火が 弱点
第三の目――
いや、す魔法は大きく目を見開き、
「バルぅぅ、バルぅぅ」
と上機嫌に鳴いた。
……元気そうで何よりだが、
今は仕事中じゃない。とはいえ、
私もタダでは動かない。
下田さんに、声をかけてみることにした。
す魔法に意識を引っ張られている時は、
何を言っても届かない。
言葉は無駄だ。こういう時は、
外から刺激を入れるのが一番早い。
体に、軽く触れればいい。
肩を、ちょんと叩く。
「下田さん。目の痛み、取れますよ」
下田さんが、はっと顔を上げた。
「えっ、本当に?
どうやるの?」
「私、便利屋の緑って言います。
コーヒーをご馳走してくれたら、
治しますよ」
「いいわ、私が払うわ。
どうすればいいの?」
……うん。
ちゃんとお金を払ってくれるなら、
それはもう仕事だ。
「じゃあ、力を抜いて。
目を閉じて、上を向いてください」
下田さんの背後に回り、小さく声をかける。
「失礼します」
まずは肩から、
ごく軽くマッサージする。
「気持ちいいわぁ……」
次に、首。
優しく、ゆっくりほぐしていく。
すると、す魔法がこちらを睨みつけ、
威嚇するように鳴いた。
「もブルぅぅ……ぶるぅぅ……」
……気持ち悪い。
顔の横、こめかみの辺りを
指先でほぐすと、す魔法の輪郭が、少し浮いた。
外部からの刺激に、超敏感で、激弱だ。
そのまま、おでこの横まで移動し、
優しく、丁寧に揉みほぐす。
「ミョ〜……」
間の抜けた声を出した後、
す魔法は、完全に離れた。
放っておくと、
また別の人に取り憑く。
だから――燃やすしかない。
浮いた瞬間を逃さず、
一息で掴み取る。小さく、手の中に収めた。
「下田さん、終わりましたよ。どうです?」
下田さんは、ゆっくり目を開き、
軽く首を回す。
「あら……
楽になったわ。
ありがとう、不思議ねぇ」
軽く会釈をして、私は店を出た。
外に出て、火をつけて燃やす。
――さぁ、帰ろう。




