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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第三章 狼姫のダブルデート

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第48話 「狼姫と、ひざまくら」

『にゃーん』

「お、おぉ……!」


 変な勘違いこそあったが、今の俺は猛烈に感動していた。

 咲蓮の膝に乗っていた三毛猫が、俺の膝の上に乗ってきたのである。

 小さいのにあたたかい。

 柔らかく儚げな命の重みが確かにそこにあって、直接手で触る殿は違う感動が俺の胸を満たしていた。


「ね、猫が……! 俺の、俺の膝に!」

「総一郎。可愛い」

「あ、あぁ……! 可愛いな!」

「うん。可愛い」


 咲蓮が猫じゃなく俺の顔を見ている気がする。

 だけど俺は膝の上の猫に夢中だった。

 厳しい家で育った俺は当然ペットも禁止だったので、これはとても、これはとても……素晴らしいとしか言い表せない。


 大人になって実家を出れたら、猫をお迎えしたい。

 そう強く思った。


『みぃ、みぃ』

「な、なんだ……ふみふみ、なんだ……!?」


 大きく伸びをした三毛猫が、俺の太ももを前足でふみふみし始めた。

 この行為に何の意味があるかは分からない。

 だけど可愛いと言う事だけはよく分かった。


『ゴロゴロ……』

「お、おぉ……」


 人間は、猫には勝てない。

 一通り俺の太ももをふみふみした三毛猫は、膝の上で身体を丸める。

 震える手でその小さな身体を撫でてみれば、気持ちよさそうなゴロゴロ音。


 これが合法で本当に良いのだろうか。

 十七夜月先輩、ここで働いていると言ったけど、実は危険な商売なんじゃないだろうか。


「気持ちよさそう」

「そ、そうだな……」

「私も。なでなでして良い?」

「も、もちろん良いぞ?」

「やった。なでなで」

『にゃおーん』


 咲蓮が身を寄せて、俺の膝の上に寝てる猫を覗き込む。

 距離が近づいたことによって、猫カフェを満たす良い匂いが咲蓮の匂いに上書きされた。

 それにより意識が猫から咲蓮に戻ったのだが、咲蓮は気にする様子は無くそのまま俺の膝の上に寝転がる猫を撫で始める。


「君も。なでなで、好き?」

『にゃー』


 咲蓮が、猫と会話している。

 やはり実は小動物同士、通じ合うものがあるのだろうか。

 それはそうと、猫を撫でているだけとは言え俺の太ももに手を伸ばす咲蓮はちょっとアレだなと思ってしまった俺を誰か罰してほしい。


『にゃっ!』

「あっ。いっちゃった」

「……猫は気まぐれと言うからな」


 俺の膝の上で、咲蓮に撫でられて気持ちよさそうだった三毛猫は急に飛び跳ねてスタスタと歩いていく。

 咲蓮は少し残念そうだし、俺もかなり残念だった。


「猫ちゃん。可愛かったね」

「だな」

「総一郎も。可愛かった」

「お、俺も!?」

「うん。膝の上、気持ちよさそうだった」

「ど、どういう事だ……?」


 咲蓮の話題が、猫なのか俺なのか、飛び飛びで途中からよく分からない。

 強いて分かるとすれば、咲蓮の視線が、さっきまで猫が寝転んでいた俺の膝の上に向いているという事で。


「……お邪魔します」

「っっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!????」


 次の瞬間、俺は声にならない悲鳴をあげそうになった。

 何故かって?

 咲蓮が、俺の膝の上に寝転んできたからだ。

 ひざまくら。

 いわゆる、ひざまくらである。


「わ。やっぱり、おっきい」

「さ、さささ咲蓮!?」


 もちろん、膝が、である。

 変な意味はない。

 変な意味はないと分かっていながらも、突然の甘えモードとこのシチュエーションに頭の中が真っ白になる。


「おやおや、可愛い猫ちゃんだね」

「か、十七夜月先輩……!?」

「わ、私の方が可愛いですにゃぁぁん……」

「と、朝日ヶ丘先輩は何を!?」


 隣からからかうような先輩の声がした。

 慌てて視線を向けてみれば、ソファの上で十七夜月先輩が朝日ヶ丘先輩のあごを撫でていた。

 何だこの人たち、自由か……?


「このひざは危険。法で規制すべき」

「何言ってんだ!?」


 そして俺のひざまくらを堪能する咲蓮も、自由だった。

 さっき猫を撫でていた俺と似たような事を言っている。

 猫……っていうか狼、いや子犬から見ても、これはwinwinの関係だったという事だろうか。


「これが。猫の気持ち」

「猫カフェは猫になるところじゃないと思うぞ!?」


 咲蓮に言いながら、隣にいる朝日ヶ丘先輩にも聞こえるように、俺は言う。

 でももちろん、どっちも聞く耳はもっていない。

 そんな時だった。


『まーお』

「わぶっ!」

「さ、咲蓮っ!?」


 俺の膝枕を堪能していた咲蓮の顔に。

 さっきまで俺の膝の上にいた三毛猫が飛びかかり、のしかかったのだ。

 まるでそこは自分の居場所だと言わんばかりに。

 

 猫にボディプレスを食らった咲蓮は、今日一番の、小さくも大きな悲鳴をあげるのだった。

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