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それは、それとて  作者: 明日


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晴れてるな




今日の依頼は、独身四十代の吉田さん

最近、寒気がして

それから――見られているような気がするらしい


一度、見てほしいとのことだった

送られてきた待ち合わせ場所へ向かう

「んー……今日はよく晴れてるな」


小さなカフェの奥の席に、吉田さんはいた

少し猫背で、疲れた顔

「あの……緑屋さんですか?」


私は笑顔で答える

「はい、そうです」

「詳しくお話を聞かせて下さい」


改めて吉田さんを見る

少し疲れている。ふくよかで、髪は薄め。

体毛は……元気だ


吉田さんの隣に

テカったネズミ色の物の怪がいる。

ずんぐりしていて、だらしない体つき

全体的に、ダルダルだ、妙に人懐っこい笑顔

……憑かれている


私は心の中で、

この物の怪を「おじSUN」と呼んでいる


吉田さんが話し出す。

「三か月くらい前から体調が悪くて

 それに、ずっと誰かに

 見られてるような気がして……」


そりゃそうだ。

真横で、じっと見ている

しかも、笑顔だ


その時、おじSUNが、長い舌を伸ばした

吉田さんの頭を、ぺろり。また、ぺろり


あれに舐められると

どうも色々なくなる。髪だ


代わりに、別のものが濃くなる。体毛

おじSUNは、湿っぽい場所と

脂っこい生活が好きだ。


そして――

太陽の光が、嫌いだ

正確には、当たりすぎると

居づらくなるらしい


私は言った。

「原因は分かりました」

「本当ですか!」

「まず、部屋の風通しを良くして下さい」

「風通し……」


「それから、昼間。

 ちゃんと太陽の光を入れて下さい。

 カーテンは、開ける方向で」


吉田さんは少し驚いた顔をした。

「日光、ですか?」


「ええ、あれは、

 明るいのが苦手なので」

私は言いながら、おじSUNを見る。


少し、目を細めていた。

「玄関に塩を置いて、

 線香は一本」

「一本、で?」


「多いと、

 逆に落ち着く事があるので」


塩と線香に

本当に意味があるかは知らない。

……雰囲気だ。

二日もすれば、多分、離れる。


吉田さんは

「分かりました」と

少し安心した顔で頷いた。

「不安なら、

 お部屋まで同行しますが?」


「いえ……

 その……散らかってて」

この手の依頼で、

部屋が綺麗だった例を、

私はまだ知らない。


「二日経って、

 まだ違和感があれば連絡を」


吉田さんは

「ありがとうございます」と言って

封筒を差し出した。

私は受け取り、それっぽい言葉を

それっぽく呟く。


私は、両手を軽くクロスして、

「封印……ちぇい」小声で、力強く


吉田さんが帰る頃、窓から差し込む光が

少し強くなった。

おじSUNは、ほんのわずか、

居心地が悪そうだった。

――たぶん、効く。そう…たぶん。

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