理不尽な社会
ここは多分……
三途の川の手前、賽の河原だ。
見覚えがあると思った。
鏡が、扉になったのだろう
私は鏡をポケットにしまった。
イレギュラーな入り方をした私たちは、
青鬼の指示通り、
石を十個、積み上げることにした。
……いや、無理だろ、これ?
形のいい石なんて、都合よく落ちていない。
どれも丸く、どれも滑る。
石職人さん、じゃない。
バランス感覚の天才でもない。
積み上げては、崩れ
積み上げては、崩れ
何度も、何度も
「……少し、休憩しましょう」
マッキーは、
完全に疲労困憊だった。
「凄いですね……ここの石。
全部、ツルツルしてます」
周囲を見渡す途中まで積み上げられた石が、
無数にある。どれも、完成していない。
……なるほど。
私は、ここが賽の河原であること、
鏡が扉だったことを、マッキーに説明した。
彼女は少し黙ってから、
頷いた。そして、一拍置いて。
私は、伝える
「出張代、出るよ…」
真顔だ。……強い。
やはり、ハイスペック女性は違う。
それから、さらに数時間。
幾度もの失敗を越えて、私たちは、
九個目を積み上げた。マッキーの目が、
はっきりと輝く。
「あと一つで、終わりますね」
「そうだね。終わりが、見えた」
――その瞬間。
遠くで、何かが爆ぜた。
「ドンッ」
次の瞬間、青鬼が、爆発的な跳躍で飛んできた。
積み上げた石のすぐ横に着地。
「ズンッ」
地面が、叩き潰される。
石は、一気に吹き飛び、
私たちは体勢を崩して、倒れ込んだ。
「キャー!」
私はすぐに駆け寄る。
「大丈夫か!」
幸い、怪我はない。青鬼は、
こちらを一瞥し、また同じ言葉だけを残して、
帰って行った。
マッキーは、歯を食いしばって言う。
「……九個目を積むと、
飛んで来るってことですね」
「完全に、虐めじゃないですか」
……そうだ。
これは、作業じゃない。試練ですらない。
ただの、理不尽だ。
それでもやるしか、なかった。
二回目、三回目。
同じように、吹き飛ばされた。
解決策は、見つからない。
マッキーは、限界だった。
その横で私の中に、何かが、
確実に溜まっていく。怒りだ、四回目。
九個目を、積み上げた、その瞬間。
「ドンッ」
青鬼の、特大ジャンプ。
「ズーンッ」
ガラガラと、石が崩れ落ちる。
その音と一緒に。
「……ブチっ」
何かが、完全に切れた。
私は、もう盛大に――




