じょう、じょう 状 上
今は、魚をご馳走になっている。
賽の河原で獲れた、
ホクホクで、見たことのない魚。
――元から、この世のものじゃない魚だ。
マッキーがぎょっとして、
「……食べられますよね?」
私は、もう食べ終わっていた。
腹が減っていたからだ。
「マッキー、やめといた方がいい」
耳元で、そう囁く。
「……ですよね」
魚を食べると、
身体の傷が、じわじわと癒えていく。
どうやら、魂的な何かを
取り込んでいるらしかった。
――――――――――
鈴の音が響いたあと、ギャルが現れた。
「いーわぁーおーご飯よ〜
てか、何してんの?」
私とマッキーは、目を見開いた。
黒ギャルも白ギャルも知っている。
だが――鬼のギャルは、初めてだ。
青鬼とは対照的に、
スリムな体、ミニスカート、へそ出し。
ピアスが揺れている。ナイスボディ。
私はマッキーに小声で言った。
「……青ギャル、だね」
マッキーは、無言で頷くしかなかった。
青ギャルはケラケラ笑う。
「てかさ〜
なんで生きた人間がいんの?」
「ウケるんだけど〜、ぷっぷぅぅ」
黙っていた青鬼が、口を開いた。
「ご、ごめん……夕飯の時間だった?」
――瞬間、理解した。
こいつ、完全に尻に敷かれている。
呆然と立ち尽くす
私とマッキーに、青ギャルが畳みかける。
「どうやって来たん?
生者は門で弾かれるんだけど」
私はポケットから鏡を取り出した。
「これ、覗いたら……ここに」
青ギャルは鏡を見るなり、
目を輝かせた。
「それ〜!ウチの、届けてくれたの?」
「マジ恩人じゃん!」
……もう、そういうことにしておこう。
――――――――――
そのまま私たちは家に案内され、
夕飯をご馳走になった。
私だけ。青鬼――いや、イワオは、
何度も何度も頭を下げてきた。
どうやら、あの鏡は
イワオからの婚約指輪みたいなものらしい。
お腹には子供がいて、
安産祈願で二人で神社に行った際、
無くしてしまったという。
拾われた先が、あまりに禍々しく、
手に負えないからと
私のところへ送られたらしい。
後になって、そう知ることになる。
「さ、ご飯食べたなら送り返すよ〜」
イワオは頷きながら言った。
「生者が長居する場所じゃない
本当に……すまなかった」
「緑、真希。この恩は、必ず返す」
私も頷いた。
「こっちも殴って悪かった
届けられて、良かったよ」
青ギャルは、
すぅ――という名前らしい。
「もうちょい近づいて、二人とも」
鏡に私たちを映し、
それをくるりと反転させて、
すぅは呟いた。
「状、上」
――瞬間、景色が切り替わった。
事務所に、戻っていた。
マッキーが、ぽつりと言う。
「戻れましたね……凄い、濃い一日でした」
ああ、本当に疲れた。
「マッキー、お疲れさま」
私は、すぅの最後の言葉を思い出す。
「状、上」
……カッコいい。いつか、必ず使おう。
そう、心に決めた。




