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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第三章 狼姫のダブルデート

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第53話 「狼姫と、腕組み」

「く、苦しい……」


 カフェの滞在時間は合計で一時間を軽く超えていた。

 猫カフェからのカフェを終えて時刻は既に十三時を過ぎている。

 昼食はまだだが、俺の胃の中は既に大量のパフェで満ちに満ちていた、


「大丈夫?」

「あ、あぁ……」


 俺の隣を歩く咲蓮が涼しい顔で聞いてくる。

 おかしい。

 俺と同じ量のパフェを食べさせ合った筈なのに、咲蓮はケロッとしている。

 俺が情けないのか、咲蓮が凄いのか。

 女子は甘いものなら無限に食べられるというのは本当だったらしい。


「総一郎が危ないなら、私が助ける」

「す、すまんな……」


 そう言って咲蓮はギュっと、炎天下の中で俺の腕を抱いてきた。

 柔らかい感触と、パフェに負けない甘い匂いが広がる。

 暑いには暑いのだが、違う意味で体温が上昇しそうだった。


「パフェ。美味しかった」

「あぁ……だが、値段も凄かったな……」

「うん」


 ある程度の予想はしていたがそれを軽く超える値段で驚いた。

 会計時は値段に対する驚きよりも苦しさの方が勝っていて、少し歩いて余裕ができ始めた今になってジワジワと効いてきている。

 まあ外で遊んだ事が無い俺にとっては他に金の使い道なんてないので支払いは問題無かったが、外の世界はこんなにも物価が上がったのかなんて思わず異世界人みたいな反応をしてしまったのも事実だ。


「また行こうね」

「こ、今度はもう少しサイズを下げような……?」


 俺の腕を抱いて、ウキウキの咲蓮である。

 ていうか間接キスをしてからかなりテンションが高い。

 今も歩きながら俺の腕に頬を擦り付けているぐらいだ。

 マーキングだろうか?


 いや、嬉しいには嬉しいんだが……。


「見てあのカップル、すごいラブラブ……」

「美男美女の組み合わせで目の保養になるわ……」

「正に美女と野獣ね……あんなたくましい男の人に私も捕まってみたい……」


 ……そんな声がさっきからチラホラと聞こえてきている。

 休日の駅前なので、人通りは多く、咲蓮の美貌と俺の背の高さから目立ちに目立ちまくっていた。


「り、莉子ちゃん! 私たちもっ!」

「おやおや、困った子だ」


 しかも俺だけじゃなく、前には生徒会長と風紀委員長の地雷と清楚の美少女カップルもいるので注目は更に増す。

 この二人も俺達と同じパフェの量を完食した筈なのに普通に歩いていて、より一層甘いものは無限に食べられる説に信憑性が増した。

 そんな中で秘密裏に協力をしている朝日ヶ丘先輩が俺を見て、これはチャンスと十七夜月先輩の腕に抱きつく。


 なんていうか、俺達を遠目から見たら本当に珍しい絵面なんだろうなって思った。


「総一郎。私達も、頑張ろ?」

「さ、咲蓮はもうかなり頑張ってるぞ……?」


 これ以上何を頑張るというのだろうか。

 前を歩く憧れの二人を見て感化された咲蓮が、やる気に満ちた目で俺を見上げる。

 今でもかなり限界ギリギリなのに、これ以上何かをされたら俺はどうなってしまうのだろうか。


「ふむ。お熱いところ悪いね二人とも」


 と、そこに後ろを振り向いた十七夜月先輩が話しかけてきた。

 それに合わせて朝日ヶ丘先輩も俺達に振り向く。


「猫ちゃんで心を、パフェでお腹を満たせたし、そろそろ今日のメインといこうか」


 そう言って十七夜月先輩は微笑んだ。


「莉子先輩。メインって?」

「よくぞ聞いてくれたね咲蓮クン!」


 そんな先輩の言葉に咲蓮が首を傾げる。

 傾げた首というか顔はそのまま俺の肩に寄りかかってきたのだが、そのメインを知る俺はそれどころじゃなくて。


「夏と言えばプール! プールと言えば……水着選び、だよ」


 その演技っぽさも完全に自分のものにした十七夜月先輩が、見る者全てを魅了するようなウインクをしてきた。


 だが、今の俺にとってそれは、そのプランを知っていたとしても悪魔の仕草にしか見えなかったんだ。

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