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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第三章 狼姫のダブルデート

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第38話 「狼姫と、おあずけ上手」

 俺と咲蓮。

 そして、十七夜月先輩と朝日ヶ丘先輩のダブルデート。

 学校外で遊ぶ事を知らない俺にとっては正に渡りに船だったが、正直な話……気が重かった。


 何故ならこれは咲蓮が誘ってくれた、初めてのデートだから。

 ご褒美の一つという認識だが、それでも初デートは初デート。

 それをいきなり、ダブルデートという形に変えて良いのだろうか。

 

 そんな俺の心配は尽きなくて……。


「うん。分かった、良いよ」

「い、良いのか!?」


 放課後の教室。

 咲蓮の返事は、まさかの即答だった。

 もうちょっと何かあると身構えていた俺は、思わず拍子抜けしてしまう。


「私も。総一郎ともっと仲良くなりたい。未来先輩と莉子先輩みたいに」

「お、おぉ……」


 切れ長の瞳がキラキラしている。

 咲蓮にとってもあの二人は憧れの象徴のようだった。

 あまり変な影響を受けてほしくないが、一安心と言えば一安心である。


「未来先輩。莉子先輩とのお話を沢山してくれる」

「ん? そう言えば、最近よく話してるって言ってたな」

「うん。くんずほぐれつ、酒池肉林。妄想爆発、胡蝶の夢」

「い、意味分かって言ってるのか……?」


 被虐体質で破滅願望がある朝日ヶ丘先輩がいつも通りという事がよく分かった。

 本当に何を話してるんだあの人は……。


「でも、悪いな……」

「何が?」

「何って……初デートなのに、その、二人きりじゃ、なくて……」


 素直に納得してくれても、俺の考えはこれに帰結する。

 咲蓮は今朝からずっと週末のデートを楽しみにしていたので、俺が不甲斐ないばかりに想像とは違った形になってしまったんじゃないかと思ってしまうんだ。


「総一郎。可愛い」

「か、可愛い……は? お、俺が!?」

「うん。過去一、歴代トップの可愛さ。よしよししたい、する」

「さ、咲蓮!?」


 咲蓮が一歩俺に近づいて。

 背伸びをしながら手を伸ばし、俺の頭を撫でてくる。

 当然顔と顔も近くなって、ふわっと甘い良い匂いがした。


 どうやら俺もかなり咲蓮に毒されて、匂いを気にしてしまうようになったらしい。


「よーし、よーし」

「は、恥ずかしいんだが……」

「可愛い総一郎が悪い」


 何故こうなったのか。

 いや本当に、何故こうなった。

 初めてのデートがダブルデートになってしまい、謝っただけなのに……。


「はっ。総一郎の頭をよしよしすれば、総一郎の匂いが手につくからお得」

「世紀の大発見をしたみたいな顔をしないでくれ……」


 実際はちょっと口を開いただけだが。

 日常生活であまり表情が変わらない咲蓮を見慣れている俺にとっては大きな変化だった。

 それはそうと、この状況はいつまで続くんだろうか……。


「むふー。総一郎はおあずけ上手。駆け引きが凄い」

「か、駆け引きもあおずけもしてるつもりは無いんだが……すまん」

「未来先輩風に言うのなら、その表情と仕草だけでオカズになる」

「本当に何言ってんだあの人!?」


 学園一のアイドル的な生徒会長の印象がどんどん壊れていく。

 俺達が秘密を知ってから、開き直り過ぎじゃないかあの人は。


「先輩達を参考にして、今度は二人でもデート。しようね」

「…………おぉ」


 そこにいつもの不意打ちが炸した。

 咲蓮は俺の頭を撫でながら、俺の顔を見上げて笑みを浮かべる。

 夕焼けに照らされた教室の中、淡い橙色に染まったその綺麗な顔は俺の胸を高鳴らせるには十分すぎたんだ。


 咲蓮はもっと仲良くなりたいと言ってくれたが。

 ぶっちゃけデートをする前から、既に俺は堕ちてしまっている。


 そんな週末に控えた一回目のデートが始まる前、水曜日の放課後に。

 早くも二回目のデートが約束されたんだ。


 ◆

 

 そして、次の日。

 木曜日の放課後である。


「き、聞いたよ総一郎くんっ! 咲蓮ちゃんをだしにして……わ、私と莉子ちゃんの間に入り手籠めにしようとしてるんでしょ!? そ、そうはいかないよ!?」

「…………は?」


 俺は、妄想が爆発した朝日ヶ丘先輩によって生徒会室に呼び出されたんだ。

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