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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第三章 狼姫のダブルデート

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第35話 「狼姫と、嬉しさ全開」

 今週末、俺は咲蓮とデートをする。

 まだ水曜日で学校も普通にあるが、頭の中はそれでいっぱいだった。

 デートは何処に行こう、咲蓮は何が好きなんだ、思い返せば俺は咲蓮の事を全然知らないな。

 そんな考えが浮かんでは消えてを繰り返す日々を送っている。


 俺一人でそれが完結すればまだ良い。

 だけど咲蓮は俺と同じクラスで、隣の席だった。


「総一郎。総一郎。この服、どう?」

「い、良いと思うぞ……」

「総一郎。総一郎。じゃあ、こっちは?」

「い、良いと思う……」


 昼休み。

 昼食を終えた咲蓮は、俺の隣に椅子を移動させ、スマホの画面を見せてくる。

 そこには私服姿の咲蓮が写っていて、次々に新しい服を着た咲蓮の画像に切り替わっていった。


「総一郎。どんな服が好き?」

「お、俺は……女子の服には疎いからな……」

「むぅ。じゃあ、こういうのは?」

「…………っ!? ち、ちょっと、可愛さに振り過ぎかもな」

「分かった」


 そう言って咲蓮はまたスマホの画面をスクロールする。

 ちなみに今見せてきたのはとんでもなくフリフリでお嬢様みたいな私服だった。

 語彙力と知識の無い俺には精一杯の感想だったが、それでも普段クールな咲蓮の印象からはとんでもなくかけ離れた可愛さの塊みたいな服で危うく大きな声が出そうになった。


「……写真、沢山あるんだな」

「うん。総一郎、どれが良いかなって。お母さんに協力して撮ってもらった」

「そ、そうか……。俺は、着慣れた服で良いと思うぞ?」

「着慣れたって、これ?」

「………休日だし、私服で頼む」

「むぅ。制服デートはまた今度」


 今度!?

 と、俺の頭は更に困惑した。

 確かに制服は毎日着慣れているが、制服の端を摘まんで俺に聞いてくるのはとても心臓によろしくない。

 まだ一度目のデートも行っていないのに早くも二回目が確約されてしまった事に対して、俺は反応した方が良いのだろうか?


「はぁ~! 食った食ったー! お? 柳と狼姫! 昼休みもくっついてんのか! 最近本当に仲良いよなお前達ー!」


 そんな時である。

 学食から帰ってきてご満悦な様子のバスケ部男子が、俺と咲蓮が同じ席でスマホを見ている事に気づいて話しかけてきた。


「…………あまりからかわないでくれ」

「そうか? めちゃくちゃお似合いだと思うけどなー?」


 この男に他意は無いのだろう。

 めちゃくちゃ無邪気に首を傾げていて、思った事をそのまま口から出力するタイプの裏表が無い人間である。

 だけどそれが俺の羞恥心をかき乱すのだ。


「うん。総一郎と私、とっても仲良し」

 

 そんな俺とは対照的に、咲蓮は満足そうに大きく頷いている。

 何て言うか、とても肝が据わっていた。


「さ、サレン様が微笑んでいる!?」

「わ、私達ではそんな笑顔作れた事無いのに……!」

「や、柳さん! いったいサレン様にどんな魔法をかけたんですか!?」


 そこに新たにやってくる、仲良しファンクラブ三人娘。

 三者三様に、だけど全員が驚いた表情で俺と咲蓮を交互に見ていた。

 何だか最近はこのメンバーで集まる事が固定化されつつあり、学校生活がとても賑やかだった。


「総一郎凄い。魔法、使える?」

「……使えん」


 心なしか咲蓮の瞳がキラキラしていた。

 だけど俺は魔法使いになった覚えが無いので静かに首を横に振る。


「ところで、二人は何を見てたんだ?」


 何気なく、バスケ部男子が聞いてきた。

 それは俺と咲蓮しか知らない情報だから当然の事で。


「これ。総一郎に、好きな服を決めてもらってた」

「こ、これはっ!?」

「さ、サレン様の私服!?」

「わ、私達も見て良いですか!?」

「うん。みんなも決めてくれると嬉しい」


 咲蓮は俺に見せていたスマホを全員に見せる。

 するとすぐさまファンクラブの三人が食いついて、黄色い歓声を上げた。


「こ、こんな秘蔵ショットが許されて良いんですか!?」

「す、凄い……。綺麗系から可愛い系まで何を着ても似合ってる……!」

「サレン様とってもお洒落なんですね! 素敵です!!」


 大興奮である。

 仲良し三人娘は食い入るようにスマホを覗き込み、キャーキャーと騒ぎ出す。

 咲蓮の私服という、慣れない刺激に少し疲れた俺はようやく心を落ち着ける事が出来たんだ。


「ん? なあ、柳」


 そこに。

 俺と同じく手持ち無沙汰になったバスケ部男子が話しかけてきた。


「どうした?」

「どうして柳が、狼姫の服を決めてんだ?」

「…………」


 それも、至極当然な疑問で。

 だからこそ、俺は返答に詰まってしまった。


 俺と咲蓮がデートに行く事を、誰にも言っていないからだ。

 ここは上手く誤魔化さなければ、大変な事になってしまう。


「むふー。今度の休み、総一郎とデート」


 そこに、咲蓮。


「「「…………」」」


 固まる、三人娘。


「総一郎の、好きな服着ていく」


 そして、嬉しそうに咲蓮が笑う。

 その表情は、ご褒美のだっこをした時と同じ顔で――。


「「「で、デートーっっ!!??」」」


 ――大変な事に、なってしまった。

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