2話
…私は何者なのか。
何度自分に問いかけても、答えは出てこない。
「…どうして」
心の内を吐露するように声が出る。
段々と呼吸が荒くなっていく。
過呼吸を起こしているようだ。
目の前がふらふらとし、眩暈も始まった。
立って居られなくなってしまい、膝をつく。
…落ち着かなければ。
体が異常をきたしたことで逆に少し冷静になり、何とか落ち着こうとゆっくり深呼吸をする。
少しずつ呼吸は落ち着きを取り戻し、眩暈も収まってきた。
「…なんとか、おちついた、かな」
最後にゆっくりと息を吐き、そうつぶやいた。
…喉がカラカラだ。
何とかもう一度立ち上がり、記憶を頼りに水たまりがあった方へ目を向ける。
そこには前に見た通り、水たまりがあった。
ゆっくりとそこへ歩いていき、確認をする。
水は綺麗に澄んでいて、飲んでも問題なさそうなことが分かる。
ふと水の流れを追っていくと、石壁の方から流れてきていることが分かった。
念のため少しだけ手ですくって口に含むと、少しの甘みを感じる。
「…うん、これなら飲めそう」
そう判断して、両手ですくって飲みはじめる。
思ったよりも喉が渇いていたのか、1回では足りずに何回か繰り返す。
すくって、飲む。
すくって、飲む。
すくって、飲む。
10回目に到達しようかというところで、満足して水をすくうのをやめる。
…少し飲みすぎたかも。
ちょっとだけ重くなった気がするお腹が気になるが、問題は無さそうなので気にしないことにする。
夢中になって飲んでいたため、少し息が荒い。
呼吸を整えるように落ち着かせていく。
「…あ」
ふと、水面に自分の顔が映っていることに気が付いた。
薄暗い洞窟の中で見えにくいため、少し近づいて見てみる。
まず、そのくすんだ白色でかなり長めの髪が目に入った。
しばらく手入れがされていないのか、髪は伸び放題でバサバサになってしまっている。
そして、何か赤黒いものが点々と付着している。
…血の跡だろうか?
少しだけゾッとしつつ、しかし続けて顔を見ようと思い前髪を除ける。
まず目に入ったのは、その蒼い瞳。
少しだけ輝いているように見えるその瞳に、思わず綺麗だと思ってしまった。
目は若干ジト目っぽいタレ目、鼻や口は小さめのようで、全体的に少し幼く見える。
「…そういえば」
そこでふと思いつき、自分の胸部を触る。
そこまで大きくはないが、柔らかいものが少し手を押し返してくる。
…どうやら私は女のようだ。