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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第四章 狼姫の好きラッシュ

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第67話 「狼姫と、夏の招待状」

「か、十七夜月先輩っ!?」

「あっはっはっはっは! 柳クンはいつも想像以上の反応をしてくれて嬉しいよ」


 突然後ろから現れた十七夜月先輩に俺は驚き、風紀室の床に尻もちをついた。

 そんな俺を見てイタズラ好きな風紀委員長は、目じりに涙が溜まるぐらい笑う。


「莉子ちゃんっ!」

「やあ未来。柳クンの気を引いてくれて助かったよ」

「へっ? 良く分からないけどやったーっ!!」


 想い人が現れた未来先輩は、咲蓮から十七夜月先輩へと飛びかかり、そのまま抱きついた。

 感情を全身で表現する生徒会長は、首を傾げながらも幸せそうに目を細めている。


「総一郎。大丈夫?」

「あ、あぁ……ありがとな、咲蓮」

「好きになった?」

「…………嫌いだよ」

「またイチャイチャしてるぅ!!」

「せ、先輩には言われたくありませんっ!!」

「うんうん。やっぱり似た者同士だねぇキミ達は」


 朝日ヶ丘先輩とは対照的に、落ち着いた様子で咲蓮が俺に手を伸ばしてくれる。

 その手を取ったばっかりに咲蓮はチャンスとばかりに俺に好きかと聞いてきた。

 当然それに答えれば朝日ヶ丘先輩が反応し、反論すると全てをお見通しみたいな顔をしている風紀委員長が満足そうに笑う。

 完全に手のひらの上であった。


「……十七夜月先輩は、どこにいたんですか?」

「風紀室の壇上にある教卓の内側さ。ほら、こっち側からだと見えないだろう?」

「……あの中に?」

「ああ、体育座りでね。思いのほか狭かったけど、童心に帰った気分だったよ」


 何をしてるんだろうかこの人は?

 中身は間違いなく咲蓮よりも冷静で、学園一の大和撫子と呼ばれているような人なのに俺達にイタズラをする為に教卓の中で体育座りして隠れていたとか……。

 

 この前から朝日ヶ丘先輩を愉快な人認定したけれど、十七夜月先輩も大概だった。


「た、体育座り莉子ちゃんっ!? 何それ見たいっ!!」

「ふふ。今度、ね?」

「うにゃぁん……!」


 何故か興奮する朝日ヶ丘先輩は、十七夜月先輩に顎を撫でられて猫みたいになる。

 本当に自由だなこの人。


「莉子先輩。それで、用事って?」

「ああ、わざわざ部活中にすまないね咲蓮クン」

「ううん。おかげで、総一郎に会えた」

「そうだね、ボクも中々イイものを見せてもらったよ」


 呼び出した張本人である十七夜月先輩が現れた事によって話が進む。

 咲蓮が小さく首を傾げると、十七夜月先輩はニヤリと笑った。

 ……主に、俺の顔を見て。


「まずは先日のデート、お疲れ様。初めてのデートは楽しかったかい?」

「うん。すごく楽しかった」

「……楽しかったです」

「にゃんにゃんっ!」


 隠れていたという事は、俺と咲蓮のやり取りを最初から聞いていたと思う。

 しかしそれについては言及せず、十七夜月先輩は普通に先輩のように話し出した。

 普通も何も先輩なのだが、内容があまりにも普通なのだ。

 その普通な十七夜月先輩に抱きついてにゃんついている、朝日ヶ丘先輩を除いて。


「それは良かった。しかキミ達は、大事な事を忘れているよ」

「大事な事?」

「ああ。水着、買っただろう?」

「うん。今日、総一郎に返した」

「返した……?」

「か、買った時に咲蓮と一緒の袋に混ざってただけです!」


 また面白いものを見つけたみたいな目に変わる十七夜月先輩を、俺は見逃さなかったので速攻で誤解を解いておく。

 この学校で一番信頼できるけど、同時に一番敵に回してはいけない人物だから。


「ははは。まあ、先ほどのやり取りを見るに、そうだろうね。そんなキミ達に、ボクからプレゼントだよ」

「プレゼント?」


 そう言うと十七夜月先輩は、俺と咲蓮に封筒のようなものを手渡してくる。

 封はされているが、何も書かれていない新品の封筒だった。


「開けて良い?」

「もちろんだとも」


 両手で封筒を持った咲蓮が聞く。

 すると十七夜月先輩は快く頷いたので、俺も一緒に貰った封筒を開けた。


「チケット……?」


 そこには、二枚のチケットが入っていた。

 水色と白のチケットが二枚ある。だけど何も書かれていない。

 咲蓮を見れば同じ内容のチケットが入っていて、俺と同様に傾げている。


「ああそうさ。夏休み前に三連休があるだろう?」

「あります、けど……」


 確かに祝日が絡むので今年の七月は三連休だ。

 だけどそれは質問の答えになっていない。

 俺の意図が伝わったのか、十七夜月先輩はパチンと、綺麗なウインクをして。


「ボクの家が所有するプライベートビーチへ、皆で遊びに行こうじゃないか」

「……はい?」

「もちろん。一泊二日で、ね」


 愉快そうに、とんでもない提案をしてきたのだった。

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