表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第四章 狼姫の好きラッシュ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/104

第66話 「狼姫と、受けネコ」

「だっ、駄目だよ咲蓮ちゃん総一郎くん! ふ、風紀委員が風紀室で風紀を乱すなんてそんな退廃的で背徳的なドキドキを体験したら……も、戻れなくなっちゃうよ!」


 アワアワワタワタと焦った朝日ヶ丘先輩が俺と咲蓮の下に駆け寄って来る。

 その内容は生徒会長としては至極真っ当だと思うのだが、朝日ヶ丘先輩というフィルターを通すと何故かとても濁って見えた。


「あ、朝日ヶ丘先輩……これは違ってですね……!」


 それはそれとして、俺も焦る。

 咲蓮との秘密のやり取りを見られてしまったからだ。

 俺と咲蓮が仲が良いという事はもうバレてしまったが、これだけはどうしてもバレる訳にはいかないのである。


「安心して総一郎くん! 全部……分かってるから!」

「な……っ、えっ!?」


 だからそれを誤魔化そうとして、驚愕した。

 俺達の秘密を、全部分かってると言うのだから。

 小柄な朝日ヶ丘先輩はその身体に不釣り合いな大きい胸をこれでもかと張る。


「私もよく、ベッドで莉子ちゃんにいやいやって言ってもやめてくれないから! 意地悪だよね……でも嬉しいんだよね……分かる、分かるよ!!」

「…………は?」


 前のめりになって、鼻息が荒くなる生徒会長の早口が続く。


「これ以上続けられるとどうにかなっちゃいそうなのにやめてほしくなくて、そんな気持ちを分かってくれながらも意地悪に私の予想を超える意地悪をしてきて……良いよね! ね! ね! ねっ!?」

「何を言ってるんですか何を!?」


 過去一興奮している先輩だった。

 その勢いは、体育館の壇上で全校生徒を前に話していた時よりも遥かに凄い。


「分かる。そんな意地悪なところも、好き」

「咲蓮!?」

「ねー! 咲蓮ちゃん分かってるぅ!!」

「わー」


 そこに咲蓮が参戦する。

 驚く俺を横に頷く咲蓮に、感激した朝日ヶ丘先輩が抱きついた。

 共にトップクラスの美少女で、生徒会長と次期生徒会長の熱い抱擁は見る人が見たら眼福で倒れてしまうだろう。


 だけど当事者の俺は頭が痛くなるだけだった。


「はぁ……咲蓮ちゃんは素直だねぇ……よしよし……」

「わあ。未来先輩の、なでなで」

「……それで、朝日ヶ丘先輩はどうしてここに?」


 ブロンド髪の美少女が、灰色髪の美少女の頭を背伸びしながら撫でている。

 そんな二人を見て、俺は自分に不利な話題を変える為に声をかけた。


「え? 莉子ちゃんに呼ばれてきたからだけど? そう言えば莉子ちゃんは?」

「朝日ヶ丘先輩もですか?」


 生徒会長は単純なので、簡単に話題は切り替わる。

 だけどそのおかげで、疑問は更に深まった。

 俺達をそれぞれ個別に呼び出した風紀委員長の十七夜月先輩が、どこにもいないからだ。


「うん! 『会いたい』ってシンプルだけどキュンキュンしちゃうメッセージが来たからね、生徒会の仕事を全部任せて飛んで来たの! そしたらね! 咲蓮ちゃんと総一郎くんが好き嫌い意地悪イチャイチャピロートークを風紀室でやってたからね、驚いちゃったよ!」

「……大丈夫なんですか?」

「平気平気! もうすぐ夏休みだから、そんなに仕事は多くないもん!」

「夏休み。楽しみだね」

「咲蓮……夏休みの前に、十七夜月先輩な」


 好き嫌い意地悪イチャイチャピロートークって何だ。

 俺は話題がどんどん脱線しそうだったので、すぐに修正する。

 当初の誤魔化す目的は達成したけれど、無軌道に話題が飛ぶと収拾がつかなくなるからだ。


「莉子先輩、どうしたんだろう?」

「ね! これってひょっとして、焦らしプレ」

「違うと思います」


 自由過ぎる生徒会長を即座に止める。

 人が方向性を定めようとしたのにこの人は……。


「多分だけど俺達三人が呼ばれたって事は他に人は呼ばないと思うし、ここは一度連絡を――」


 ひとまず、俺はポケットからスマホを取り出すと。


「まあ、最初からいたんだけどね」


 背後から突然。

 その十七夜月先輩がにゅっと、スマホと俺の顔を覗き込んできて。


「――うおおわぁっ!?」


 手に持ったスマホは宙に舞い、俺は情けなく尻もちをついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ