酒と塩時々鏡
心霊写真の対処法なんて、
知るわけもない、私に見えるのは、
ちょっと歪んだ、顔みたいな奴がいる、
それだけだ、燃やせばいい。
酒や塩を使えば、それっぽく、
プロみたいに見えるだろう?
「退散……はっ」とか、
「封印、ディ」とか。
残り三枚も、その調子で燃やした。
マッキーは飽きて、
領収書の整理をしていた。
そして、最後の封筒を開ける。
中に入っていたのは、鏡だった。
古い…縁が、少し欠けている。
何気なく、その鏡を覗いた瞬間――
飛ばされた。足元が、抜けた。
マッキーも一緒に。
「え?
……どこですか?ここは」
私は、驚きすぎて、
「だ、だだでぃ、大丈夫さ〜」
自分でも分かる。完全に、気持ち悪い。
辺りは、少し霧がかった、
川辺みたいな場所だった。
水の流れる音が、近い。
大小さまざまな石が転がり、
どれも、やけに重そうに見える。
真ん中を、川が流れている。
……あれ?ここ、前にも来たような。
不意に、背中から声が落ちてきた。
「お前ら、生者か?」
心臓が跳ねた。
振り向くそこにいたのは――
ガチっとした、ムキムキの鬼。
二メートルは超える巨体。
牙、鋭い目、角月明かりに照らされて、
影が、やけに大きい。立派な、
青鬼だ。
マッキーが、私の服を掴む。
「緑さん…… 鬼です鬼……っ」
私は、初めて見る。The・鬼に
声が少し震えた。
「……本物、だね」
最先端の物の怪ばかり、見てきた私には、
この直球は、効いた。
鬼は、こちらを値踏みするように見てから、
言った。
「元に帰りたければ、河原の石を、
十個積み上げろ」
鬼は、どす、どす、と
川上の方へ歩いて行った。
残されたのは、水音と、重たい石と、
私たち二人、マッキーが、小さく言った。
「……積めば、帰れるんですよね」
「……たぶんね……」




