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 自宅から必要そうな荷物を纏めたコレットは夕闇前には再び研究所へと戻れた。


「ここね、好きに使ってください。シャワールームも付いてるし、ミニキッチンもある。あぁ、コレットさんが居ない間に少し食材も買って棚に入れておいたから好きに使って」


【何から何までありがとうございます】


「いいよいいよ〜。あのね、コレットさん、私はあなたをかっています。……じゃ無かったらあの時あなたを受け入れていないし、協力もしていないーーーただね、自己犠牲もすぎるとただの戒めだーーー幸せを、考えてみてもいいんじゃないですか」


(所長…)


「じゃあ、私はそろそろ帰るけど……ゆっくりおやすみなさい」


【おやすみなさい、所長。また明日】


 ひらひらと手を振って所長は部屋を出ていく。

 コレットは家から持ってきた旅行鞄を開けると中の荷物を整理し始めた。


(所長には迷惑をかけっぱなしだなぁ……今度ちゃんと、お礼をしよう)




 

 一通り荷物を片付け終わったコレットは湯を沸かし紅茶を淹れた

 ミルクと砂糖を多めに淹れて。


(…エリク兄は紅茶を飲む時いつもお砂糖もミルクもたっぷり淹れてたな。あまりにも美味しそうに飲むから、私もいつの間にか同じように入れるようになった)


 窓の外はすっかり暗くなり、星々もそんなに姿を見せていない。


(……会いたいな。ーーーいつか、こっそり姿を見に行けたら良いな……そしたら、隣にはサーラ様が居るのかな)


 痛む胸を誤魔化すように、紅茶を口に含む。


(……飲んだら、シャワーを浴びてゆっくり寝よう。明日も仕事なんだし)


 甘いはずのそれが、ほんの少し苦く感じた。








 研究所にコレットが住み着いて数日が経った。

 特に変化はなく、コレットは忙しいながらも穏やかに仕事に励んでいる。

 変わったことと言えば、食堂に行くのは辞めて簡単な食事を朝作って職場に持っていくようになった事くらいだ。



(うーん、職場に住むって思っていた以上に快適…朝通勤する手間もないし、帰りもすぐ部屋に行けるし…ずっと続けたいくらい……)


「コレットさん、すみません!ここの承認って誰に貰えば良いかわかりますか?」


【あ、これは総務に一度持って行ったほうがいいね。私ちょうどいく用事があるから一緒に出してこようか?】


「え!!いいんですか!!ありがとうございますうぅぅ!今の案件納期迫ってて…余裕がなかったので助かります」


 総務は研究所の1階奥にある。

 コレットが働く部署は3階なので、意外と距離があるのだ。

 ちなみにコレットが間借りしている部屋は5階にあり、そこには寝泊まりできる部屋が何室が用意されている。


【いいよ。ちょうど今ひと段落してるから行ってきちゃうね】


「神様仏様コレット様〜!!ありがとうございます!!」



 後輩の大袈裟な礼を受けつつ、コレットは1階へと向かった。



 階段を降り、総務部へと向かう途中ーーどうしても研究所のエントランスを横切る必要がある。


(ーーーっ!!)









 そこに、彼はいた。


 肩口で揺れる、銀色の髪。

 厳しく細められた、藤色の瞳。

 10年という月日はその姿を大いに変えていた。

 服の上からでもわかる逞しいその身体に、高い背丈。

 ーー大人の男になった、エリク・アルノーがそこに立っていたのである。


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