3話
「…まぁ、何となく分かってた」
自分の5感はしっかり機能していたため、そこまでの驚きはなかった。
自分の顔と性別を認識し、次に気になってしまうのはやはり体だろう。
起きてから今まで、一度も自分の体を確認していなかったことに少し愕然とした気持ちになりつつ、自分の体を見下ろす。
「…酷い、ね」
明らかにみすぼらしいと分かる布の服、それが所々引き裂かれている。
いや、切り裂かれた跡もあるように見える。
そしてその跡のところには赤黒い、血の跡が付いている。
ゆっくりと服をめくり、確認する。
主に服が破けていたところに、切り傷や擦り傷と痣があった。
…少し、見るのがつらい。
傷にゆっくりと手を伸ばす。
「…っっ」
触れた瞬間、焼けるような痛みが襲った。
目覚めた時から襲う痛みは、これらのせいらしい。
…せめて、洗っておくべきか。
そう思い立ち、水たまりの方を見る。
「…飲み水は、石壁から流れてくる水を使えば何とかなるかな」
まずは、ズタズタになって服と呼べるか怪しい布を、水たまりで洗う。
血が固まってしまって中々落ちないが、根気強く洗うと何とか綺麗になった。
そして、その布を使って体を拭いていく。
傷に沁みて痛いが、我慢する。
思っていたよりも汚れていたのか、布はすぐ茶色っぽく染まってしまう。
また布を水につけて洗い、そして体を拭いて…を何度か繰り返し、ついでに髪も洗っておく。
「ふぅ…」
時間にして恐らく1時間ほどだろうか。
残っている傷はまだ痛むが、少なくとも体は綺麗にはなった。
髪をさっと手に取ってみると、くすんでいた色は落ちて少し輝く真っ白色になっている。
「…こんなに綺麗だったんだ」
体が綺麗になったことを確認し、布を絞って着る。
…色々と心許ないし湿っているけれど、今はこれしか服がない。