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それは、それとて  作者: 明日


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28/129

私は、知っていた








「ゼェゼェ……」「ハァハァ……」

私たちは息を切らしながら、石段を登っていた。


全部で四百段。

「今日、靴かって……ハァハァ

   聞いたの……この事ですね」


マッキー、すまない。

私は知っていた。


「ゼェゼェ……うん……」

ようやく登り切り、

鳥居の前に座り込んで休む。


中から、

「ジャ、ジャ」と砂利を踏む音がした。

「おう、緑。なまってんな」


少しラフな袴姿。

服の上からでも分かる、締まった身体。

ダンディなおじさんが立っていた。


「仁さん、いつ来ても

   慣れないですよ、この階段」

「わっハハハ、もっと鍛えんか」


豪快に笑う。

この人が、鏡心神社の神主――仁さんだ。

「あん?

 この可愛らしいお嬢さんは?」


マッキーは立ち上がり、きちんと頭を下げた。


「はじめまして、桜 真希です」

私は壁にもたれながら言う。

「一緒に働いてる、仲間だよ」

「そういえば弟子が言ってたな。

 電話で女性が出たって」


仁さんはマッキーに向き直り、

「よろしくね。神主の、じんです」


和やかな挨拶を終え、

私たちは中へ通された。


畳の匂いが、ふわりと鼻をくすぐる。

お弟子さんがお茶を運んできた。


小さなお台を囲み、

お茶を飲みながら話を聞く。


「で……どうしたんですか?」

お菓子に夢中のマッキーを横目に、聞いた。

仁さんは少し表情を落とす。


「最近な、裏の山から

  不穏な鳴き声が響いてる」

「鳥でもない、獣でもない。

 それと、この周りで死骸がな……

 無数に見つかってる」


――あ、これはヤバいやつだ。

裏山は、人の手が一切入らない。

何がいても、おかしくない。

下手をすると、

とんでもない物の怪が出てきても不思議じゃない。


そもそも、

大抵の事は仁さん一人で対処できる。

「……一旦、見ても?」

仁さんは立ち上がった。

「案内する、こっちだ」


私は振り返る。

「マッキー、もう少し休んでて」


お茶のおかわりをしていたマッキーは、

「分かりました。

 気を付けて下さい」

そう言って、軽く手を振った。


仁さんと共に部屋を出て、

裏山の入口へ向かう。

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