幕間の物語 娘が“習慣進捗会議”を始めて家族トップに君臨した話
リュクスハイム伯爵、ジークフリート。
貴族社会では知らぬ者のない重鎮であり、
国王の信任厚き軍政の要──
他国からは「国落としのジークフリート」と恐れられる伝説の将軍でもある。
だがその実態は──
妻と娘に骨抜きの、超☆親バカである。
•娘の誕生日に合わせて新品種のバラ《ミリアーネ・エテルナ》を開発
•妻とのティータイムのために、宰相との会議を30分後ろ倒し
•娘の風邪予防に、庭の風向きを改修(←割と本気の土木工事)
などなど、逸話には事欠かない。
「こんなんで軍が回るの、むしろ奇跡では?」
という声すらあるが──
“まあ、ジークさんだしw”の一言で国民に愛され続けている。
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だが、そんなジークフリートにも唯一恐れている存在がいる。
それが──
「習慣進捗会議(毎晩19:00定刻開始)」である。
主催:娘・ミリアーネ(7)
特技:父を論破
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会議の一例
ミリアーネ:
「お父様、“朝の散歩10分”タスク、本日も未実施ですの?」
ジークフリート:
「いや、その……今日は雲が厚くて……」
ミリアーネ:
「傘という便利な道具があると、どこかの本に書いてありましたわ」
→ 秒で論破。
ミリアーネ:
「“お母様とのお茶会”のログが、また空白ですの。どうしてですの?」
ジークフリート:
「そ、それは……愛は記録じゃない、感じるもんだから!」
ミリアーネ:
「では“感じた愛”を、100文字以内で記述してくださいませ」
→ 提出期限:翌朝7:00。遅延報告は別紙にて。
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最初は「娘がしっかりしてきたな~」とほほえんでいたが、
気づけば完全に主従が逆転。
今やジークフリートは、ポケットにミニ手帳を常備し、
“おやつを食べた時間”まで逐一記録している。
「俺は、かつて剣一本で戦場を駆けた将軍……
なのに今では、娘の“習慣進捗会議“に震えている……」
──天を仰ぐその姿に、かつての威厳はない。
あるのはただ、
“習慣家予備軍”としての悲哀と決意だけである。
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ミリアーネの評価メモ(非公開)
【父:ジークフリート】
・改善傾向:良
・ベスト習慣:「歯磨き30秒延長」達成(7日連続)
・次回目標:「母との会話ログ」を定量化(報告書テンプレート作成中)
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父よ、がんばれ。
その努力はすべて、習慣ログに残されている。