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【明日のお休み、一度自宅へ荷物を取りに行っても良いですか?】


「あー、まあ大丈夫だと思います。確か今彼は実家に行っていて不在のはずだから」


【……もしかして、会わないように調べてくれていますか?】


「まぁ、この前は危なかったですから。……あれ以来音沙汰無いのが逆に不気味だけれど」


【ありがとうございます】


「うん、気をつけて行ってらっしゃい」


 そうしてコレットは、次の日自宅へと一時帰る事に決めた。






 王都の、研究所まで徒歩30分ほどの所にあるこじんまりしたアパートがコレットの住処だ。

 治安も比較的良く、近くに商店街もあるその立地をコレットは気に入っている。

 外付けの階段を登り、2階の左から2番目が彼女の部屋。


(わっ…ポストすごい事になってる…広告多いんだよなぁ)


 詰め込まれた紙の束を引っ張り出して家の鍵を開ける。


(ただいまー…)


 テーブルに紙の束をおくと、コレットは窓を開けて換気をした。


(やっぱ何日も居ないと空気が悪くなるよねぇ)


 窓から入ってくる涼やかな風に思わず目を細めた。


(もう、冬も間近だね)


 暫くそうして窓辺で外を眺めたあと、コレットは実家からの転送装置を起動した。

 何通か手紙が出てくるが、全て家族からのものだった。


(……エリク兄からは1通も、来てない)


 返事を返さなかったのは自分なのにそれがどうしようもなく悲しくて。


(ーーなんて、自分勝手なんだろう)


 そんな自分に落ち込みながらも、家族からの手紙を開封する。


 事前に、少しの間部屋を空ける連絡はしていたのに随分と送ってきたな、とコレットは思った。


【コレット、エリク様はお前を随分と気にかけ探しています。ーーー辿り着くのも時間の問題かもしれません】


【コレット姉様、僕はエリク様が少し恐ろしいです。姉様、ご無事をお祈りしています】


【コレット、時には諦めも必要なのかもしれんな】


 並ぶ言葉は不穏なものばかりで。


(ーーーあれ)


 家族からの手紙に紛れて1通、辺境伯からのものがあった。


(辺境伯様からーー?)


 コレットは恐る恐る手紙を開封する。


【コレット嬢へ

 すまん、止められん】



(どういう、事?)


 ざぁっと一際強い風が吹く。

 テーブルに置いていた紙がハラハラと舞いあちらこちらに落ちてしまった。


(あぁ、もう!ーーどうせ、半額セールとか土地を買いませんかとかそんなお知らせーーー)


 ピタリ、と手が止まる。

 

(違う)


 見たこともないほど、雑に、殴り書きされた文字。


(広告、なんかじゃない)






【見つけた】


【コレット、早く出ておいで】


【迎えにきたよ】


【待っていてと言ったのに、嘘つき】


【やっと見つけた】


【もう絶対に逃がさない】


【コレット、コレット、コレット】


【また来るね】


【もう、分かってるよ家名なしのコレット】




【次に会った時には、離れられないようにしようね】



 コレットの背筋を、言いようのない恐怖が迫り上がる。

 

(これは、誰。これが、エリク兄……?)


 部屋中に散乱した手紙を前に呆然とするコレット。


 ーーーそんな彼女の部屋の扉が、静かに開いた。


(鍵を)


「コレット」


(鍵を、確かに閉めたのに)



「会いたかったよ、コレット」


 猫のような目を柔らかく細めて、天国を見つけたかのような顔で笑う男ーーーエリクがそこに立っていた。



「ーーーただいま」



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