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作者: 木尾方

都心より少し離れた場所に私鉄の駅がある。


1キロちょっと歩けばJRの駅もあり地方から通勤する者達には使い勝手が良い駅だ。


その駅は各駅電車しか止まらないので通勤ラッシュ時間でも割と空いている。






7月の蒸し暑い夕方18時ごろ


学校帰りのとある女子高生が駅のホーム上り線最後尾あたりのベンチに腰掛けスマホを片手に帰りの電車を待っていた。


アナウンスが鳴る。


『1番線 〇〇行きの電車が間もなく到着します。危ないので下がってお待ちください』


そのアナウンスで女子高生は顔を上げて電車が来る方向に視線を送った。




「?」




この時間に酔っ払い?


怪訝そうな顔をして見つめる。


フラフラと言うより1人で誰かと押し合いをしているようにも見える。


サラリーマンと思われる中年男は何かを叫んでいるが聞き取れない。


口の動きは、はっきりと見えるのに聞き取れない…いや、声が聞こえない。


「なんなん?」 あのようなオヤジと同じ車両になりたくないと思ってしまう。


段々と白線に近づき、白線の外側に入ってしまう。


「マジ、ヤバい?」 この様な状況を見ても心のどこかで「大丈夫でしょ」と思ってしまう。


中年男は、あと一歩後ろに下がれば線路に落ちてしまう所まで来ていた。


電車が見え始めていた。


急に中年男は、キョロキョロと周りを見渡して安堵した表情をした。


白線の内側に戻ろうとした時、ポンポンと後ろから肩を叩かれた。


条件反射で振り向いてしまう。


中年男は目を見開き引きついた顔をしたが、そのモノに腕を引きずられて線路に消えた。


「きゃぁぁぁぁぁ!」と立ち上がり悲鳴を上げるが声が出ていないことに女子高生は気付く。


「???」足が異様に冷たい。恐る恐る足元を見るとベンチの影から、この世と思えないほどの いくつもの手が掴んでいた。





『次は、〇〇。お出口は左側』


先頭車両の最前列優先席に座る妊婦は思い出し笑いをして微笑んでいた。


出産間近で、初産のため実家に戻っていた。


産婦人科の帰りに久しぶりに友人と会う約束をし、話し込んでしまってた。


楽しかった〜。と思いながら、暖かい お腹をさすり愛情を込めている。


『ブー、ブー』マナーモードが振動した。次が最寄り駅のホームで父親が待っているとメッセージが入ってた。


まったく、自分が子供の頃は仕事人間だった父親が孫が出来た途端に心配性になるとは、呆れると言うかバカらしいと思いながら また笑ってしまう。


あぁ、なんて幸せなんだろう。と また笑う。


学生時代に通った風景を窓から眺め、父親がいるホームの方に顔を向けていた。


窓からの風景が駅構内に変わったあたりで振動を感じた。


「……」次の瞬間 進路向きに顔を向けていた妊婦に突然正面から行き良いのついた生暖かい液体がかかってきた。


赤く、どす黒い液体。生暖かくて、ぬるくて、体温ぐらいの液体。臭くて、嗅いだことがある液体。





「血?」





何が何だか分からなかった。


誰もいるはずのない最前列に座っている自分の前から突如 液体をかけられたのだから。


はっ、と自分より お腹の子供の無事を気にする。


変った様子は……あった。


あって欲しくはなかったが、あってしまった。


ボコボコと異様に四方八方伸びる腹に恐怖を覚えた。


こんなに動いているのに痛くない……感覚がない……いや、ある。


冷たさだけを感じる。


そう感じたとき妊婦は悲鳴を上げた。





1番線のホーム先端で、◯◯駅での業務を終えて本部に帰る乗務員が電車が来るのを待っていた。


定刻通りに電車が見え始めて来たが、最後尾の方での異変に気付いた。


「危ない!下がって!」


走り出した乗務員だったが、とき既に遅く中年男はホームに消え、そして肉片へと変わった。


悲鳴が聞こえ、逃げる人や嘔吐する人。阿鼻叫喚のプラットホーム


乗務員は立ち止まり、電車とすれ違った。




「…おかしい」




乗務員は入って来た電車の異変に気が付いた。


いや、異変がないのに気が付いたのだ。


人が飛び込む前に危険を察知して汽笛を鳴らしてもいなければ、急ブレーキもしていない。普段と同じように入って来て、丁寧に停車したのだから。


電車の扉が普通に開いた。


乗務員は運転手に駆け寄った。


「何を考えているんだ!人、人を引いたんだぞ!」


「何いってるんだ? ただでさえ、先週人身事故があったばかりなのにふざけた冗談はやめてくれ」


「いいから、降りて見てみろよ!」


運転手は愕然とした。


「う、嘘だ。だ、だって何も、何も無かった」


車両先端は血で染まり、まるで別の車両のようだった。





カンカンカンカンカンカンカンカン


駅から少し離れた踏切の遮断機が信号と共に鳴り響いていた。


◯◯駅から1キロほど離れたJR駅側から帰宅中のサラリーマンがイライラと遮断機が開くのを待っていた。


「何で開かないんだ? 今日は娘の誕生日だからケーキ買って早く帰る約束してるのに」


踏切を渡り◯◯駅の前にあるケーキ店に予約してある誕生日ケーキ 

閉店時間は19時 

まだ間に合うのだが、サラリーマンの男は焦っていた。


携帯を開き、◯◯線の情報を見てみた。


人身事故との情報が入って来た。


サラリーマンの男は、遮断機から顔を覗かせて見る。


◯◯駅には上下線の車両が停まっており、反対の遮断機は、まだ降りてはいなかった。




「どうしようか」




反対側の若い青年が線路に入ろうとしていた。


「あ、俺も渡ってしまおう」悪い考えを実行して線路に入って行く。


遮断機をくぐったとき、サラリーマンの男は後悔した。


体が動かない。いや、体中に何かが取り付き動きを止めているようだった。


声も出ない。体が冷たい。動け、動け。そう願うばかりだ。


視線を青年の方へと向けると、青年も無理やり止まっているような状態だった。


お互いの視線が恐怖に変わる。


遮断機の向こう側の人々は、この二人が線路内にいるのに気がついていない。


小さく鳴っているカンカンカンという警報と線路に向かって吠える犬の鳴き声がこだましていた。





帰宅帰りの乗客を乗せた運転手は、先に〇〇駅で停車している電車に視線を向け安全確認をしていた。




「ペンキ?」



反対側で停車している車両に違和感を感じたが信号も平常なので、そのまま通常通りに駅へと入っていった。反対車両とすれ違った瞬間、右下側の視線の先に感じてしまったのだ。




この世のモノではない存在を



ちょうど座って膝あたりの高さ、車内だと背もたれ辺りだろう。


反対の車両が人を引いたのだと、すぐに分かった。


運転手は震えながらも、安全に車両を停車位置まで止めた。


恐る恐る後ろを振り返ると、パニックになっている車内が見えた。


早く開けろとばかりにドアを叩く人、頭を抱える人、泣きじゃくる人、引かれたように倒れこむ人、誰もがこの世の終わりの表情をしていた。


「あ、あぁ、なんてことだ。」 


引かれた男は、その場にいながら車両の前から後ろまで、全ての乗客に、その死んだ意思を見せていたのだった。





上り線、ホーム最後尾にいる中年男は、部下に暴言を吐いてる。


その部下は上司である中年男をただジッと見つめていた。


少しずつ少しずつ、中年男に詰め寄っていく。


中年男は部下を突き飛ばそうとするが自分が後ずさりする形になってしまう。




「お前は先日、自殺したはずだろ!」




中年男は大声で叫んだはずだが、声は消されていく。


線路まで、あと少し






ご無沙汰してます。


木尾方です。m(__)m


去年は、喪に服していたため、「夏ホラー」作品は書きませんでした。


ラジオか~、書きたかったな~w


とか、言いながら1話しか書かないのもどうだろうw


たったの3000文字www


申し訳ありません。m(__)m


まぁ、もともと短編小説がメインですから~>ω<


少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


またお会いいたしましょう。m(__)m

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