……ボォ……
ヴゥ……ボォ……」
低く、濁った叫び声。獣でも、鳥でもない。
山に、木霊する。




