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いつもクールで完璧美人な孤高の狼姫が、実は寂しがり屋で甘えん坊な子犬姫だと俺だけが知っている  作者: ゆめいげつ
第二章 狼姫の風紀活動

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第18話 「狼姫と、いつも通り」

「なあ柳。最近風紀委員の腕章した生徒をあちこちで見かけるんだけど、何かあったのか?」


 次の日の朝。

 俺が窓際一番後ろにある自分の席に座っていると、教室に入ってきたいつものバスケ部男子が開口一番にそんな事を聞いてきた。

 どうやら早くも気になる生徒が現れ出したらしい。


「……前回の委員会でな、少し見回りを強化しようという話になったんだ。ゴールデンウィークも終わって六月になり、新入生も上級生も新しい生活に慣れて気が緩む時期だろう?」


 そしてそんな奴に答える話も決まっていた。

 これも十七夜月先輩の指示である。

 不純異性交遊をしている生徒の話以外は本当の事を話して良い、と。


 まあ、その疑いをかけられているのは俺と咲蓮なので言って良いと言われても絶対に言わないが。


「ほー、真面目だねぇ。それにしても多くね? 校外でも良く見るぜ?」

「そうそう! 風紀委員ってあんなに多かったのね!」

「柳はよく見かけたけどね」

「てっきり、柳さんだけだと思ってました……」

「委員会なんだから、お前達が所属してる所と同じ人数ちゃんといるぞ……?」


 そんな事をバスケ部男子と話していると、いつもの咲蓮ファンクラブ代表仲良し女子三人組もやってきた。

 今日は朝は遅くなるからご褒美は放課後だけで良いと、昨日咲蓮が言っていたのでこの三人も俺達側に混ざって話し始める。


 確かに。

 俺の見回り場所で咲蓮が部活の助っ人してる事、結構あった気がするな……。


「でもなんか落ち着かないんだよなぁ。部活の試合で見られるのは慣れてるんだけどよ、何かこっちが悪い事してるみたいで」

「うんうん。あの腕章見ただけでドキッとするわよね!」

「道端で警察見るのと同じ心理だよね」

「や、柳さんは別ですよ!? 見慣れてますので!」

「それは、フォローなのか……?」


 ギリギリ四面楚歌にならない範囲で俺が孤立する。

 まあ普通の生徒からしたら風紀委員の印象なんてそんなものだろう。

 実際に俺も放課後に理由なく残る生徒を注意しているし、そこはお互い様だ。


「おはよう。今日も賑やか」


 談笑にしては何故か味方の少ない話をしていた時である。

 いつものように教室に咲蓮が入ってきた。

 いつも通りのワイシャツとスカート。いつも通りのスクールバッグを肩にかけ、いつも通りクールさを振りまきながら、俺達に声をかけてくる。


「サレン様! おはようございます!」

「おはようございます。今日も綺麗ですね!」

「立ち姿でさえ威厳を感じておはようございます!」

「おはよう。おはよう。おはよう?」


 そんな咲蓮に、いつものようにファンクラブ代表仲良し女子三人組が挨拶をする。

 そして咲蓮もいつも通りに挨拶をしては首を傾げていた。


「おっす狼姫! 今日も人気者だな!」

「おはよう。それほどでもあるかも」


 その後にバスケ部男子も咲蓮に挨拶をする。

 今日は機嫌が良いのか、少しだけ口角が上がっているように見えた。


 よし。この流れに便乗して俺もいつものように挨拶を――。


「おはよう。赤ほ――」

「《《総一郎》》。おはよう」


 ――しようとしたら、先にされてしまった。

 いつものように、俺の下の名前を呼んで。


「えっ!? さ、サレン様!?」

「今、柳の事……!」

「み、苗字ではなく下の名前で!?」


 流石女子と言ったところか。

 咲蓮の言葉に仲良し三人組はいち早く食いついた。

 いや、確かに十七夜月先輩に仲睦まじい様子を見せろと言われたが、昨日の今日でいきなり皆の前で名前呼びは駄目だろう。


 だから俺は慌てて訂正を――。


「赤――」

「《《総一郎》》。いつも通り、《《咲蓮》》で良い」


 ――しようと、した。

 でも、それさえも遮られてしまって。


「「「い、いつも通りーーっっ!?」」」


 ファンクラブ代表仲良し女子三人組の声が、朝の教室中に響き渡った。

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