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担任、いつもの締めのホームルームが終わりリュックを背負いそこそこの速度ではけていくのは──
ここ、烏未波校の俺という生徒であり俺とカラスミとの日常だ。
スパホを見ながら校舎から駐輪場へと歩き出した。俺は明確な夢も希望もない高校受験に失敗した落ちこぼれの生徒でありカラスミもそんな生徒を受け入れてくれていた。
これ以上なにも期待しちゃいけないのはわかっている。ラッキーシートもある寝ぼけた頭に直撃したアンパンだって貰った……。
駐輪場はただただグレー。俺の鉄色の自転車には赤い印が貼られているだけだ。
あの男子と女子はふたり乗りをしようとしている。たしか1年ときに一緒だった山田さんだ。こういう充実した青春の風景もここにはあり、俺という存在がこの世界でよほど小さいのか。
自転車のロックを外しカラカラと引きながら裏口と正面校門、あの青春と並走するのは鬱陶しい────
ぽかぽかな陽気、こんな日にヤケルような光景はいらない。
自転車をとめ段を上がり自販機に向かい、購入した。
なぜか選んでいたレモンスカッシュをひとつ天を仰ぎ飲み。甘酸っぱいけど炭酸でスカッと、そんな今日という日の青春の代わりを味わって。
あの強烈なミドリの炭酸をおもいだしてしまった。
「さいあくだ……」
「でもさすが市販のジュース。駄菓子粉の謎ジュースみたいな未完成な味をしていない」
取り繕うそんなつぶやきをして。
また鉄色の自転車はすすむ。
校門前では乗ってはいけない、そんなルールをちゃんと守る才賀保という烏未波の生徒は、燦々と照りつける太陽の下で引きながら。
じぶんとは無関係な臙脂色の背を追い抜いていく。
バカみたいに開かれた校門を出たら俺の今日一日ははじまるんだ。誰もとめないのならそれは自由だ。
──そう言い聞かせ元気を出したはずがなぜか憂鬱が押し寄せ、甘酸っぱいだけの口内はまた渇きはじめている。……明日は忘れずにお茶を持ってこよう。
そして短い距離の躁鬱を繰り返した一生徒は烏未波でのゴールラインを割り。
そういえばクールメイドはスーパー銭湯にいって、パフェを食う? だっけ? 俺とは違って充実した一日だな、パフェを食った殴りたくなるような写真とか送って来る未来しか────
『サイガタモツ!』
呼ばれたのは俺の名前であって、フルネーム。先生は才賀としか言ってくれない。
それにこんな風に元気に呼びかけてくれる生徒はラッキーシートの周りにさえいない。
カラカラと、いざ、またいでまたトマル。止まったじかんの中で。
いそいで振り向いたひだりには──
なんでそいつがいるんだ。エメラルド色のミドリが────。




