閑話3 『いつも寡黙で完璧超人なクラスの王子様が、実は優しくてお世話好きな嘘つき狼くんだと私だけが知っている』
※ヒロイン、咲蓮視点。
「されーん! おかえりー! デート! デートどうだった!?」
「ぶい」
「わーっ! 聞かせて聞かせて!」
「お父さんは?」
「パパは、えっと、疲れちゃって……えへへへへ……」
「?」
夜、というよりは夕方。
私が家に帰ると、お母さんが出迎えてくれた。
お母さんも今日はお父さんとお出かけだったから、すごく可愛い服を着てる。
でもお父さんは疲れちゃったみたいで、お母さんは目がキョロキョロしてた。
「そ、それより咲蓮の話だよ! 総一郎くんとはどうだったの!?」
「うん。総一郎に、告白してもらった」
「こっ、告白ーっ!?」
「うん。お母さん、とりあえず、手。洗ってきて良い?」
「そんな事より告白だよ!!」
お外から帰ったら、手、洗わないといけないんだけどな。
お母さんなのに、それよりも総一郎の事が気になるみたい。
ちょっとジェラシー。
「総一郎くんに何て言われたの!? お父さんには言わないから、教えて教えて!」
「んー、じゃあ、分かった」
「やったー!」
玄関で、お母さんは両手を上げて喜んでて子供みたい。
私と一緒にお買い物に行くとまだお姉ちゃんと勘違いされるから、すごいよね。
そんなお母さんに、私は言う。
「総一郎。私の事、大嫌いって言ってくれた」
「…………え?」
お母さんは、初めて変なものを見る目で、私を見てきた。
◆
「と、言う訳」
「なるほどなるほど……」
やっと手を洗って。
その後はリビングで、お母さんと色々とお話をしたの。
私と、総一郎の事。
どうして総一郎が、私に嫌いって言うかを。
「……咲蓮」
「うん」
「私達の娘だねぇー!!」
「うわわわわっ」
そしたらお母さんは、私の頭をわしゃわしゃしてくれた。
嬉しい。
だけどどうして今わしゃわしゃしてくれたんだろう?
「面倒くさいねぇー! すっごい面倒くさいよぉー!」
「それ、褒めてる?」
「すっごい褒めてる!!」
やった。
お母さんもお父さんも、すごく褒めてくれるから好き。
「でも咲蓮! いくら二人で通じ合ってても、ちゃんと総一郎くんに自分の気持ちを伝えないと駄目だよ! そうしないとすれ違っちゃう時だってあるんだからね!」
「大丈夫。総一郎にちゃんと、好きって言った」
「……それで総一郎くんは、咲蓮の事を大嫌いって言ったの?」
「うん。すっごい嬉しかった」
「面倒くさいよぉー!!」
「わわわわわわっ」
最後に、またお母さんは嬉しそうに頭を撫でてくれた。
私がネットカフェで寝そうになった時も、総一郎が頭を撫でてくれたっけ。
総一郎の手、大きかったな。
また嫌いって、嘘。
言ってくれないかな。
第三章 狼姫のダブルデート 完
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